第108話 数はパワー
食堂はこれまでにないくらい混んでいた。
まあ、集まるところは食堂くらいしかないのだから自然とここに集まるんだろうよ。
皆は困惑して、どうなるか不安そうにしている。頭に埋め込まれたチップは精神を抑えたりしないのかね?
食堂のおばちゃんが作ってくれているわけではないので、ト機械から料理が盛られたトレイが出て来る。ほんと、食欲が湧かない見た目である。
「おばちゃんの料理が食べたいよ」
こちらのほうが栄養はあるんだろうが、食べて幸せと思うのはおばちゃんの料理だ。効率を求めた結果がこれなんだろうな~。
三人も食べるようで、トレイを持って空いている席に着いた。
「魔物は狩れてる?」
「近場にはもういなくなったわ。山のほうに逃げたんだと思う」
島に住んでいた魔物も迷惑な話だよな。長い年月を掛けて食物連鎖を作り上げたのに、SF界から落ちて来たヤツらに蹂躙されるんだから。元の世界なら環境破壊だと騒がれているぞ。
「外だと肉は食べられる?」
「うーん。今は無理だと思う。挽き肉にされてこれになっているそうだよ」
肉が青いゼリーになったり固形物になったりするのか。グージーはどこで見た目は大事ってことを捨てたんだろうな?
「たまには甘いものも食べたいものだ」
甘い寒天みたいのじゃなく、チョコレートとか砂糖の塊みたいなのを食べたいよ。前世じゃそこまで甘いものを食べたいと思わなかったのに、体が違うと好みまで変わってくるものなんだな。
「レイ。アルレシアはもう飛べないの?」
「どうだろう? 反重力炉は簡単に直せるからあとは艦橋がどうなっているかだね。艦長が皆を切り捨てるなら艦橋は使い物にならなくなってあるはずだ。迎えに来ると考えているなら壊さないでいると思うよ。まあ、ボクの勝手な想像だけどね」
十中八九、艦長は下を切り捨てた。反重力炉を暴走させる計画だったんだろう。この星にはルクセル側も落ちて来たんだ、利用されたり情報を吸われたりしたら自軍の不利となる。爆発させるのが手っ取り早いだろうよ。
それを皆に語る必要はない。真実なんて確かめようがないんだからな。今は皆の心を離れさせないことが重要だ。この船にはまだ数百人も残っている。それは力だ。遥か未来の知識と技術を持った集団だ。捨てるなどもったいない。この星の発展にご協力いただこうではありませんか。
「大丈夫。戦いの意味と質が変わるだけ。皆からしたらなにも変わらないでしょう? 敵を倒せ、戦え、勝利せよ。そうやって生きてきたんだからね」
故郷があるわけでもなければ家族がいるわけではない。命令に従って来た人生だ。これからも命令に従えばいいだけだ。
「自分に与えられた命令をこなす。今はそれに集中すればいいんだよ」
命令しか教えてられない兵士なんだからな。




