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59.スペツナズ・ナイフ

「フンッ!!」


 思いっきり体を仰け反らせ、ダガーを投げる。


ヒュオオオ!


 凄まじい速度を伴ってダガーは空を貫く。


 ダガーはブラッドオーガの首を掠める、だが直後、再びブラッドオーガにダガーが襲いかかる。


 次も、また次も、絶え間なくダガーは襲いかかり、ブラッドオーガの体にみるみるうちに傷が増えていく。


「グゥゥ…」ブンブン!


 大剣を力一杯振るい、なんとかダガーを弾こうとブラッドオーガは粘っているが、微塵も意味を成さない。


ヒュゥゥゥン…ビュォォォ!!!


「あれは、フィーがよく使う技か」


 母さんから教わったダガーの力を最大限に引き出す戦法。それは、投げたダガーを先回りしてキャッチし、再び投げ、ダガーを先回りしてキャッチし投げるを繰り返す1人コンビネーションだ。


 これによって、ダガーをキャッチする時間をカットできるため四方八方から襲いかかる弾幕のような攻撃を仕掛けられる。


 異世界でなければ実現しない攻撃手法だろうな。いやもちろん凄まじいスピードで射出されるナイフくらい元の世界にもあるが、流石に1人でナイフの弾幕は仕掛けられないだろう。


 もうしばらくブラッドオーガにダガーを浴びせている。かなりブラッドオーガにも限界が近づいてきただろう。ブラッドオーガは抵抗することを諦めた。


「トドメだ」


 ジャキ


 ダガーを仕舞い、剣を引き抜く。もう足も限界が近いので、これで終わってくれ。


 ブラッドオーガに接近、剣を振り切ろうとしたが…


「ア゛ァァァァ!!!!!」


 ブラッドオーガがこれまで以上に凄まじい声量で方向を上げる。


 同時に、黒みがかった紫のモヤがブラッドオーガの体から放出され、吹き飛ばされた。


 だが、何とか着地に成功する。僕の視界は恐ろしいものを捉えた。


 今まで戦いに夢中で気づかなかったが、周囲には禍々しい霧が立ち込めていた。おそらく呪いの媒介となるブラッドオーガの魔素だろう。


「オオォォォ…」


 遠くから雄叫びが聞こえる。それと同時に地面をわずかに伝う揺れを感じる。


「魔物が、こちらに向かっている?」


「ヒューレン、恐らくあのブラッドオーガが魔物を呼び寄せている。そして…」


「うわぁ」


 先生が何か言おうとしたが、割り込むように突然木が地面をのたうち回るように蠢き出し、轟音が空気を揺らす。


「木が魔物化して、トレントに変貌する。」


 木の幹が裂け、おぞましい顔のようなものを浮かべる。


「ヒューレン、極めて危険だ。僕が変わろう、後ろに下がっていてくれ。」


「いえ、まだヤツの首を落としていませ _。」


「ダメだ、今の君には手に負えない!」


「僕に最後までやらせてください!」


 この状況の異常性と危険性は重々承知している。だが、一度狩ると決めた獲物を逃せば、僕の心には悔いが残る気がした。

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