4.無能の烙印
次の日、今日は母さんの仕事があるそうで、朝食を取ったあと出掛けていった。
なので僕は今日一日家の中をうろうろしたり、外で運動しながら過ごした。
そしてその夜、夕飯を済ませて僕は皿を母さんに持っていく。そこで母さんに聞いてみたいことが頭に浮かんだ。
それは何かというと、母さんに皿を持って行くと手から緑に光る光が出て、その光が皿を包み込み、そして次第に光が小さくなって消えていく。そして皿には汚れ一つ残っていない。
あの光が何なのか僕は気になっていたのでこの機会に聞いてみた。
「ねぇ母さん、その光ってるのなぁに?」
「これはね、精霊様の魔力よ。」
何それ?と思ったのでキョトンとしてみる。悟ってくれい。
すると母さんは察したようで一度笑顔を浮かべ、
「精霊様の魔力っていうのはね、スキル【精霊術】を持っている人にだけ扱えるものよ。」
「魔法と何か違うの?」
「精霊術っていうのは、精霊を介して魔法を発動すること。普通に魔法を使うよりも魔力変換効率が良くて呪文詠唱も必要ないから使いやすいのよ。」
「ふぅ〜ん」
正直、何を言っているのかさっぱり分からなかった。まるでやたら専門用語を使いたがるうんちく野郎の話を聞いているみたいだ。
そんなことよりも気になるのが…
「僕にも魔法って使えるのかな?」
すると母さんはバツが悪そうに黙り込んだ。そしてしばらく沈黙して母さんは口を開いた。
「そうね、今があなたにこれを伝えるべきなのかも知れないわ。
ヒューレン、これからあなたに話すことはあなたにとてもつらい現実を突きつけることになるかもしれない。それでも、母さんの話を聞いてくれる?」
正直、母さんのこの言葉を聞いて僕は大きな不安を感じた。それでも、僕が母さんの話を聞かないわけにはいかなかった。
なぜなら、母さんが覚悟を決めて僕に大切な事を伝えようとしてくれているのに、僕が自分の恐怖心から、現実から逃げるという選択を取ることが僕にはできなかったからだ。
「うん、聞くよ、母さん。」
僕は一言、言葉を放った。
母さんは真剣な面持ちで一度、深く頷いた。そして僕に着いてくるように言った。
僕は母さんの後をついて行った。
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僕は母さんに連れられて寝室に入った。
いや、正確には寝室だと思っていた部屋に入った。
その部屋の中には、確かにベッドもあったが僕の目を引いたのは大きな本棚とそこに並ぶやたら分厚い本の数々、そして木彫が繊細で美しい黒光りする机だった。
その部屋は書斎だった。恐らく、今は亡き、この子の、いや、僕の父親の書斎だ。
母さんはその机の引き出しから一枚の紙を取り出した。