第8話 収納の鞄
目覚めたらコクピット内は暗くなっていた。
意識と連動しているので、意識が戻るとコクピット内の灯りが点いた。
「……頭が痛い……」
なんか二日酔いしたときと同じ感じがする。今生ではまだ酒は飲んだことないけどさ。
なにも持って来なかったので、痛みを我慢してシャレインから這い出た。
外の空気を肺一杯に入れ、夜風を浴びた。
そのまま意識を失い、目覚めたときには朝日が昇る時間となっていた。
「……外で寝るとか自殺行為だな……」
比較的安全とは言え、山の中で火も焚かないで寝るとか自殺と同じ。魔物に食い殺されても文句は言えないぞ。
「次はちゃんと武器を持参しないとな」
折り畳みのナイフは持っているが、こんなものでどうこう出来る魔物はいない。生き残ったのなら次に活かすとしよう。
よっこらしょと立ち上がり、山を下りた。
ちゃんと火を起こせたようで、家の煙突から煙が上がっていた。
「ただいま~」
なんて言うの、二年振りだろうか? 家を追い出されてから久しぶりに口にしたよ。
「お帰り。体はどう?」
「やっと頭痛が収まってくれたら腹が減ったよ。ジージーはなんか食べられた?」
一応、食材はあるが、それを調理出来るかまでは考えなかったよ。
「パンと肉っぽいもの、あと、スープを口にしたわ」
「やっぱ、料理は出来ないか」
「する必要もなかったからね」
そりゃそうか。戦艦なら食堂とかあるだろうしな。
「しばらくこの星で生きなきゃならないなら狩りや料理を覚えないといけないね。町から町はかなり離れているからね」
「……不安でしかないわ……」
「まあ、シャレインをもらったからね、ジージーにはこれを贈ろう」
壁に掛けてある鞄を取り、ジージーに渡した。
「これは?」
「収納の鞄と言って物がたくさん入るものだ。かなり高価なものだから盗まれないように注意してね」
ボクがここで一人暮らし出来ている理由でもある。
「そこの薪を鞄に入れてみなよ。大きさを無視して五本でも十本でも入るから」
半信半疑ながらもオレの言葉に従い、薪を一本二本と入れていき、五本目で動きが止まった。
「……どういうこと……?」
「この星には魔法という不可思議な力が満ちていて、空間を歪めることも出来るんだ。その鞄の容量はこの部屋くらいはあり、中に入れると時間が緩やかに流れる。熱々の料理を鞄に入れたら二日くらいは熱々のままだ。これがあるだけでかなり旅が楽になるよ」
買い出しも一月に一回で済む素晴らしさ。シャレインより劣るが、持っていて損はないものだ。
「いいの?」
「全然いいよ」
ボクにはシャレインのほうが価値があるからだ。




