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継母と義妹に悪役令嬢と言われたので、しっかり務めたいと思います!  作者: 穴澤 空@4/11ドアマットヒロイン発売


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19 母数は増やしたいのですわ

 思いもよらなかった言葉に、表情は崩さずとも、思わず聞き返しの言葉を漏らす。その声は扇子に阻まれ、アメフォードまでは届かなかった。


「アメフォード様。私はあくまでも政略上の婚約者です」


(あっぶない。思わず表情を崩すところだったわ。一体今までの流れのどこで、私が王太子を愛しているという話になるのかしら)


 シェリールルの言葉に、アメフォードは小首を傾げる。結い上げた髪の毛に飾られた髪飾りが、シャラリと音を立てて揺れた。


「私たちにこうした課題を課して、国力を上げていこうと、そうお考えなのでしょう? 愛する殿下が今後統べる国の為に」


 なるほど。シェリールルは納得した。確かに、家に籠もって家格なりの教育を受けて、ただただ嫁いでいくだけの令嬢を、こうして外に出させ能力を引き出したり、伸ばしたりすることは、国力を上げることに繋がるだろう。


(私の目的は単に、王太子の婚約者として認められやすい方を、作ることなのだけれど)


 あからさまにそれを伝えるわけにもいかない。

 優しく、慈悲深く見える笑みを作り、アメフォードに微笑みかける。


「アメフォード様。私はただ……、アメフォード様や皆さまが、少しでも王太子殿下の御心に叶うようにと、そしてその後少しでも多くの祝福を得られる為に、そのお手伝いをしたいだけですわ」


 訳。王太子のお手付きになったあと、スムーズにコトが進むようにしておきたい。

 まさかシェリールルが婚約破棄を望んでいるとは思わない彼女たちは、この言葉に驚く。


(シェリールル様は王太子殿下のお気持ちを優先して、ご自身は身を引くつもりもあるくらい、彼の方を愛されているとは!)


 ……アメフォードのその考えは完全な誤解である。が、それでもうまく回るのであれば、良いのだろうか。


「さぁ、皆さま。明後日からのディスカッション、どうぞ頑張ってくださいませね」


 シェリールルのその一言で、皆は再び夜会へと戻っていくのだった。



   *



「いやぁ、シェルのあの姿は見事だったよ。喧嘩をふっかけてきた相手の、教育水準を上げようとするなんてさ」

「それは見たかった。私はその頃ロット殿下のお相手をしていたからなぁ」


 あの夜会の数日後、シェリールルの双子の兄コールリアルと、アスミュート、それにシェリールルは王城に集まり、お茶を飲んでいた。


「別にそんな、だいそれたことをしたつもりはないのよ?」


(ただ、王太子妃としてふさわしい候補者が、ニョキニョキと出てきてくれれば良いなぁと思っただけで……)


 心の内は、まさか王城では告げられない。澄ました顔で紅茶を飲むしかない、と苦笑する。

 王城の中、第二王子の住まうこの南宮の中庭は、色とりどりのバラが咲き誇り、かぐわしい匂いを放っている。公爵家愛用の紅茶、ラマフィガンを飲みながら、バラ同様いろとりどりのマカロンをつまんでいた。


 何故彼女たちがこの王城にいるのか。

 それは、この南宮の主が彼女たちを呼び寄せたからだ。


「待たせたね! あ、マカロンだ。赤いのまだある?」


 声変わりをしていない、明るくやわらかな声が庭に響く。美しい金色の巻き毛に、赤い瞳の第二王子、ロット・ドグランが中庭に現れた。三人はすぐに立ち上がり、礼を取る。


「皆座って座って。ちょっと歴史の授業が長引いてしまって、待たせちゃったね。ごめん」


 そう言いながら、シェリールルの横の席に座ろうとするところを、コールリアルが素早く立ち上がり、自身とアスミュートの間に座らせる。


「えーっ、僕はシェリールル義姉様の隣が良いなぁ」

「ダメだ。あなたはこちら」


 笑顔で無言の圧を加えながら、コールリアルはロット王子を無理矢理に座らせた。


「今日は来てくれてありがとう、シェリールル義姉様、コール、アスミュート」


 赤いマカロンを食べつつ、にこやかに笑う。シェリールルの事を義姉と呼ぶのは、兄である王太子の婚約者だからだ。

 コールリアルは、ロット王子の剣技の教師として、長く指導をしている。本来であれば近衛隊から指導員を出すべきだったが、まだ幼いこと、そしてマツィエ公爵が娘を王太子につけ、息子を第二王子につけるという実に貴族的な差配をするべく、そう根回しされた。


 ちなみに、アスミュートはコールリアルに呼ばれ、共に剣技の教師としてロット王子を見ている。


「何かご用があったのでしょう?」


 シェリールルはこの愛らしい8歳の義弟には弱く、ついつい優しくしてしまう。


「うん。実は公爵家で預かって欲しい人がいて」

「まぁ、我が家で?」

「どなたかをお預かりする?」


 シェリールルとコールリアルが順に口にする。さすが双子というべきか、息がぴったりだ。


「隣国の第六王女なんだけどさ……」

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