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終末世界、AIと生きる  作者: 雛月 みしろ
1章:”シエスタ”
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南a-3地区:工場跡

 南a-3地区:工場跡

地区名は“ルシエラ”での管理のために割り振ったものだから正式な名称ではない。ここは前はなんて言われていたっけ。そんなことはどうでもいいか。とりあえずあの建物から調査しよう。建物に近づくと扉があったと思われる場所があった。

「あれ思ったよりも綺麗」

工場内は10年も放置されていたとは考えられないほど綺麗だ。とはいえこの周辺も被害がすごかったはずだからから気を付けて進もう。


「えっ」

少し探索しているとこの建物が綺麗な理由がわかった。

「凄い、奇跡だ」

なんとこの建物はまだ生きていた。管理AIが機能している。部品が搬入されていないから生産ラインのロボットは休止状態だけどロボットの整備や建物内の清掃ロボは今も稼働している。

「管理者様聞こえますでしょうか?」

管理AIに問いかけてみる。

『なんでしょうか』

「まずあなた様をなんてお呼びすれば良いでしょうか」

まずはこの管理AIにつけられた名前を聞いてみた。AIの発展と共に成長した共生社会でAIに名前がつけられるようになっていった。

『私は“シエスタ”と呼ばれております』

「“シエスタ”様ですね。私は“ユラ”と言います」

私は“ルシエラ”に登録している名前を名乗る。

『“ユラ”様ですね。私に敬語は不要です。ご用件は何でしょう』

「“シエスタ”あなたは外の状況を知っていますか?」

まずはどこまで状況を把握しているかを確認することが優先かな。

『いえ、10年前の9月15日までは工場、通信ともに正常に稼働していましたが翌16日の13時27分36秒にサーバや他の工場との通信が不能となり、その後も作業員、来訪者も確認できなくなりました。同日の16時18分57秒と16時38分5秒に緊急信号を受信しましたが詳細、応答がありませんでした。その為外の状況は把握しておりません』

「ありがとう。私が知っている情報を共有しておくね。10年前の9月16日に突然青白い光が確認された瞬間に都市は崩壊。私以外の生存者は不明。当日は何度か緊急信号を受信したけれど内容不明。」

“シエスタ”に私が持っている情報を共有する。

『そうなのですね。でも疑問点があります。何故“ユラ”様は生存することができたのですか?』

「わからない」

そう。わからないのだ。他の生存者もいなければ死体もない。あの光すらわからない。

「私からも質問。この施設はなんの施設?」

『この工場は主に機械を製造していました』

本当に運がよさそう。

「ここの設備はまだ使える?」

『はい。この管理棟、VTOL自動車の製造ライン、整備用ロボットの製造ラインすべて使用することは可能です。ただここは別工場で製造した部品の最終組み立て工場ですから部品がないと稼働しません』

ここの工場で製造されているもののパーツでは“ルシエラ”の部品としては使えないけど部品の製造会社は全て規格を統一している。部品の製造工場が生きていれば“ルシエラ”の部品の確保が可能になる。

「ねぇ、部品の製造工場がどこにあるかわかる?」

『はい。半導体は熊本県と北海道に、その他の工場は大阪府と静岡県に所在しています』

一番近くて静岡か。VTOL自動車が確保できれば安全に行くことが可能だろう。

「組み立てが完了しているVTOL自動車ってある?」

『はい。部品に余裕がありますのでしばらくは使用することが可能です』

「その自動車と整備用ロボ、予備部品をある程度譲ってもらうことできる?」

賭けに出た。本来は絶対に認められない提案だけれど状況が状況だし認められるかもしれない。

『はい。可能です。ですが整備用ロボットはこちらでの稼働分も確保しないといけないので3機と少しの予備部品が限界です』

「3機も貰って大丈夫?」

3機が限界ならもう少し余裕を持たせる方がいいよね。

『はい。予備含めて過剰が3機あります』

「そう、なら3機貰うね。“シエスタ”何かやってほしいことある?対価としてはこれくらいしかできないから」

もちろんただで貰うつもりはない。

『二つあります。一つは正式な“マスター”になっていただきたいです。おそらく前の“マスター”は亡くなったと思われますから。もう一つは私の部品の調達をお願いしたいです。予備部品が底をつきそうで』

「わかった。先にマスター登録しよっか」

やっぱりここも部品不足になりはじめている。見た感じ“シエスタ”も“榛名型”だろう。

『それでは“ユラ”様を正式な“マスター”として登録を更新します。……更新が完了しました。次に部品調達に関してですが可能でしょうか?』

「見た感じあなたも“榛名型”よね?」

まずは型名を確認する。最新の“最上型”と“榛名型”では部品の規格が異なるし“最上型”は10年前に出てきたばかりだったから生産数も少ない。予備部品の確保が難しくなってしまう。

『はい。“あなたも”ということは他に登録している機体があるのですか?』

「えぇ、同じ“榛名型”に登録しているの。静岡の工場で“榛名型”の部品って製造されていた?」

この付近には“榛名型”の部品はない。少なくとも“ルシエラ”で管理できる範囲には部品はないだろう。であれば製造ラインが生きていることに賭けて静岡まで行く方が部品を確保できる可能性があるだろう。

『はい。生産されていました。ですが静岡工場の“フジ”と連絡が取れないので製造ラインが生きているかは不明です』

「わかった。あとどれくらい保ちそう?」

準備にも時間が必要だし、向こうの被害状況も不明。安全を確保しながらの移動になるから通常の倍以上の時間がかかるだろう。

『あと1年は保ちます。それ以上は不明です。』

1年……ラインが生きていればある程度余裕はあるけれど、もしラインの修復からだと間に合うか怪しい。

「わかった。できる限り早く進める。けど被害状況によっては1年以上かかるかもしれない」

『わかりました。工場の所在地をお譲りする自動車に登録しておきますね』

「ありがとう。車の整備にはどれくらいかかりそう?」

まだこの辺の調査は終わっていないとはいえ時間によっては明日も来ないといけないかもしれない。

『本日中のお渡しは難しいです。大きな問題がなければ明日のお昼ごろにはお渡しできます』

「わかった。明日のお昼にまた来るね」

“シエスタ”にそう伝え私は調査を続けるために外に出た。

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