第119話 書き置き
確かに、誰か来た足跡が残っていた。
「五人か六人かな? 足跡からして冒険者か」
ボクがここにいることを知っている者は少ないし、ここを目指して来る者もそうはいない。
「ライヤーズ冒険隊かな?」
だったら悪いことしたな。
薪棚を見ると、真新しいのがあった。何日か滞在したんだろう。ちゃんと補充していくのが律儀だよな。
「シックスもいたなら裏山の跡もバレているかもな」
ライアスさんたと一緒にいるなら仲間と合流はしてないってこと。連絡を取り合っていたとしても通信機の類いは持っていないのだろう。ライヤーズ冒険隊の他に足跡がないんだからな。
「一応、上から見張ってもらうか」
家の周りを見ると、獣を解体した跡や焼いて食べた跡もあった。
「長いこといたみたいだ」
薪の消費からして少なくとも十日はいた感じかな? まあ、お風呂を使っていたらもっと早いのかもしんないけど。
家はしっかりした鍵はなく、風で開かないように外から石を置いておくくらい。もちろん、中からかける番を掛けているけどね。
「六人で泊まったのか」
家と言っても小屋レベルだ。寝室は作ってあるが、シングルベッド一つ置けるくらいの広さ。二人寝るのがやっとだろう。
居間に野郎四人は狭かっただろうよ。いや、二人は外で見張りか作業場で寝たのかもな。炉があるから冷えることはないだろうし。
「冷蔵庫は空か」
まあ、長いこと空けていたわけだし、魔力切れで腐っていたことだろう。食べてもらってよかったよ。
「あ、食料ないや」
収納の鞄の中も空に近い。今日食べるものも厳しいぞ。
「どうすっか……ん? 貼り紙?」
じゃなく書き置きか? 暖炉のところに羊皮紙が貼ってあった。
「また来る。収納の鞄に食料を入れてある」
暖炉の横にある壁掛けに収納の鞄が下がっていた。
中を見ると、大量の食料が入っていた。人冬分──はさすがにないが、数日は持ちこたえられそうだ。
「また来るか。なんか用があったのかな?」
まあ、来るとしてもすぐというわけではあるまい。その間に暮らしを整えておくとしよう。
暖炉に薪を放り込んで火を点け、窓を開けて空気の入れ替えをする。
周辺を探り、鉄の棒を熱して地面に刺して回った。
「レイ。ジールたちは明日になりそうよ」
山からジージーが下りて来た。
「オッケー。食料って積んで来たっけ? ボク、考えてなかったよ」
「予備の調理機を持って来たわ。どこに置く?」
調理機? 食堂にあったヤツを持って来たの? 自販機くらいあったよね? よく積み込めたな?
「山の上でいいでしょう。通信もしやすいだろうからね」
自家発電機もドラム缶くらいのサイズだ。ボクたちなら問題なく運べるだろうが、ここに運んでも仕方がない。山の上でいいだろう。




