14 そういえば王太子からのドレスって
「あれ、王太子の誕生日の夜会ってことは、お義姉様は王太子からドレスとか」
「ないない。今までも届いたことはないもの。婚約者の仕事を忘れてるのでしょうね。でもほら、彼から貰ったドレスとか、着たくないからあえて黙っているの」
「あー……」
シェリールルの言葉には、思わず納得してしまう。好きでもない男が、自分好みのドレスを贈ってきても、嬉しくもなければ、むしろ気持ちがわるいものだ。
アンヌはそう考えると、納得して一人で頷く。
「ん? 夜会?」
そして、ふと思い至ることがあったようで、いつものごとく独り言を言い出した。
「夜会……。王太子の誕生日……。パーティ……。ドレス……」
(あらあら、また何か思いついたのか、思い出したのかしたのね。今度は何かしら)
今度はどんなことを口にして、楽しませてくれるのだろうか。シェリールルは楽しみになっている。念の為に人払いをし、じっとアンヌを見つめていると、彼女の瞳が、シェリールルを映し出した。
「お義姉様、その夜会には侯爵令嬢のアメフォード・ルディリアン様も参加されるかしら」
「ルディリアン侯爵家は、今とても勢いのある家門だから参加されると思うわ。本当は王太子と婚約させようと、わざわざ親戚のお嬢様を養女に迎えたのよね」
「それがアメフォード様ね!」
「ええ、その通り。ルディリアン侯爵家には王太子よりもかなり年上の男子しかいないから、側近にもあげられないからね。そこまでした方にこそ、婚約者の座は差し上げたいものよ──ねぇ、もしかして」
途中まで話して気付いたシェリールルは、口の端をほころばせて、嬉しそうな顔をする。
「そうなの。アメフォード・ルディリアン侯爵令嬢は、先代侯爵の弟が侯爵家が複数持つ爵位の一つを継いだ先で生まれた子の嫁ぎ先の男爵家の娘」
「まとめると、先代の弟の孫。つまり現侯爵の従兄弟の子どもってことね。アンヌのそれは前世の知識?」
「そう。あってた?」
「恐ろしいことにね、大正解よ」
ソファに体を預け、小さく笑う。
「それで、そのアメフォード様が、今度のヒロインってことで良いのかしら」
「義理の父であるルディリアン侯爵に強く言い含められているアメフォード様は、お義姉様をハメて王太子に接近するはず」
アンヌはこくりと頷き、先に侍女が用意してくれていた紅茶を飲む。こうした家族の時間には、シェリールルも作法のことはうるさく言わなかった。もちろん、アンヌも伯爵令嬢としてのレベルの所作は身についているので、人目に見せられないような作法ではないのだが。
「どんな風に私をハメるのかしら」
「……お義姉様が『ハメる』なんて言葉を使うようになったことについては、私が反省すべきことね」
上を向いて小さくそう言うアンヌに、シェリールルは笑いながら、「外では言わないから安心なさい」なんて返した。
「それで、アメフォード様の私への攻撃はどのようなものなのかしら」
すっかり楽しみになっているのか、シェリールルはワクワクした顔を隠しもしない。
「ええ、お義姉様。それは──」




