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9.母と息子と異界人1

 まぁ名残惜しいのは、この世界ではバースデーソングが歌われない事だがでもそれでも嬉しい物は嬉しい。


「ヒューちゃん、火を消す前に聞いてほしいことがあるの。」


 母さんは一呼吸おいて、覚悟を決めたように声を発した。


「あなた、ヒューちゃんじゃないわよね。」


「・・・え?」


「もう一度言うわ。あなた、ヒューちゃんじゃないわよね。」


 聞こえなかったわけじゃない、動揺してしまったんだ。全く予想だにしていなかった言葉を浴びせられて。


「どうして、母さんはそう思うの?」


「ヒューちゃんは、私の事をママと読んでいたわ。それに初めてあった時、何となくヒューちゃんとは違う気配を感じたの。


 その後も、夜は絵本を読まなくても一人で寝るし、お風呂も一人で入った。昼間もに部屋に籠もることもあるし。


 それからもあえて放置していたら案の定ヒューちゃんじゃ取りえない行動を貴方は見せた。」


 母さんは、自分の息子を失ったかもしれない不安とヒューレンになりすましていた得体の知れない『ナニか』への恐怖と闘っているのだろう。とても真剣な顔をしている。


 誤魔化せは…しないか。


「そうだよ、僕はヒューレンじゃない。」


「なら、あなたは何者なの。私の息子をどこへやったの!」


 初めて見る母さんの必死な顔に恐怖を覚え、僕はたじろいだ。


「…わからない。」


「何よ、それ、どういうこと…。」


「僕には、おそらく前世のものかも知れない記憶がある。


 僕は前までこことは違う世界の人間だった。僕がいた世界には魔法もスキルも無かった。僕の前世の年は17歳だった、死んだ時の記憶は無くて、気づいたらヒューレンの体になっていた。」


「なら、ヒューレンがどうなったかは」


「…いや、あいにく。」


「そう…よね。」


 母さんはしばらく沈黙した。顔を覗くと目に涙を浮かべていた。


「…ヒューレンは、私の息子は死んでしまったの?…返してよ、私の息子を返して…」


 目に涙を浮かべながら悲しみを吐露する母さんの前で僕は何もできず、ただ時だけが過ぎていった。


 本当に、今僕に出来ることはないんだろうか。僕は目の前の人ですら救うことが出来ない程無力なのだろうか。


「きっと、ヒューレン君は生きてるよ。この体の中で、夢を見たんだ。母さんと、父さんの夢を。二人の間でヒューレンはとても楽しそうに笑ってた。


 父さんが死んだ時の夢を見た時、僕は何も知らない人の葬式を見てるのに、そして、本当に薄情にも、悲しくないのに涙が溢れた。きっとあれは、ヒューレン君の感情だと思う。」


 本当のことだ。僕はあの1件でヒューレン君が僕の中にいることを確信している。

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