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□ 2-21 魔王城の夜(1)

 夕食も終わり、あとは寝るだけになった。

 ミラと俺は、ジャスミンに先導されてメルジーヌの寝室へ向かった。


「今日はお疲れさまでした。

 今晩は熱い夜をお楽しみ――いえ、ごゆっくりお休みくださいませ」


 含み笑いを残して、ジャスミンは扉を閉めて引き下がっていった。


 まったく……熱い夜なんてありませんよ。

 このあとミラと今日の振り返りをして、明日の対策を立てて、さっさと寝るだけである。


 寝室を見渡すと、さすが女王の部屋という豪華さだった。

 天井近くまである大きな窓に重厚なカーテン。

 中央には天蓋付きの大きなベッド。

 その上には、俺とメルジーヌ用の寝間着まで整然と置かれている。用意がいい。


 やや居心地の悪さを覚えながらミラを見ると、すでにベッドに腰かけていた。

 部屋の空気は外よりも僅かに冷たく感じる。


「アレン、やっと二人きりになれましたわね」


 その口調に、俺は一瞬、違和感を覚えた。

 メルジーヌっぽい。いや、かなりメルジーヌだ。

 顔を見ても『魅惑の文様』のまま……いつまでメルジーヌのふりをする気なのか。


「こちらへいらっしゃい」


 ミラは手招きをする。

 また妙な悪ふざけかもしれない。少し警戒しつつ隣に座る。


「あ、あの……メルジーヌ、さま?

 そろそろミラに戻ってもらっても」


 ミラは何を考えているのだろうか。

 早くミラの口調に戻ってもらわないと落ち着かない。


 するとミラは、じっと俺を見つめ、柔らかく微笑んだ。


「あら、ダメよ。

 わたくしもアレンとお話したかったのですわ」


「え?」


 その瞬間、背中に冷たいものが走った。


 まさか――これは“ミラの演技”ではない?


「あ、あの……もしかして、もしかすると……

 め、メルジーヌさま、なのですか?

 ミラではなくて?」


 俺は怖くなって聞いてみた。


「ふふふ、今はそうなのよ」


 ミラ――いや、メルジーヌは艶やかに微笑み、当然のように続けた。


「この部屋にはね、わたくしの守護結界が張られておりますの。

 そのおかげで、ようやく表に出られましたわ」


 ……守護結界?


 背中から嫌な汗が出てくる。

 心臓がバクバクとうるさいくらいに脈打っている。


「先ほどまではミラがわたくしに成り代わって好き勝手に喋っていましたけれど、今はミラが引っ込みましたの。

 今の言葉は全てわたくし自身のものですわ」


 なん……だって?


 つまり――ミラとメルジーヌ、二つの魂が共存していて、今は“メルジーヌに切り替わった”ってことなのか!?

 その説明は魔族たち向けの方便だったはず。

 だが、この状況は――それは真実だったということか?


「この部屋の結界のおかげで、ミラはもう表に出られませんの。

 わたくしへの支配も、完全に解けましたわ。

 おほほほほほほ!」


 メルジーヌの高らかな笑い声が、不気味に響く。


 狂気の魔女・メルジーヌが――()()()()()()()()()()()()!!


 俺の身体から血の気が引いていく。

 ここはメルジーヌを守護する結界の中。

 逃げ場はどこにもない。


 俺とミラは、メルジーヌを退位させてシーラを後継に据えようとしていた。

 当然、それも全部バレているだろう。


 もしメルジーヌが復讐する気なら……

 俺の貞操どころか命が危ない。


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