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□ 2-33 ロイとの手合わせ(4)

「手合わせはこれまで!」


 メルジーヌが静かに告げた。

 俺は息をつく。

 ……勝った。まさかまた強敵に勝てるとは。

 それにしても、俺の《幻術》って本当に頼もしい。

 ここまで相手を無力化できるとは思わなかった。


 対してロイは、まだうなだれたまま動けずにいる。

 ……今回のシナリオはちょっとやり過ぎたかもしれない。

 トラウマにならなきゃいいけど。


 辺りはしんと静まり返っていた。

 最強の親衛隊長が、俺みたいな子供に負けたのだから、皆、信じられない思いだろう。

 正直、俺もちょっと魔族のみんなには申し訳ない。


 そのうち、ひそひそ声が耳に届いてきた。


(た、隊長が……負けた?)

(試合が始まったと思ったら……突然怯えて、そのまま崩れ落ちたぞ)

(あ、あれが死神召喚の術なのか……? 何も見えなかったが)

(いや、ただ何もできずやられただけに見えた……怖すぎるだろ)


 ……どうやら俺は親衛隊の皆さんからも畏怖の対象になってしまったらしい。

 あまり怖がられすぎるのも考えものだけど……


 と、そこへメルジーヌがやってくる。

 ロイが負けたというのに、意外と機嫌は悪くなさそう。

 相変わらずのクールビューティーだ。


「ふふん……さすがですわね。

 やっぱりアレンは死神でしたのね。

 わたくしもやられましたけど、あれは死神の『魔眼』なのね」


 えっ……まさかの死神認定ですか。

 たしかにロイには出まかせで魔眼、なんて痛いセリフを吐いてしまったけど。


「えっと……あれは、ほんとにただの幻術で……」


「いいえ、もはや幻術の域を超えてますわ。

 ロイも魂が抜けたみたいに動きが止まりましたし、わたくしの時もそうでしたでしょう?

 あんな芸当、ただの幻術では無理ですわ」


 う……そう言われるとそんな気もするし、ただ驚いて固まってただけな気もするし……。

 俺自身にもよく分からないところだ。


「死神の魔眼に睨まれた者は精神を破壊される――そんな伝承を聞いたことがありますわ。

 まさか実在するとは思いませんでしたけど……わたくしも体験しましたし、ロイまでやられたとなると、信じない訳にはいきませんわね」


 えええ!? 死神に魔眼、ってそんな設定、いや伝承がほんとにあったんですか!

 たしかに幻術の中でシナリオをいろいろ考えて、相手の精神にダメージを与えてはいたけど。


「はぁ……俺、いやボクも魔眼なんてつもりはなかったんですけど」


「ふん、それでロイは大丈夫なのかしら。

 ピクリとも動いてませんけど」


 ――いけねっ、ロイ!

 危うく忘れかけてた。

 精神破壊なんてしてないはずだけど、ちょっと心配になってきた。


「メルジーヌさま。ごめんなさい。

 ちょっとやりすぎちゃったかも……」


「何とかしなさいね。

 ロイがこのまま復帰できなくなったら、城の皆はなんて思うでしょうね。

 あなたも只では済みませんわ」


 うっ、これはヤバイ……

 マジでやりすぎてしまったかもしれない。


「め、メルジーヌさま。分かりました。

 すぐ何とかします!」


 俺は慌ててロイの元へ駆け寄る。

 ロイは四つん這いのまま固まり、ぶつぶつ何かをつぶやいていた。


「メ、メルジーヌサマァ……メルジーヌサマァ……」


 ううっ、これはかなり危険な状態だ。


「ロイさま、手合わせをありがとうございました。

 ……ふふふ、楽しかったですよ」


 ロイを落ち込ませないように、明るく、フレンドリーに声をかけてみた――が。


「ひ、ひぃっ! し、死神……!!」


 俺の顔を見たロイが真っ青になって後ずさる。

 明らかに怯え切ってる。これは本格的にまずい。


「ロイさま、死神だなんて……ひどいなぁ。

 ぼく、ただのハーフエルフの少年ですよ?」


 俺はロイの眼を覗き込んでにっこり笑い,安心させようと試みる。


「そ、その笑い……み、見るな……!

 ま、魔眼は……やめ……やめて……ください……」


 ロイは急に敬語になりだした。

 完全に“恐怖対象”として認識されている。これはよくない。


「あ、この眼は大丈夫ですよ。魔眼なんてウソですし。

 あれは単なる幻術です。誤解しないでくださいね?」


 魔眼、だなんて噂が広まったら面倒すぎる。

 魔族達の反感を買うだけだ。


「わ、分か……りました……

 あ、あれは……魔眼じゃ、ない……と。そ、そういうことで……」


 後ずさりながらも、どうにか理解してくれたようだ。


「逃げないでくださいよ、ロイさま。

 魂の転生の禁呪だって、結局使わなかったでしょう。

 ぼく、ロイさまと仲良くしたいんです」


 俺はフレンドリーに笑いかけながら、そっとロイの肩に手を置く。


「ひ、ひゃぁっ!!

 こ、この手は……ま、まさか……禁呪……だけは……!」


 禁呪の方をまだ引きずっているらしい。

 (チワワ)まで出して脅したのは、さすがにやりすぎだったか……。


「さっきはごめんなさい。

 犬に魂を移す、なんて……ちょっと驚かせすぎましたよね。

 手合わせ程度で禁呪なんて使いませんよ」


「は、はひ……」


「あ、でも、もしロイさまが転生したくなったら、いつでも言ってくださいね。

 ロイさまなら特別に禁呪を施して差し上げますから」


「ひぃーーーっ!!」


 どういうことか、ロイは叫んで地面に伏せてしまった。


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