第98話 雷管口
一通り説明を受けたら問題の雷管口へとやって来た。
「よくここまでの道を作ったものだ」
作業員が直せるものではないからほぼ密封されているもの。装甲板を剥がしたり、配管を外したりしないといけない。ライク班が寝不足になっていたのも当然だ。八時間労働していたらまだ装甲板も剥がせてないだろうよ。
ただまあ、人一人通れるくらいなので、雷管口まで行くのに一苦労だがな……。
「収納の鞄があってよかったよ」
中から水筒を出して水を飲んだ。
「ジーニーも飲む?」
「いただくよ」
金属骨格だからか、ジーニーに柔軟性があまりなかった。どうも可動限界はあまりよろしくないようだ。屈伸で脛の半分までしか行かなかったよ。
一息ついたら問題の雷管口を見た。
「……あーこれは酷いね……」
苦労して辿り着いた果てに絶望を見せられて、よく絶望に打ちひしがれなかったものだ。さすがだよ。
「この状況を報告して、ボクを確保しようとしたわけだ。優秀だな」
手順は間違いはしたが、判断は間違ってはいない。艦長……ではないな。もっと集まった者たちを観察しておくんだったよ。
「どうだい?」
「うーん。強敵だね」
見ただけでわかる。とんでもない金属だと。
しかし、強敵だからこそ屈服させたい気持ちがムクムクと湧いて来る。錬金鋼術士の血がぐわーっと湧いて来るぜ!
愛用の槌を握り、まずは周りから叩いて行く。
「うほー! びくともしねー!」
一回叩いただけでもわかる。神代の金属にも勝るものだわ!
そこからは一心不乱だ。叩いて叩いて叩き捲り、気が付いたら横になっており、ライクに膝枕されていた。
「……大丈夫か?」
「大丈夫。どのくらい眠っていた?」
「軽く十時間は眠っていたよ」
そ、そんなにか。危うく死ぬところだったよ。
「まあ、二十時間は打ち続けていたけどね」
「鞄を」
ジーニーに収納の鞄を取ってもらい、中きら食べ物を出してがっついた。
「ふー。強敵だった」
魔力消費がとんでもなかった。一回打つ度に命を持って行かれそうだったよ。ボク、よく生きていたものだ。
「ジーニー。食事をここに運んでくれる? 戻るのも惜しいから」
さすがにトイレには戻らせてもらうよ。ボクにも羞恥心はあるからな。
腹が落ち着いたら叩いたところを見てみる。
「まったく変化がない」
だが、それでこそだ。あれだけのことで元に戻るなら興醒めってもの。挑み甲斐がないってものだ。
何度も擦り、金属の肌触りを確かめた。
「いいね、君。神に挑んでいる気分だよ」
屈服させたい──じゃなくて、必ず修復させてやる。ファンタジーの底力を見せてやるよ。ウフフ。




