第七話 影の襲撃
白い月が丁度天井に達したであろう深夜
音もなく、ルカール村に近づく者たちがいた。
彼らは全身を黒装束に身を包み軽装ながらも只者ではない気を纏わせていた。
集団のトップらしき男が一言だけ発する。
「行け」
数名の影はその号令に頷きもせず、ルカール村に向かって行ったのだった。
「………て……起き……起きろーー!」
「ふぁ!?」
情けない声を出しながら俺は起きた。
まだ眠そうな瞼を頑張って開けると、そこにはティルがいた。
「あれ何でティルがここに?」
よく見るとティルはさっきまでの寝間着ではなく、魔女の格好をしていた。
「話は後!今は一刻も早くここから逃げないと!」
ティルはとても真剣な表情をしている事から察するに何か予断を許さない事が起きたのだろう。
「わかった。逃げよう!」
下の階に降りると剣を持ったシナリアさんが玄関ドアの隙間から外の様子を伺っている。
「シナリアさんお待たせしました」
ティルがそうゆうと、シナリアさんはこっちを見て
「あら~おはようございます。こんなに外が騒がしいのによく寝てられましたね?私も今度寝てみようかしら?」
と笑いながら話しかけてきた。
いや~ホントにお恥ずかしい限りで何にも言えなかったので、とりあえず笑っておいた。
「外の状況はどう?」
外の状況を尋ねるティルにシナリアさんは
「最悪ですね。相手は少数ですが手練れの賊…いえこの動きは王国暗部の小隊ですね」
シナリアさんの返答を聞いたティルの顔は強張った表情をしていた。
ティルとの付き合いはまだ二か月しかないが、あの狼達に囲まれている時でさえこんな表情はしていなかった。
きっとそれほどの敵なんだろう。
しかしなぜそんな連中がこんな辺鄙な小さい村に襲撃しているんだ?意味が分からない。
てかおそらくは、この場で状況を理解していないのは俺だけなんじゃ?
「グラニスはどこにいるんだ?確か今日は朝まで門番だったはずだろ?」
俺は疑問に思ったので聞いてみると
「今もまだ村の門近くで戦っていると思うわよ~。あの子はこんな連中に負けるほどやわじゃないしね~」
シナリアさんがそう答えてくれた。
まあ、確かにあいつの槍さばきはすごかったけど
さすがに王国暗部なんて物騒な連中に勝てるのか?
どのみちこっちも助けに行く余裕なんてないけど…
「今ね…二人とも行くわよ!」
俺達が話している間も外の状況を観察していたティルが指示を出したと同時に外に飛び出し、俺たちはその後を追ったのだった。
暗い森の中へ逃げ込むことに成功した俺達は森の中を南に向かって進んでいた。
「何とか逃げ込むことには成功したけど、これからどうするんだ?」
俺が聞くとティルが答えてくれた。
「とりあえず南に向かう。そこに味方になってくれるかもしれない人がいるから」
味方?つまり王国は敵ってことか?
もしかしてあの時見た国旗って……
その考えを言葉にしようとしたその時だった。
突如暗い森の中から一本のナイフが俺の目の前に飛んできたのだ。
全く反応ができず、当たる寸前のその時
甲高い音と共に
いつの間にか持っていた剣を抜いていたシナリアさんが、叩き落としていた。
危なかった…とゆうかシナリアさん戦えたんですか?
てっきりお守り程度に剣を持ってきたのかと思った。
そんな悠長なことを考える余裕もなく、
前方から現れた黒装束の男は、シナリアさんに斬りかかる。
それをシナリアさんは避け、一太刀をいれようとするも黒装束の男は
軽く避けてしまう。
やがて両者にらみ合いの状態となり森に静けさが返ってくる。
たった一度、斬り合いになっただけなのに空気がとても重い。この息苦しさは狼との戦いには感じなかった。これが人間同士での戦いなんだろう…
そのにらみ合いの中、シナリアさんが先に動き出すと同時に声を上げる。
「行きなさい!」
そう言って、目の前の黒装束の男に斬りかかった。
ティルに視線を向けると頷き、俺とティルはその場から脱出した。
黎斗とティルが走り去った後、その場に残った黒装束の男とシナリアは数度斬り合うと再び睨み合っていた。
するとその沈黙の中、黒装束の男がシナリアに話しかけてきた。
「まさか、あなたも生きておられるとは。帝剣の妻にしてその昔こうも呼ばれていましたね……」
「ディアボリックレイブン………と」
こんばんわ!楽道です。
ギリギリ今日間に合いましたので投稿しちゃいます。
次回は明日の2時か朝くらいだと思います。
よろしくお願いします。