「第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品シリーズ
屋根裏でラジオ聞きながら闇鍋で年越し
「ねえサトシ、大晦日……ヒマ?」
上目遣いでじっと見つめてくる幼馴染のユナ。
「お、おお、特に予定はないけど?」
「そっか、じゃあ一緒に年越ししようよ……私の家で」
お誘いキター!! これは……期待していいんだよな?
「あの……ユナさん、これは一体?」
俺たちは真っ暗な屋根裏部屋で向かい合っている。
……グツグツ音を立てる鍋を囲んで。
「闇鍋よ」
「なぜ闇鍋?」
「年越しだからよ」
普通は蕎麦とかうどんだろ!? さすが天才は発想が違う。
「ほら、早くしないと年が明けちゃう!」
ユナに急かされて鍋から適当に箸で取り上げる。
「ふふ、何かしらね~? どうぞ召し上がれ」
怖い……めっちゃ怖い。意を決して口に運ぶ。
「なんだこれ……缶?」
「缶コーヒーよ。当たり引いたじゃない」
缶コーヒーで当たり……だと? ユナのやつ一体何を入れたんだ。
「私の番ね。うわっ!? えんぴつだ、この味は……HBね」
何入れてんすか? っていうか味でわかるんですか?
「俺の番か。重っ……やたらデカいな、箸が折れそうなんだが」
「私が六年間使ったランドセルよ」
せめて新品にしてほしかった。っていうかよく鍋に入ったな。
「私のターンね。んん? この味は、量子力学の本ね」
味でわかるのかよ、さすが天才っていうか本入れんな!!
「また俺の番か。せめて食い物カモン! なんだろう、この固いやつ」
「ひまわりの種ね、またまた大当たり」
ハムスターになった気分だよ。まあでも食えるだけマシなのか。
「私もなんか食べたいな……あ……これ夏祭りですくった金魚……」
ユナさあああん! それ入れちゃ駄目ええええ!!
「……柄のヨーヨー」
ふう……焦るじゃねえか。
「さてと今度は何かな……うん? 何だこれ……嚙み切れないけど」
「私の体操服ね。体育祭から洗ってないヤツ」
汚ねえっ!! けどちょっと興奮してしまっている俺って一体……。
「なあユナ、そういえばこの鍋なんでおふだ貼ってあるんだ?」
暗闇に目が慣れてきたせいですげえ気になる。
「さあ? なんか厳重にしまってあったから良い鍋なんじゃない?」
いや……絶対に悪い鍋だろコレ。
天窓には冬の星座が瞬いている。
ラジオからはカウントダウンが聞こえてきた。
「もう鍋空っぽだな」
「まだよ。最後にとっておきが残っているんだから」
普段はポーカーフェイスのユナがはにかむなんて珍しい。
「とっておき?」
「アナタよ……サトシ」
「そ、それって……」
「チェックメイト、来年もよろしくねマイダーリン」
2022年、年内最後の投稿になります。
最後なので、キーワード全部盛りにしてみました。皆さま良いお年を~(*´▽`*)