真相特急(仮) 第一話
雄二は困っていた。昨夜11時に床につき5時間、全く眠れなかった。原因は?と聞かれて即答できるようなものはないが、人生について疲れ切っていた。
ふと、昨今はやりのロックミュージックを口ずさむ道の女性の声を聞いた。
彼は身長が190cmと幾分高い他は取り立てた取り柄のない平凡な男だった(と思っていた)。兄の太郎も、平凡ではあったが何でもそつなくこなせる奴であった。
夢がある人間は輝く。作家という夢を持っていた雄二は、それを先月諦めた。それ以降の人生は全てがコントロールできない感があって堕落した日々をすごした。
「俺は何になれるのか」
そんなことばかり考えているうちに、日が昇っていた。
目を覚ますころは、いつも太郎は満員電車に乗っている時間だった。スクランブルエッグのまずさに驚きつつ半目を開けていたとき、急にテレビに飛び込んできた赤字のテロップと、そそかしそうな女性。
「先程、田園都市線青葉台駅において、20代の男性が電車に飛び込みました。男性は体を打ち、死亡したとのことです」
瞬間、背筋にはりねずみが通ったかのように感じた。
画面に写っていたのは太郎だった。
祖母の春美に事情を伝えると、気絶してしまった。しょうがない。
そこからの数日はあっという間に過ぎていった。病院の往復、葬式。。。走馬灯のように感じられた数日、雄二はなぜかこれまでの人生で最も、しっかりしていたようだった。
実は太郎は雄二のそばにそれからずっといた。人間界に残っていたのだ。声は届かないから、ずっと座っていたが。