第45話 お風呂
しっかり食べたら魔力と体力が戻ってきた。
胃が落ち着くのも惜しいと、工房に向かって槌を握り、お腹が空くまで刃先を打って歯こぼれを打ち直した。
「さすがバルカリア。一ヶ所をなくすのに夕方になっちゃったよ」
刃こぼれはあと二ヶ所。これなら予定とおりに修繕出来そうだ。
「おばちゃん。お腹空いた~」
でもその前に腹拵えだ。腹が減っては槌は振れぬ、だ。
「用意してあるよ。食べたら風呂に入りな。臭うよ」
確かに四日は入ってはいない。臭っても仕方がないか。さっぱりしてからまたやるか。
ジージーたちは依頼を受けたようで姿は見えなかったが、針工房の女性陣がボクの目覚めを聞いてか集まっていた。
「すっかりお風呂好きになっちゃって」
「レイがいるときしか入れないからね。頼むよ」
「わかったよ。でも、先に入らせてもらうからね」
さっぱりしたいのでお先に入らせてもらい、次を譲ったら魔力が完全に回復するまでお風呂に入る女性陣を眺めながらゆっくりとした。若いっていいね~。
「本当にお風呂があるのね」
と、ライアーズ冒険隊の紅二点が現れた。気配なっ! 音なっ!
「わたしたちも入っていいかしら? 皆のあとでいいからさ」
「まあ、いいよ。ただ、水は自分たちで汲んでね。十五回も汲めば湯船は一杯になるから」
「問題ないわ。水は出せるから」
じゃあ、川にでも行って自分でやりゃーいいじゃん。露天風呂だよ。
「外だと安心して入れないからね」
「そうそう。ここなら覗かれることも襲われることもないからね」
冒険者らしいセリフだな。
「お風呂上がりに飲みたいのがあるなら。ここに置いておくと冷えるから」
針子たちはまだお酒が飲めないから瓶に入れた牛乳を持って来ている。ボクの真似をして、すっかり牛乳を飲むようになったよ。
「冷えるの?」
「ボクは熱魔法が使えるからね。鉄から熱を奪うことも出来るんだよ」
工房は熱いからね、冷たい水を飲みたくなるのは仕方がないことだ。もちろん、塩分も摂っておりますよ。
「麦酒でいいならうちにあるからおばちゃんにもらうといい。冷えた麦酒は美味いよ」
ボクは葡萄酒のほうが好きなので飲まんけど。
「冷やすと美味いの?」
「好きな人には美味しいと思うよ。特にお風呂上がりに、ね」
職人たちは美味そうに飲んでいたよ。
「それなら飲んでみようかな」
「わたしも」
まだ針子見習いたちが入っているので、入るころには冷たくなっているだろうよ。ボクはそろそろ服を着るか。魔力も復活してきたしね。明日の朝までには歯こぼれは修繕してやろう。




