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57.格上の相手

スゥ〜…ハァ〜…


 いつでも行動に移れるように構え、腹式呼吸で精神の安定を図る。そして眼前に佇む敵に全神経を集中させる。


 すると視界が明瞭に、かつ視界に映る全ての動きが細かく捉えられる。まるでスローモーションのようだ


 ザッ、バァーン!、ジャキュィィィーン


「!?あ、あっぶな…」


 ブラッドオーガの運動能力を甘く見ていた。


 ほぼ瞬間移動と変わらない挙動で接近し、大剣を振るってきたのだ。


なるほど、『ユバトス(風属性移動魔法)』か


 間一髪、ブラッドオーガの脇をくぐるようにして回避したが、これは今までより気を引き締めていかないとな。


「次はこっちの番だ。フッ!」


 剣を右手に構えたままダガーを構える。


 ブォン!


 バーストで移動しつつ、ダガーの刃を摘んでスナップを効かせ投擲。


 素早くブラッドオーガの死角に回り込む。


 そして一瞬で間合いを詰め、斬りつける。


 ザシュッ!


「ウヴォア!」


 ブラッドオーガの肩に振り下ろした剣が突き刺さる。


「ダガーを投げて後ろに回り込み、ダガーが命中すると同時に攻撃を加える1人コンビネーション。すごいじゃないかヒューレン、まるでフィーみたいだ!」


 だが、やはり体が硬く、バーストの爆風を乗せても致命傷は与えられない。


 ブラッドオーガから飛び降り、ダガーを回収して距離を取る。しかし同時に、ブラッドオーガはこちらに突進する。


「グォォォォ!!!!!!」


「(さながら化け物といったところか…)」


 驚異的な反応速度だ。こちらはまだ空中にいるため身動きが取れない。


「フッ!」


 着地した瞬間バク宙をする。しかし相変わらずの爆速の猛進を回避するのは至難の技だった。


シュッ…!


「グッ!」


 ブラッドオーガが振るった大剣が足を掠める。


 刹那、この上なく不快な感覚と耐え難い苦痛が織り混ざったようなものが体をほとばしる。そして肌を伝う生暖かい感覚。


「(痛ッ!足を浅くやられたか…だが、)」


 格上に挑んでいる身の上、この程度の痛みはもとより覚悟の上だった。


「バースト!!!」


 ブラッドオーガにエレメンタルバーストを浴びせ、怯んだ隙にダガーで斬りつけすぐさま距離を取る。


「ヒューレン、回復しよう!」


「いえ、大丈夫です!自分の実力だけで勝ちたいので!」


 これまでに学んできた戦闘技術、戦法の全てを総動員して戦う。だが、相手はブラッドオーガ、しかも魔法を使う特殊個体であるためその身体能力は尋常ではない。


カン!キン!ガァン…!


 互いの刃を重ねるにつれ、体に傷が増えていく。だが、怯むことなく順調に戦闘を繰り広げる。戦況はこちらがやや優勢、心なしか、傷の痛みも薄れてきたように感じる。


 だが直後、全ては幻なのだと知ることになる。


「なんだ…これ…」

【SLIME MASTER】第57話『格上の相手』お楽しみいただけましたか?


 僕自身としては、以前よりかなりバトルシーン描写のクオリティが上がったかと思います。恐らく次の投稿までまたしばらく開くと思いますが、気長にお待ちください。

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