63.おうちに帰ろう
不自然な描写があると思いますがスランプの影響です。どうか見逃してください…
空はやがて、茜色に焼けて日は地平線の彼方に飛び込もうとしている。
「よし、そろそろ時間だ。これにて試験終了、お疲れさまヒューレン」
「これで終わりですか、長かったような短かったような…」
「ひとまず試験の結果を急ごうか。『スペートウォル(空間転移)』!」
体が重力から解放されたような、フワッとした感覚に包まれ、次の瞬間、眼前には見慣れた光景が広がる。ついに試験は終わりを迎えたのだと実感する。
「フィーは試験の結果を告げるべく、中で待っているよ。それじゃ行こうか」
一歩一歩を踏みしめる。緊張が背筋を」伝う。自らの母親によってとは言え、試験の結果を知る瞬間というのはいつ何時もこの感覚に襲われるものだ。
「そこまで緊張しなくてもいいんだけどな…君の母さんだろ?」
「試験の結果を告げられるのに、緊張のひとつしない人間がいますか」
汗のにじむ手をドアノブにかける。そして腹をくくり、手に力を入れノブを回した。
「ヒューちゃん!!!」
「う、うわぁ!」
物凄い勢いで影が迫る。直後に感じる包容感のある温かい感覚。
「ただいま、母さん」
「おかえり、また少したくましい顔つきになったわね、ヒューちゃん」
僕の体を包む腕をほどき、肩にそっと手を乗せる。いつの間にか玄関を前にして募らせた緊張も消えているのだから母親の力というのはスゴい。
「よかったわ、無事に帰ってきてくれて。試験は合格よ」
「え…」
何の溜めも無く急に告げられた結果に思わず唖然とする。
「だ・か・ら、合格よ!」
「や、やったー!……?」
「ホントに喜んでるー?」
母さんが怪訝な顔をしてこちらの顔を覗き込んでくる。もう正直に言わせてもらおう。
「何の前置きも無く急に試験結果を告げられて唖然としない人なんていますか…」
「あ、あらやだごめんなさいね」
絶対反省してないの丸わかりなんだけどな。あ、もしや母さんがこちらの意図を汲み取ってくれたのだろうか。だとしたら少し悪いことをしたな。
「ごめん母さん」ボソッ
「?ああ、いいのよ。マギーも、3日感ヒューちゃんに付き合ってくれてありがとうね。」
「なに、お安い御用さ」
「じゃあヒューちゃん。今日は疲れたでしょう。お風呂に入りなさい。」
「うん、先生、また明日」
「ああ、ゆっくりお休み、ヒューレン」
片手を上げ、にこやかに微笑む先生と、母さんを尻目に風呂場へ向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「しみるぅ〜」
思えば、久々の湯船だ。まさかこうして疲れを湯船で流せることに感動を覚える日が来るとは、骨の髄まで湯の温かみが染み渡り、溜め込んだ何かとともに流れてゆく感覚がとても心地よい。
パシャパシャパシャッ
ルナが触手を蛙、またはアメンボのように動かし、水面を滑るように泳いでいる。かわいいヤツめ。
手のひらを器のようにするとルナは自ら乗ってくる。
「ルナも3日間お疲れ、ルナがいなきゃ今頃僕は死んでたよ。本当にありがとうな」
ルナが少し縮まってほんのり赤くなる。かわいいヤツめ。
「さて、のぼせないうちに上がろうか」




