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30 ドレス お茶会 ロリコン

ヴィヴィアン領に別れを告げて、イライジャさんの荷馬車に揺られること数日。

今回はパロミデス領はパスするそうで、私たちが向かっているのは、北部最大の都市、エレイン。


「エレインってのは、一攫千金を夢見る商人憧れの大都市だ。夜通し煌々と明るくて、女も酒も商品も、みんな上等だ。ハハッ」


よっぽど楽しみなのか、いつになく饒舌なイライジャさん。

この時の私は、彼の良からぬ企みなどつゆとも知らなかった。まさか、あ~んなことになるなんてねぇ…


◆◆◆


エレインの一つ手前の街に、買い物があるからとイライジャさんは荷馬車を進めた。

さすが大都市近郊とあって、この街もなかなかに華やいでいる。道行く人の纏う服の質が違う。上質だし、色も形もお洒落を意識しているね。


贔屓(ひいき)の店があってな…」

…おいまさか。贔屓の店って綺麗なオバチャンが出てくる店ですか?こんな昼間っから?!


「いい腕の金物屋がいる」


「金物屋さん?」


薬缶か鍋でも買うんですかね…?

首を傾げる私に構わず、街はずれの工房?らしき大きな建物の前に馬車をつけると、イライジャさんは何故か私に降りてこいと言う。はて?


「おーい、ちょいと見繕っちゃあくれないか!」


え?なんで私を前に押し出すの??


工房の奥から腰の曲がったお婆さんがひょこひょこと出てきて、イライジャさんと私を見比べた。


「あんらぁ、こりゃあめんこい子さぁねぇ」

歯の抜けたシワシワの唇が歪む。


気の抜けたらような声だが、皺に埋もれた小さな目はギラギラしていて、なんだか服の中まで見られているような心地がする。私は思わず両手で自分を抱きしめた。

さっ寒いぃ!


「いい鳥籠があるのよぉ」


「鳥籠?!」


ちょっと待ってこの店本当にタダの金物屋さん?!

狼狽する私をほっぽって、お婆さんは工房の中を歩いて、「ほれ、これなど」と指し示す。人間が一人入れそうな鳥籠を。


「?!」


「うーむ。ちょいと地味じゃないかね?」


イライジャさん!何アンタもフツーに答えてるんだよっ!


「籠の装飾が少ない方が商品映えがするのよぉ。ほれ、覆い布をこの…サテンに大振りのフリルがついたものにしますとな、」


「なるほど…これなら華がある!」


「そうでひょ、そうでひょ~」


何が、『そうでひょ~』だ…!私、絶対入んないから…


「サイラス君、ちょっと中に入って座って見てくれ」


……おい。


「あ、雰囲気を見たいからちょっと髪をおろしてくれないかな?」


半ばヤケクソで髪を束ねていた麻紐を解く。

子供の髪って鬘の材料需要があるから売れる。そんなわけで、私の髪は背の半ばまでくらいはあるのだ。……見世物にするために伸ばしたんじゃないのに。


「う~む!いいっ!よし!これに決めたよ」


「毎度あり~」


え?私まさか売られるの??


◆◆◆


イライジャさんの釈明によると。


エレインの上等なカモと商談したくば、ど派手な目玉商品が必要で、今彼の地で大人気の見目のいい奴隷、それも子供の奴隷を連れて行けば間違いないという。


「大丈夫。サイラス君は売らないよ。あくまでも、目玉商品だと言ってカモのサロンに入るためさ。求められても売らないから、安心してよ」

入場チケットみたいなものだよ、と軽~い調子で言うイライジャさん。


目がキラキラしているよ、このオッサン。思い出したのは、数日前に言われたあのセリフ。


「エレインってのは、一攫千金を夢見る商人憧れの大都市だ。夜通し煌々と明るくて、女も酒も商品も、みんな上等だ。ハハッ」


お荷物の私を行商に誘ったのはこのためかいっ!


◆◆◆


大きな鳥籠を積んで、私たちはエレインに到着した。

街に入るとイライジャさんはいそいそといかがわしい臭いのする通りへ馬車を進め、ド派手な建物の前で停まった。


「いいかい?一生に一度見れるかどうかの煌びやかな世界に入れるんだ。気合い入れて支度してくれよ~!」


やっぱそういう店か、ここ。

私はじっとりとイライジャさんを睨み上げた。売らないでね?マジで。


イライジャさんから支度金を受け取ったお店のおねーさんは、パパッと私の服を剥ぎ取ると、店の奥の浴場に放り込んだ。

うわぁ…初めてのバスタブだぁ~、贅沢ぅ~

……はあ。テンション下がるわ~。


当然商品を風呂で寛がせるワケがない。

待ち構えていたオバサンたちに頭からガシガシゴシゴシ洗われて、流れ作業的にまた別のおねーさんによって身体中に香油を塗りたくられ…


「ぎゅふうっ!」


今、私の頬にはおねーさんの拳骨がめりこんでいます。顔の色つやを良くするんだと。ゴリゴリいってるけど、コレ、マッサージ。めっちゃ痛いぃー!!


