第47話 真骨頂(オタク)
ハイ、試作品完成っと。
剣と鞘の隙間は完璧。髪の毛すら入らない密着度だ。てか、抜けないな、これでは。密着させすぎたよ。カンカンカンっと。これでよし。
自分でも背負ってみる。
「三十キロは越えたか?」
剣自体でも二十キロはあった。鞘となると三十キロになっても仕方がない。ファンタジーでも重さを消すのは並大抵ではないのだ。
……まあ、重力魔法とかたるみたいだけど、ボクは使えないのでないも同じなんです……。
カシャンカシャンと剣をちょだけ抜いたり差したりしていると、職人たちが工房に入って来た。
「お嬢、出来たのかい?」
「うん。試作にしてはいい出来だと思うよ」
ボクの作品を職人たちにも見てもらった。
「出来はいいと思うが、これじゃ抜けんのじゃないか?」
「ふっふっふ。そこはギミックがあるのさ」
「ギミック? なんだ?」
「それは完成品を見てからのお楽しみだよ」
まだ試作であり、肝心要の魔石を取り付けていない。まだ仮の器でしかないのだ。
皆でわいのわいのしていたらライアーズ冒険隊の面々もやって来た。
「ちょっと鎧に付けてもらえる?」
鞘に入ったまま剣を背中に回せば金具に嵌まるようにはしてある。
「こう構えたとき、柄は握りやすい位置にある?」
忍者が刀を抜くようなポーズをしてみせた。
「うーん。もうちょっと上かな?」
鞘側の金具を調整して三ミリほど上に動かした。
「これならいいな。だが、これでは抜けんぞ」
「そこは解決してあるから大丈夫。これは構えが大事だからね」
必殺技を出すのだ、格好悪い姿はさせられないっしょ。
「鞘の位置と構えに問題がないのなら本格的に作るよ」
こっからが本番。ファンタジーに転生して、錬金鋼術を使えるようになった技術者の真骨頂。ってまあ、漫画からのリスペクトなんだけどね。
それでもボクのオリジナルを出した鞘を作る。
「さあ、黒竜の魔石よ。お前に新しい命を与えてやろう。クックック」
その魔石にお前の魂が宿るかはわからない。自我があるのかもわからない。だが、ボクが新たな命を創り出してやる。
自分用に残していた黒鉄の剣を使って鞘を作り出──。
「──す前に腹拵えだ。あと、身を清めないと」
新たな命を創り出すのに汗臭いのは失礼だ。お腹も空いたしな。
「明日の朝には完成させるから。ボクはお風呂に入って来るよ」
「あ、わたしも一緒に」
「あたしも!」
魔法使いと弓使いのおねーさんたちも便乗してくる。
精神統一も兼ねているんだが、まあ、自分の欲望を剥き出しにして創るんだから今さらか。ため息一つ吐いてお風呂の準備に取り掛かった。




