第16話 野宿
「辛うじて下半身は残ったか。お、魔石もあるじゃん。ラッキー!」
食いどころは減ったが、後ろ脚なら肉屋に売れそうだ。血抜きをしたら収納の鞄に入れよう。魔石は背中のリュックサックだ。
「ジージー。もう少し行ったところに洞窟があるから今日はそこで野宿しよう」
リオルームは群れで行動している。見付かってあとを追われるのも面倒だ。明るいうちに安全なところに逃げ込むとしよう。野宿の経験も積ませたいしな。
「町に行ったら魔道具も買わないとね。こうして火を付ける魔道具は一つは持っていたほうがいい」
魔法で火を点けられる者はいるが、全員が全員火の魔法を使えるわけでもなし。
「てか、サバイバルキットに火を点けるものないの?」
「ないわ。戦闘服を着ていたら暑さ寒さは関係ないから」
想定してないってことか。星に落ちたら戦死扱いになるんだろうか?
「一人で旅をするなら野宿は命懸けだ。こんな洞窟を見つけるか、高い木に昇るか、火を焚いて魔物を寄せ付けないかだ。夜は極力動かないことだ」
「レイは一人で旅をしていたの?」
「うん。家を追い出されてからずっと一人だね。野宿も何十回とやったし、命の危機も何回と遭遇したよ」
今生きている奇跡に感謝です。
「夜はずっと起きているの?」
「安全なところなら眠るし、危険なところは朝方ちょっと眠る。基本、旅は一人でしないものなんだよ。それでもしなくちゃならないときは町から町を目指すか、馬で移動するかだね」
一人で旅とか自殺行為。よほど強いか、野宿に長けているか、それとも便利な魔道具を持っているかだ。
「……原始時代ね……」
「原始時代より過酷だよ、この星は。リオルームが可愛く思えるほどの魔物がいるからね。シュルムでも勝てないのが十種類はいるんじゃないかな?」
戦闘機や戦車でも勝てないのがいる。ボクも竜が飛んでいるところを見たとき死を覚悟したものだ。ウルトラなマンのワールドだよ。
「……仲間が生きているか心配になってきたわ……」
がっくりと肩を落とした。
「諦める?」
「いえ、諦めないわ。軍規に反するからね」
こんなファンタジーワールドに落ちても軍規に縛られるか。なんか脳に仕組まれてんのかな? それとも教育か?
「軍人も大変だ」
ボクには無理だな。集団生活とか苦手だから。たまに人に会うくらいがちょうどいいよ。食事を用意してくれる人は欲しいけど。
「食事はどうするの?」
「臭いを立たせてはダメ。どうしても空腹ならパンか干し肉を少し。それか朝方に食べる、だね」
「厳しくない?」
「厳しいんだよ、野営ってのは。気を抜いたら死ぬと思っていたほうがいい」
何度も言うが、旅は一人でするものじゃないのだ。




