□ 2-27 メルジーヌとの交渉(2)
そして、行きついた結論。
もう、アレしかない。
―――おね★ショタ大作戦。
「ぼ、ぼくぅ……メルジーヌさまが協力してくれたら……
メルジーヌさまのこと、だーい好きになっちゃうのにぃ」
俺は両手を胸の前で握り、顎の下にそっと添えて、ちらっと上目遣いでメルジーヌを見る。
「ち、ちょっとアレン!?
な、なに言ってるのよ!」
ミラが慌てて飛び出してくる。
だが……これはむしろ都合がいい。
ミラが焦れば焦るほど、メルジーヌは優越感を覚えるはずだから。
「ミラ、もちろんミラのことも好きだよ?
でも、同じ身体の中にいるメルジーヌさまのことも好きになれたら……もっと仲良くできるでしょ?
さっきミラも言ってたよね、『メルジーヌさまとはうまくやっていきたい』って」
「ま、まあ……たしかに、言ったけど……」
「でしょ? 仲良くした方がいいよね?
だから、もう少しメルジーヌさまとお話させてね」
「なんか……納得いかないわね……」
ミラは唇を尖らせる。
「ふふふ……おほほほほほ!」
これはメルジーヌの笑いか。
まるでこの展開を楽しんでいるみたいだ。
次の瞬間、彼女は俺の肩を抱き寄せた。
「アレン、いい子ですわね。
さあ、続けなさい」
……これはチャンスだ。
俺は勢いのまま、さらに攻めに出る。
「えーと、それでメルジーヌさま。
この話がうまくまとまって、シーラさまに後を任せられたら……
愛人のぼくと一緒にハンター稼業をしましょうよ!
世界中を股にかけて冒険するんです。
いろんな土地を巡って、魔物を狩って、宝探しして……絶対たのしいですよぉ。
メルジーヌさまは絶世の美女で最強、ミラは聖魔術の使い手、ぼくは死神。
史上最強のトリオじゃないですか!」
「ふふん……」
メルジーヌは口元をゆるめ、いつもの余裕の笑みを浮かべている。
まんざらでもない……ように見える。
「メルジーヌさまはもう十分、魔族のために尽くして来られたじゃないですか。
そろそろ女王の仕事は後進に譲って、ご自身の幸せを考えられてはどうですか?
シーラさまなら、きっとうまく国を治めてくれますよ。
ぼくも役に立ちますし……ミラは聖女なのにお茶目で楽しいし……
3人で仲良く旅した方が、絶対に楽しいですって!」
俺はさらに畳みかけた。
「……だからぁ、メルジーヌお姉さまぁ……
協力、して、くれない、かなぁ……?」
小首をかしげ、上目遣いで甘えるようにメルジーヌを見上げた。
「うふふふ……その仕草と表情は“合格”ですわ。
なかなか可愛くできてますわね」
おお、合格ですか!
って着眼点がおかしい気がしないでもないが……手応えはある!
「それにしても、よくもまあ次から次へと考えつくものですわね。
冒険はさておき……あなたたちと一緒なら退屈しなさそうですもの」
「でしょう? メルジーヌさまぁ」
「そうねえ……
わたくしとミラは当面このまま。
アレンがわたくしの“虜”になってくれるなら……協力するのも悪くないですわね」
虜、という単語には若干の不安が混じるが……これは明らかに前進だ。
「それじゃあ、今度こそ――」
「待ちなさい、まだですわ」
メルジーヌはスッと表情を引き締めた。
「条件がありますの。
わたくしはこれでも“一国の女王”。
魔族を率いる者として、考えるべきことがありますわ」
……やっぱり簡単にはいかないか。
いったいどんな条件を出してくるのだろう。




