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05-幼い出発

「昨晩からここに宿泊している冒険者たちのリストを見せていただけませんか?」


宿屋の主人、ダドラーにそう伺う。


「ああ、いいとも。もしや今この場にいるというのかね?だとしたら都合がいいが…」


私の見間違いでなければ、適任はすぐそこにいるように思う。ダドラーから手渡された資料には、細かな字でびっしりと、宿泊者の名前が記されていた。上から順番に名前を見ていく。時折見知った名前を見かけるが、大半はこの付近の冒険者ではないらしい。恐らく他の街から依頼を受けて、ここまで足を運んできているのだろう。しばらくの間、資料と睨み合っていると、お目当ての人物を見つけた。


「見つけました、彼です。名前はマジェ。以前私のギルドで冒険者登録を行った少年です。彼であれば、私たちの期待に沿う働きをしてくれるかもしれません」


資料に書かれた名前を指差す。


「部屋は四階か、まだ朝食の用意はできていない。であれば、部屋にいるかもしれんな」


そう言ってダドラーはずんずんと歩みを進めた。それについていくように、私も足を踏み出した。


─この宿は朝食まで用意してくれるのか…。



部屋の前に到着したダドラーは、休む間もなくトントンと扉を叩いた。


「朝早くに失礼する、主人のダドラーだ。マジェ殿に話がある」


トタトタとした音が扉の前まで近づいてきた後に、がちゃりと開いた。

中から出てきたのは、まだあどけなさが残る少年。淡い青の髪を揺らして、私たちを見上げる。

そう、私が宿屋にやってきた際に廊下で彼を見かけたのだ。


「ダドラーさんに…それにマリさん?なぜこんなところに」


予想よりも一回り幼かったのか、ダドラーは大きな目をさらに丸く見開いて私を見つめた。驚くのも無理はない、しかし彼は軍神の加護を受けた超一流の冒険者。筋力測定ではSランクという人外めいた記録を叩き出した。今回の依頼には最適であろう。


「マジェくん、君にしかできない特別な依頼があるのです」


こちらになります、そう言いながら骸人形の討伐依頼書を彼に提示した。マジェはその紙を受け取ると、ぽわっと口を開けてこう言った。


「骸人形…!?本当ですか、この辺りいるというのは…!」


「そうですよね、ダドラー様」 


「あ、ああ。確かにこの目で見た。見間違いではない。一時は証拠も掴んだ。しかし君はまだ子供ではないか、危険な目に遭わせるわけにわいかん」


安心してください、そう続ける


「彼は歴としたAランク冒険者です。筋力だけで見るならばSランク相当は間違いありません」


いい仕事だ過去の私。普通のギルド嬢であれば、こんな隠れた逸材は見逃していただろう。


「マリ嬢の見立てを疑うわけではないが…。どうにも信じがたいことが身の回りで起きすぎているな…」


ダドラーは首を傾げた。それと同時に顎髭が横に逸れ、ぶらんと垂れ下がった。


「ダドラーさん、僕なら全く問題ありません。ドラゴンだって狩ったことがあるんですから。この依頼、引き受けさせてもらいます!」


頼もしい返事と共にニカッと笑うと、マジェは依頼書を受け取った。


「助かります、マジェ様。討伐報告はギルドまでお願い致します」


未だ混乱しているダドラーの横で契約は成立した。


「と、取り敢えず目撃した場所まで案内しよう。そこまで離れていないから、ついてきたまえ」


本当にあんな少年が…とぶつぶつ独り言を発するダドラーを先頭に、マジェと歩みを共にした。

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