58.万事徹底
傷口から血管が黒い筋となって浮き上がり、僕の肌を伝う。肌は血色を失い、白くこけていく。
「…傷口から体を腐食する呪詛魔法か」
痛みを感じなかったのは呪詛によって神経が麻痺していたかららしい。
「ッ!」
ガン!
スタッ、ザッ、チャッ
ブラッドオーガの攻撃を掻い潜り、なんとか茂みに身を隠す。
「魔法、というか呪いか…。スリップダメージ付与とか精神干渉的なのがくるのかと思ったら、体が物理的にボロボロになっていくのか…」
神経までやられたらその部分が機能停止する。実質体の一部が欠損したのと変わらない。
「できるだけ早くけりをつけなければ、短期決戦に持ち込むか…」
バキバキバキッ!ドーンッ!
「ッ!」
突然木々が薙ぎ倒され、土埃の中から赤い目がこちらを凝視している。咄嗟にバーストで空中に飛び出す。
「考える隙すらも与えないか、徹底してるな」
後ろバク宙捻りで衝撃を逃して着地する。
「仕方ない、極めて早くこの戦いを終わらせるためだ。やむを得ん」
正直、体への負荷がデカいので使いたくないのだが、今の僕には時間の猶予がない。
「スゥ…ハァ…はぁ‼︎」
ドゴォ‼︎
思いっきり地を蹴り、ブラッドオーガの脇へ接近する。
シャキュイィーン…!
ダガーを逆手に持ち、斬りつける。そして木に着地し、またすぐさまブラッドオーガに接近し、斬りつける。
ブーストによって体にかかる負荷を考慮しない場合。
たとえばブーストによってダッシュすると、慣性によって完全に止まるまでにタイムラグが生まれてしまい、次の行動までに隙が生まれるが、感性によるエネルギーよりも高いエネルギーを別方向から加えれば、慣性は打ち消される。
これにより、行動と行動の間の隙を埋めることができる。だが、慣性を打ち消すとき、必然的に別方向から二つのエネルギーに挟まれるので体へのダメージも大きい。無論、10歳の子供がそれをしようものなら尚更である。
慣性キャンセルに加え、エレメンタルバーストの出力も少し高めた。
シャキン、ザクッ、シュイーン!
ブラッドオーガの隙を目掛けて突撃を繰り返す。ブラッドオーガの体に浅い傷がみるみるうちに増えていく。
だが、ブラッドオーガも流石に何度も同じ手を喰らうわけもなく、徐々にこちらの動きに反応し始める。
「グオォォォ!!!」
大剣が空を裂く低い音が耳に届く。バク転で回避し、すかさず距離を取る。
だが、
「何ら問題は無い」
もう接近して斬りつけるのはリスクが伴う、だが、ダガーはもとより投擲武器だ。
そして、慣性キャンセルとダガー投擲を組み合わせたとき、ダガーはその真価を発揮する。(母さん曰く)




