第41話 バルカリア金属
「ライアーズ冒険隊の隊長、ライアスだ」
リーダーの男性がわたしに名を告げた。
「え? ボク? バイマさんが対応しなよ」
バイマさんは、マリュード工房の古株でもり、副工房長的立場でもある。マリュードさんがいないときの代理でしょうに。
「いや、お嬢が対応してくれ。有名な冒険隊なんだからよ」
それこそいや、だよ! ボク、お世話になっている身なんだからさ!
「ハァー。ボクはレイ。元グランジック家の者だ。王都で活躍しているならグランジック家は知ってるでしょう?」
「グランジック家? 元?」
「魔剣を追って父親に放り出されたグランジック家の長女、ローレイ・グランジックだった者です」
ローレイ・グランジック。それが昔の名前でございます。
「君が!? いや、娘がいるとは聞いているが、本当にローレイ・グランジックなのか……?」
「証拠となるものはないよ。今のボクはレイ。野良の錬金鋼術士として生きているだけだしね」
もうグランジック家の威光はない。あるのは腕だけ。その腕で生きて行くまでさ。
「そ、そうか。なら、その腕でこれを直せるだろうか?」
ライアスさんが腰に差した剣を抜いて、ボクに渡した。
「魔剣か。かなり古いね。魔力も練りに練られた大魔剣だ」
それが歯こぼれを起こしている。どんなものを斬ればこんなにこぼれるんだ? 音からしてバルカリア金属だ。
ミスリルの上位金属であり希少金属。これで城が建つほどだ。もう伝説の剣と言ってもいいものだ。
「刻まれた銘はバルチアか。この国で聞いたことがないね。意匠と片刃からして帝国かな? ざっと見て、三百年物だな」
自ら魔力を生み出すような魔剣は、百年を優に超える。さらに持ち手の技量や魔力でも決まる。これは余裕で三百年は超えるだろうよ。
「直るだろうか?」
「うーん。バルカリア金属があれば直すことも可能かな? ないのなら打ち直しが必要だね。そうなると鞘も変えなくちゃなくなる。王都ならバルカリア金属を手に入れるかもよ」
希少金属と言っても手に入れられないものでもない。大きい工房なら直せるくらいの量はあるはずだ。
「どうする? 急ぎなら代剣って手もあるよ。バイマさん。マリュードさんが打った剣を持って来てよ。四つくらい落ちるけど、あれならライアスさんでも問題なく使えるものだと思うからさ」
グランジック家に弟子入り出来た人であり、四十前に独立出来た人でもある。腕は超一流。四つくらい落ちても剣は名刀クラスである。
「あ、ああ。わかった」
「代剣を見てから判断してよ」
魔剣をライアスさんに返した。




