第38話 貿易都市カーズ
「仕事に行って来るよ」
働き者な三人が仕事を求めて冒険者組合へと出掛けた。いってらっしゃ~い。
鍋打ちも包丁研ぎも終えた。お金もいい感じに増えた。今日は収納水筒を打つとしましょうかね。
「マリュードさんは? なんかここ数日見てないけど」
古株の職人さんに尋ねた。
「お嬢が持ち込んだミスリルを売りにカーズに行ったよ」
「え、そうなの? マリュードさんならミスリル打てるでしょう」
マリュードさんは、グランジック家から暖簾分けされたような存在であり、国家公認証も持っている。ミスリルを打つくらい問題ないはずだ。
「王都じゃないんだ、こんな辺境でミスリル製のものなんて買うヤツはいないよ」
「あー……確かに」
王都で打ったものを買って辺境に来るパターンがほとんどだ。その逆なんてまったく聞いたことないわ。
「しかも、グランジック家の者が集めた純度の高いミスリル。こんな辺境じゃ宝の持ち腐れだよ」
「……もしかして、迷惑だったかな……?」
なんか手間を増やしちゃった感じ?
「そうでもないさ。工房存続の資金に困っていたからな」
「あまり売れてない感じ?」
「鍛冶工房が増えたからな、仕事は減っているよ」
それなら鋳掛けもやって欲しいものだ。需要はあるんだからさ。
「言われてみれば、工房の稼働が少ないような……」
鉄を打つ音が少ないし、小炉が消されている。前は全稼働してたのに。
「不味い感じ?」
「かもな。親方が金策に動いてんだから」
そりゃそうだ。マリュードさんもボクに相談してくれたらいいのに。水臭いな~。
「それなら魔光炉を作ろう。実は、工房で作って欲しいものがあるんだよね」
「魔光炉って、そんな大層なもの作れるのか?」
「実家で作り方は覚えた。魔石が手に入れられなかったから作れなかったんだよね」
ボクの戦闘力では魔石を持つ魔物は倒せない。買うとしても魔光炉に使用される魔石は高い。金貨二、三枚くらいするんじゃないか? まったく、こんなことなら実家からちょろまかしてくるんだったぜ。
「つ、作り方を覚えたって、覚えて作れるもんじゃないだろう。親方だって一つ作るのに十年以上の修業をしたって話だぞ。材料だって高額なのに」
「大丈夫大丈夫。廃材で作れるから。それに、そこまで立派なものは作らないよ。携帯出来るくらいの収納箱を作れたらいいんだからね」
実家にあるような魔光炉は魔剣なんかを打つためのもの。生活に目指したものを作るならそこまで高性能なものなんかいらないんだよ。
「手が空いている人は水筒をいくつか作っておいて。ボクは魔光炉を作るからさ」
高性能なものじゃないとは言え、魔光炉は高度な技術なもの。集中しなければならない。さあ、やったるぜ!




