第26話 マリュード工房
錬金鋼術士は鍛冶の上位スキルでもある。
あ、とんでもスキルとかある世界ではありません。魔法があって、錬金術はその一種とされております。
グランダルクの町にも錬金鋼術士はおり、うちの系統を組んだ工房がある。
ボクがここに来たときも頼り、一月くらいお世話になったものだ。
「マリュードさん、お元気そうでなによりです」
五十過ぎの熊みたいなおじちゃん。連絡もなしに来たのに、歓迎してくれた。ありがたいもんです。
「お嬢もお元気なようでなによりです」
あ、ボクのことね。いいところの生まれなもんですんません。
「元気元気。いい鉄やミスリルを手に入れてますよ」
山の家の周辺には砂鉄や鉄鋼石、ミスリル粉があったりする。ボクはそれを集めて剣を打ち、ミスリル粉を集めて塊にして町で売る、を生業としているのだ。
「また一月くらいお世話になっていいかな? あ、これミスリルの延べ棒ね」
ちょっとした屋敷が建てられそうなミスリルの延べ棒をマリュードさんに渡した。
「……またとんでもないものを……」
「まあ、ボクだしね。そんなものだと思ってよ」
チートはなくてもいい血筋のお陰で才能は飛び抜けている。まあ、性格のほうが飛び抜けているってよく言われるんだけどね。自分では普通だと思っているのにさ。
「はぁ~。わかりました。好きなだけいてください。そちらは?」
「彼女はジージー。仲間とはぐれちゃってさ、ボクがしばらく面倒見ることになったんだ。部屋は同じでいいからよろしくね」
「冒険者ですか?」
「うん、そう。かなり強いよ。剣の試し斬りをしてもらうのもいいかもね」
「こんなに華奢なのに?」
「華奢に見えてボクが打った剣を軽々振っているよ。ジージー、ちょっと腰の剣を振ってみてよ」
「わかったわ」
庭に移り、剣を振ってみせた。
「……黒鉄をここまで振れるとは。大の男でも難しいのに……」
「ねぇ、凄いでしょ?」
「ええ、まあ。もっとも、黒鉄を剣にする物好きはお嬢くらいですがね」
はい、ごもっとも。趣味全開で打ちましたから!
「黒鉄があるなら斧を打つよ」
元々、黒鉄は斧に使われる金属だ。これで剣を打ったらどうなるんたろうとか、普通は思わないし、重くて無理だと打つ前にわかるものだ。そこを打っちゃうのがボクって人間なのだ。
「それは助かります。黒鉄の斧は人気ですからね」
「お金ないから何日かジージーと仕事をするよ。そのあとで打つからさ」
「わかりました。その間に材料を集めておきますよ。部屋はそのままなんで、必要なものがあるならジェンに言ってください」
ジェンとはマリュードさんの奥さん。イタリアンママって感じの女性だ。
「ありがとう。お世話になります」
ジージーの手をつかみ、部屋へと向かった。