それも終わったら、息つく間もなく立たされて、ヒラヒラフリフリの下着に続き、見たこともないような豪奢なドレスを着せられた。うわ~お…。


「お…おおっ!化けるものだねぇ…」

出来上がった私を見て、目を見開くイライジャさん。


今の私は、髪をツインテールに結い、オフショルダーのドレスは目の覚めるようなビビッドイエロー。所々に縫いつけられた黒のレースやフリルが、馬鹿に明るい色のドレスを引き締める。総評すると、子供用なのに無駄に色気のあるドレスだ。デコルテのラインがかなり際どい…。丈はくるぶし丈。足が見えるようにってか?


無駄にやらしいドレスだけど、いざという時走って逃げられると考えれば、ね。足だって、男として生活してるから普段から丸出しだし、気にはならない。


……そう、思うことにしよう。


ダライアスのお嬢様のように裾を引きずるドレスだと走りづらいもんね。


……できるだけ、プラスに考えよう。


あ~…コルセットが苦しー。


あ?ああ、ハイハイ。鳥籠に入るのね。わかったよっ!


ぶすくれた私を入れた鳥籠の前で、イライジャさんもいそいそと一張羅にお着替えして……ハイ、準備完了。


「ささ!気合い入れて行くよ~」


今回潜り込むのは、ロリエッタ侯爵のサロン。

ロリエッタ侯爵は子供好きのオジサマらしい。今回は、午後のお茶会に商品たる私を引っさげて乗りこむという。


「サイラス君は、商談が終わるまで鳥籠で座ってて。大丈夫、日中のお茶会だし、危ないことなんていっっさいないから!」


ほんとかよ…。


「質問。トイレに行きたくなったら?」


「我慢して!」


……マジかよ。


◆◆◆


「……で、…でございまして…」

カーテンの向こうで、イライジャさんのセールストークが炸裂している。


「ほほっ、それはまた珍しい。実に興味深い」

相手の反応も良さそう。


ねえ…私、要らなくない?


………。


………。


寒いよーっ!


現在位置、サロン外の廊下。

暖炉があって暖かなサロンと違って、廊下は凍るように寒いのっ!ティナが心配そうに「大丈夫ぅ~?」と尋ねてくるけど…震えが止まらないよぉ!だってドレスがオフショルダーだし!あと、例の無駄に立派な戦乙女の絵画がこっちを睨んでるのも寒さの一因じゃないかな!なんつーか……戦乙女ハーレム。周りに祈りを捧げるボーイズ侍らせちゃう発想がサムい。いや斬新だよ?一点モノでこーゆーのがステータスなんでしょきっと。わかっちゃいるけど!ヤバい、歯の根が合わなくなってきた。イライジャさん、早くっ!


「そうそう、実は侯爵様にご覧にいれたい商品があったのでした」

シャーッとカーテンが開く。

そして鳥籠に掛けられていたフリルのカバーが取り除けられた。


フカフカのソファに座る派手な服のオジサマ…髪型はえっと、ハイドンをグレードアップさせた感じ。下っ腹の出た貫禄たっぷりのオジサマだ。そして両脇にはおめかしした五~十歳くらいのタイプの違う女の子たち。

あー……なるほど。

絵に描いたようなロリコンだわ。そんなオジサマがジイ~ッと私を上から下までなめ回すように凝視している。

え?笑えって?


………。


………。


………。


……ニコッ♡


「おおっ!これはっ…!!」


ロリエッタ侯爵の目の色が変わった。


途端に身を乗り出し、


「なんと愛らしい!ほうら、もう一回笑ってごらん?」

などと抜かした。


気持ち悪っ!


「おお…逸品!逸品じゃあ…!!」


くねくねするなぁ!!サービス終了だ、終了!アンタのモノになる気はないっ!勘違いしないで!愛想笑いだっ!!


「空色の瞳に雪白の肌…色気にギャップ萌え……ああ、素晴らしい!!」

グヘヘといやらしく笑うロリコ…ロリエッタ侯爵。


肌が白いのは長らくさっむい廊下にスタンバってたから血の気が引いてこうなんだ!それに!言っとくけど俺は男だからなー!!


「そうだ!ちょっと出ておいで。わしとお話をしよう?ほれ、甘~いお菓子もあるぞ~」

お菓子の包みを掲げて、私をホイホイしようとするロリコンおじさま。


「………。」


日本では耳にタコができるほど言われる。お菓子をくれる知らない人にはついて行っちゃダメ!イカノオスシ、だっ!


「ふふふ。この子と飲むお茶はさぞ美味であろ…そうじゃ!わしの隣に座ってくれたら、おまえを今宵の奴隷オークションに連れていってやるぞ!」

ポンと手を打ってロリエッタ侯爵が、イライジャさんを見た。


そんなの断っちゃえよ!イライジャさん!!


「オークションには世にも美しいエルフの女人も数多く出品されるとな。見るだけでも夢のよう…」


「…ッ、マリーちゃん、出てきて!!」


おおいっ!!


私の中で黒タイツの半裸芸人が怒鳴ってる。ちくしょー。誰がマリーちゃんだっ!

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