第107話 悪くない
ジージーたちも落ち着いたので食堂に向かった。腹が減ってはなんとやらだ。
「騒いでいるね」
指揮官のいない軍隊とはこれほど脆いものなんだな。まあ、無理もないが。
「レイは凄いよね。こんな状況でも落ち着いてんだから」
ロレンソが呆れている。君も異星人の中で馴染んでいるのも凄いものなんだからね。
「人なんて千年経とうが、千年前だろうがそう変わらないもの。戦争している時点でお察しさ。騙し合い、裏切りなんて日常茶飯事だよ」
ましてや部下など使い捨てだろうよ。自分たちが助かるなら感情一つ動かさず切ってしまうさ。ボクを見る目も蔑んでたしね。
「ジージーは戦いに出る前のこと覚えている?」
「訓練所で過ごして来たけど?」
「懐かしいところだった?」
「え? いや、別に訓練していただけしか記憶にないわ」
ジージーと話していて愛国心とか憎しみとかで戦っている感じはなかった。そう教えられ、選択肢を与えられず、ルクセルを敵として攻撃している。信念ってものがまるでないのだ。
「あの頃に戻りたい?」
「……いや、別に……」
「じゃあ、この星に落ちてからはどうだった? 辛かった? 苦しかった? それとも悪くなかった?」
立ち止まり、ジージーを見た。
「……わ、悪くなかったかも……」
その答えににっこり笑った。
「ボクもジージーと出会えて悪くないと思っているし、こうしてジージーと別れなくてホッとしている」
「あたしも悪くないかな」
「わたしも悪くないわ」
ロレンソとランジンがジージーの肩に手を置いた。
「それが答えさ。まだ不安かい?」
首を傾げて尋ねた。
「……不安じゃない……」
うんと頷き、ジージーを抱き締めた。
「ボクは感謝しているよ。上の連中がジージーを残してくれてね」
前世の記憶があり、生死が身近な世界で生きていると人間関係が淡白になってしまうが、ジージーとの出会いがボクの人生をより楽しくしてくれた。この縁は大切にしたい。
「まだジージーと一緒にいたいよ」
なんか愛の告白みたいだが、一緒にいたいことに間違いはない。素直な思いを言葉に出来るほどにね。
「……レイ……」
うん。そう頬を染められると百合っぽくなるから止めてね。 別にそういうのは求めてないんだからさ。
「だから大丈夫。怖がらなくてもいいし、不安になる必要もない。むしろ、解放されたと思っていい。ジージーたちは新しい生を得たんだからね」
上が切り捨てたのなら軍籍から外れたも同じ。責任は上にあり、切り捨てられた下に責任はない。死ねと命令されたわけじゃないんだ、好きに生きさせてもらいましょう、だ。




