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□ 2-20 シーラとの夕食(3)

 その時、ガストンが配膳台を押して静かに近づいてきた。


「皆様、メインディッシュをお持ちしました。

 仔牛肉の赤ワイン煮込みでございます」


 香ばしい香りが広がり、場の空気がふっと緩む。

 話が一段落したところで、全員が食事の方に意識を向ける。

 ……これがまた絶品だ。さすが女王の晩餐。


 しばらくして、食事が落ち着き始めたころ――


「ところでお母さま……」


 シーラがぽつりと口を開いた。


「今晩は、アレン君と一緒に寝るの?」


「ごほっ」


 思わずむせた。

 いきなり何を聞くんですか、シーラさん。


「うふふふふふ……愚問ですわね」


 ちょっと!

 ミラも何即答してるんですか。


 そういえば――さっき俺も魔族たちの前で

 『ぼく、お姉さまの愛人になれて、しあわせですぅ』

 などとアピールしてしまったのだった。


 なんてことだ。

 自分で自分の首を絞めてしまったのか。

 貞操の危機だ。


「ふふふふふ……」


「うふふふふふ……」


 シーラとミラが笑い合う。

 淫魔(サキュバス)の笑いだ。


 愛人である以上、別室で寝る選択肢なんて無さそうだ。


「あ、あの……ぼく、まだお子さまなので」


 俺は一応、抵抗してみた。

 実際、見た目はまだ子供だ。

 いかがわしい行為にはまだ早すぎる。


「まあっ!

 やっぱりそういう趣向(プレイ)なのね……」


 シーラが勝手に納得している。

 違うんです!

 断じて『おねショタプレイ』ではないんです!


「うふふふ……いいでしょう?」


 ちょっと!

 何がいいんですか。

 ミラがまた悪乗りしているようだ。

 この人は一体どこまで本気なのだろうか。


「うふふふふ……」


「おほほほほ……」


 シーラとミラがまた笑い合う。

 ダメだ、話題を変えなくては。


「……皆様、デザートをお持ちしました。

 マンゴーのプリンでございます」


 ガストン! いいタイミングだ。


会話は一旦中断し、みんなでデザートをいただく。

助かった……。

濃厚なマンゴーの風味が口に広がり、これもまたうまい。


「ところで、シーラ……」


 今度はミラが意味深な笑みを浮かべ、シーラに話を振った。


「あなたの方はどうなのかしら。

 誰か気になる人はいないの?」


 これはもう、完全に恋愛トークだ。

 だが、シーラの好みは把握しておいた方が、色々と都合がいい。


「え、私?」


「例えば――ロイなんてどうかしら?

 見た目はゴツゴツしてますけど、あれでも親衛隊長ですもの。

 将来的にも有望ですわ」


 ロイか。確かに立場的には悪くはなさそうだ。


「えっと、ロイね……

 その……顔がキリッとしてて、ちょっとカッコいいと思うけど」


「まあ、あれがキリッとしてる?

 ……どんな目をしているのかしら、シーラ」


 ミラはわざとらしく肩をすくめる。

 メルジーヌ的には無しだろう、そりゃ。


「お母さま。ひどい!

 ロイ、お母さまのことが好きなの、見え見えなのに」


「仕方がありませんわ。わたくし、ロイには興味ありませんの。

 それに、今はもうアレンがいますし」


 なぜ俺を見る。

 乙女の恋愛談義に巻き込まれているんですが。


 それにしても、シーラはロイを気に入ってるのか。

 うまくすれば、ロイの“メルジーヌへの思い”を別方向に逸らせるかもしれない。

 ……とはいえ、そんなに都合よくいくとは限らないか。


 そんなことを考えながら入口に目をやると――

 相変わらず、蝶……いやジャスミンが柱に止まっていた。

 この話も丸聞こえなのだろう。


「それにしても、お母さま。ちょっと変わったよね。

 前はこんな話、全然しなかったし」


「そうね……少し肩の荷が下りたのかしら。

 当面は女王でいますけれどね」


 そんなこんなで、雑談を続けながら夕食は無事に終了した。


 シーラには、俺が“メルジーヌの愛人”であることを受け入れてもらい、

 女王代理に関しても一応納得してもらえたようだ。


 正直、魔王城に来る前はどうなるかと思ったが――

 案外なんとかなるものだ。


 ……ロイとの手合わせの件さえなければ、だけど。


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