第94話 フリゴ(3Dプリンター)
金属ハイ。叩きすぎて起こる、トランス状態みたいなものだ。
前世ではこんなハイを感じたことはないんだが、このファンタジーな世界の錬金鋼術師の家系に生まれてから、どうも金属に取り憑かれてしまっているようだ。
まあ、不都合なことはないのでボクは気にしていない。いや、むしろこのハイがいい。エクスタシーだ。
「ふふ。いい出来だ」
見立てとおり、今日は百本以上の配管を修正してやったぜ!
「……何度見ても意味がわからないわ……」
修正された配管にまだ戸惑っている整備班の面々。魔法を知らないと受け入れるまで時間が掛かるんだな。
というボクも最初は魔法に戸惑ったものだ。だが、体が魔法を理解してからは戸惑いもなくなったものだ。
「明日は細かいものをやらせてよ。補充がないものとかあるでしょう?」
「それはあるけど、精密なものよ? 調整だって大変なのに」
「職人の感覚を侮ってもらっちゃ困るな。機械には負けないよ。ミクロ単位の調整だってやってみせるさ」
信じられないだろうから次の日、少し変形した極薄の金属板を元に戻した。
「……検査機が了承を出している……」
「なんで撫でるだけで元に戻るのよ!」
ハンドパワー! なんてことは言わないでおく。言ってもわからないだろうから。
「この部品も直せる? 熱で溶けているけど」
プラグのような部品を受け取り、小槌で叩いてみる。
「これとこれ、金属じゃないよね? 樹脂? ゴムかな? さすがにこことここは無理かなな」
「それはフリゴで直せるから大丈夫。ここの輪が希少金属でフリゴで造り出せないのよ」
フリゴは立体製造装置のようなものっぽい。それ、欲しいんですけど!
「この金属の輪なら問題なく修正も修復も出来るよ」
「ねぇ。部品を外さなくても音で歪みとか見つけられる?」
「手が入って、槌を振れるならね」
「ハーリ2に相談して来る!」
服のあちこちに黒焦げがある女の子が駆けて行った。なに?
「ルクは測定班で、機器の検査とかをやっているのよ。不時着したせいで、至るところに歪みや破損が出ているわ。それを探すのが測定班の仕事なのよ」
「センサーでわかるものじゃないの?」
「そのセンサーも大分壊れているから一つ一つ潰して行かないとならないのよ」
そりゃ大変だな。測定する人数もいないだろうからね。一年経ってもすべてを調べるなんて無理じゃない?
「じゃあ、明日は測定班に付き合ってみるよ」
故障箇所は前もって知っていれば雷管口を直したらすぐに動けそうだからな。
「わかった。上にはそう伝えておくわ。配管を取り付けられるようになったからね」
整備班も整備班で人が足りてない。あちこち回るのもいいだろうよ。




