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66.転換点1

「よし、行きましょうか!」


 夕暮れ時、支度を済ませ出発する。目指すは浴場、冒険者とは一体どのような人たちなのか楽しみだ。


 先生も一応現役冒険者だが、冒険者には研究素材採取のためになっているだけであって本業は研究者。母さんは元冒険者だが今は飲食店勤務。理由は知らない。


 住宅街を抜けて市場に向かうと、酒場漏れ出る喧騒、窓から溢れる光、また外に設けられた机で酒を煽る人々、遊びまわるカップル。とても活気に満ちている。そして人々を照らす暖色のランタンの光が綺麗だ。


「そうか、この時間にここを通るのは初めてなんだっけ、ヒューレン?」


「ふふ、そんなにキョロキョロして」


 こういう活気ずいた雰囲気はとても好きだ。なんというか、人の幸せそうな雰囲気に触れるだけで心が安らいでいく。


 しばらくすると、眼前に一際大きな建物が姿を現す。


「あれが?」


「浴場よ」


 玄関扉を人が行き来する。出てくる一部の人は少し髪に光沢があり、先ほどまで浴場にいたことを物語っている。しかし、髪が乾いている人は何をしていたのだろうか。


 ひとまず建物の中に入っていく。入り口を潜ると廊下が二手に分かれており看板によって男女を分けるようにしているようだ。


「じゃあここで。また後でね、ヒューちゃん、マギー」


「ああ、また後で。さて、行こうかヒューレン。この先が男湯だ。」


 突き当たりへ進み、曲がり角を曲がると脱衣所が見える。脱衣所で服を脱ぐ。


「ヒューレン、かなり体が仕上がってきたね。」


「まあ、あのメニューをこなせばこうもなりますよね。」


 訓練が始まったばかりは良かったが、森に連れ出されるようになってからは大変だった。


 なんと母さんは魔物6、7体以上の群れを見つけては僕を放り込んだ。おかげで360°に注意を向けつつ戦うことができるようになったが、棍棒や剣の斬撃は痛かった。


 特にオークジェネラルを倒した後からは大変だった。魔物の襲撃から生き残れるレベルの技術はついていたがより強いモンスターを倒せるように訓練された。


 おかげで痛みに耐性が付き、ほぼAランクの魔法使いブラッドオーガとの戦闘も勝利することができたのだった。


 まあ、割れてはいるものの密度の高い筋肉のつき方をしたため、いわゆる細マッチョのような状態になっている。服を着た状態では普通の子供にしか見えないだろう。


「タオルは持ったね。よし、じゃあ行こう!」


「はい!」


 扉を開けると、水気を含む暖かい空気が僕と先生を包み込む。中は全面石造りで、壁や柱に装飾が施されている。何より洗身設備が設けられていることの衝撃が大きい。


 そして一際目を引くのが大きな風呂。湯気で奥が見えない。近くに火山が無いため恐らく石窯でお湯を炊いているのだろうが、どれだけの費用がかかっているのだろうか。


 まずは念入りに体を洗う。石鹸はほぼ前の世界と同じものでいい匂いがする。タオルの肌触りも非常にいい。


 湯で体を流し、体を洗い終えたところで待ちに待った風呂に浸かる。


「ふぅ〜、やっぱり広い風呂はいいねぇ」


「ああ〜、しみるぅ〜」


「どうだいヒューレン?湯加減は」


「非常にいい。この少し熱いくらいが丁度いいですね」


 本当に、この浴場を運営する人はよくわかっている。


 しばらく湯に身を任せていると、


「ああ、誰かと思えばマギーさんじゃないですか」


「やあ、奇遇だね」


「アンタがここにいるなんて珍しいな」


 少し離れたところに座っていた男性2人組がこちらに気付き、こちらに近づいてくる。

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