第99話 肉が食いたい
打つ寝るを繰り返すこと……何日だ? たぶん、五日くらいだと思う。やっとこの金属を理解できた。
「スゲーよ。なんて硬いんだ。宇宙にはこんな金属があるなんて最高じゃないか」
実家にあった金属の比ではない。人が長年積み重ねた技術の結晶。数百年の歴史を今ボクは感じている。
「至福にして至高。神様。もしいたのならこの世界に生まれさせてありがとうございます!」
フフ。ウフフ。お前を理解したぞ。そのひん曲がった根性を叩き直してやる。覚悟するんだな。
歪みは一ミリたりとも直せてはいない。だが、マイクロの世界では修正されている。焦ってはいけない。確実に修正はされている。
打て。打て。打て。打つんだレイ。ほら、マイクロの世界からミリの世界までもう少し。もう少しだレイ。
「ど、どうだ! 目で見てもわかるくらいには修正されて来たぞ! アハハ!」
愉快だ。愉快すぎる。これだから打つのは楽しいんだ。
さらに打ち続け、センチの世界へと突入する。イカン!
「ライク! 固定具を持って来て! 雷管がズレる!」
ヤバいヤバい。雷管口ばかりに気を取られて雷管の固定を忘れていたよ。ここでズレたら口の表面に傷が付くじゃないか。
ライク班総出で雷管を固定。なんとかズレるのを防いだ。
「あっぶねー! せっかく修正して来た雷管口を傷付けるところだったわ~!」
安心したら全身から冷や汗がとばどばと流れ出した。いやぁ~、寿命が縮んだ思いだよ。
「ジーニー。悪いが、少し休ませてもらうよ」
このままじゃまた失敗しそうだ。一日休むとしよう。
「そうしたほうがいい。臭くなって来たからね」
臭い? あーうん。臭いね。女として終わっている臭いだ。てかボク、何日風呂に入ってない? 五日とか十日の臭いじゃないぞ……。
「さすがの宇宙下着も限界があるようだ」
部屋に帰り、下着を脱いだらモザイクが必要なくらい黒ずんでいた。消去だね。
三十分くらいシャワーを浴びてやっとこさ女の子に戻れた。
疲れてベッドで横になっていたらジージーたちが入って来た。お帰り~。
「レイ! やっと帰って来たのね!」
なんか戦場から生きて帰って来たみたいな驚きだ。報告が入ってなかった?
「もう二十日以上、帰って来ないから心配したよ」
二十日? 二十日も過ぎてたの?! マジか!?
「もうそんなに経ってたんだ。自分の中では五日くらいだっよ」
二十日もお風呂に入ってないのなら女の子辞めるレベルになっても仕方がないわな。
「終わったの?」
「いや、これからが本番ってところだね。疲れすぎて事故が起きそうだったから一日休むことにしたんだ。お腹空いたからなにか食べ物があったらもらえる?」
がっつりした肉が食いたいよ。
「それなら食堂で食べられるよ。三人で大物を狩って来たからさ」
ほー。大物とな。それは頼もしい限りだ。
三人がシャワーを浴びたら食堂へと向かい、なんか分厚いステーキが出て来た。なんの肉?
「飛竜だよ」
ほらと、ボーリングの球くらいの魔石を収納の鞄から取り出すランジン。飛竜はライアーズ冒険隊クラスがなんとか倒すレベルの魔物だって知ってる?
「シャレインで撃ち落としたの」
なんでもランジンやロレンソもシャレインに乗っているそうだ。それは羨ましい。ボクも乗りたかったのに……。
クソ! 早く直してボクも乗ってやる!
怒りを食欲に変えて飛竜のステーキにかぶり付いた。お、美味いじゃん! これなら五枚は行けそうだ。




