第2話 ジージー
「いえ、状況を理解するために情報を提供して欲しい。わたしは、アルセイムレクタールライカジームジーブスルサムダジージーブリップよ」
「この世界は遅れているから概念のないものは翻訳されないよ。名前だけ教えてくれ。ボクはレイ。名字もなければ所属しているところもない。一般人だよ」
たぶん、落ちて来る前にこの星の言語を翻訳したんだろうが、この世界にない言葉は翻訳されないんだろうよ。
「ジージーよ」
「オッケー、ジージーね」
「オッケーとは?」
「了解って意味だよ。別の星の言葉さ。ところで、その宇宙船は爆発したりしない? 環境に害する武器とかないよね?」
核融合とかだったら勘弁してくれよ。ここは、鉱山があって貴重な場所なんだからさ。
「そう強力な武器はないわ。エンゲードの類いは何発か残っているくらいよ」
エンゲード? ミサイルか?
「高熱兵器は?」
「ジプスが壊れたみたいで撃てないわ。残存プレアでは百日と持たないでしょう」
「わからない言葉だけど、話の流れからして大まかには理解したよ。その宇宙船は使い物にならないってことね」
「そうね。緊急着陸時の野外装備は使えそうだけど、仲間のところまで持つかどうか……」
サバイバルキットはあるが、この星で生き抜けるようなものではない、ということか。
「じゃあ、それを持ってうちに来なよ。いろいろ情報を交換しようじゃないか。宇宙の話も聞きたいしさ。もちろん、嫌なら断ってくれて構わない。町はあっちだ」
トキメキを期待しないわけではないが、無理強いなラブは実らない。人間関係も同じだ。
「いや、情報交換をお願いしたい。少し待って」
「了解」
コクピットの中に消え、しばらくして側面のハッチらしきものが開いてジージーがリュックサックを背負って出て来た。
「重力とか大丈夫なの? 宇宙で暮らしていたんでしょう?」
「大丈夫よ。戦艦には重力があるから。わたしの星とそう重力に違いわないわ」
重力の重いところの戦闘種族ではないようだ。まあ、体細いし、戦闘種族ではないか。
「この星に攻めに来たの?」
「いえ、重力兵器に巻き込まれて時空震に巻き込まれてしまったの。情報にない星だわ」
「別次元に来てしまったか、別の銀河に飛ばされたか、戦艦に帰れば元いたところに戻れそう?」
「わからないわ。戦艦も重力兵器の損害を受けていると思うから」
「絶望ではないけど、状況はよくないって感じか」
なんかそんな小説か漫画を読んだような? 同じ世界線じゃないと希望は薄いだろうよ。




