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27  新たな出会い【後編】

お待たせしました。やっとヒーロー役登場です。

謎の幼女が出ました。誰……??


目を瞬く私を、幼女はキラキラした目で見つめている。

なんとなくだけど、この子、人間じゃないと思う。だって…


「目の色、お揃い!髪の色もぉ~」

とか言いながら、幼女の瞳と髪の色が私そっくりに変わったから。魔物……なのか?でも……


「ねえねえ!お花!植える!」


呆然とする私の服をぐいぐい引っ張って、早くやろうと強請られた。言われるがままに、土の中央に植え穴を作り、腐り花を釣るための小枝を取ってくると…


「はいぃ?!」


幼女が直接腐り花の周りの土を掘っていました。

いや!それチューリップとかじゃないからね?!


「危ないよ!」

咄嗟に両脇を抱えて幼女を腐り花から引き離す。あっぶなー…


「大丈夫、大丈夫」


なのに幼女はそんなことを言って、泥んこの手をパタパタと振った。


「私は触っても平気。でも貴女はダメだよぉ?」


「え?え?」


どういうこと??


突っ立っている私の腕からするんと抜け出た幼女は、再び腐り花の前に座りこむと、うきうきとした様子で土を掘り、土ごと腐り花を取ってきた。不思議なことに、腐り花は周りの土を掘り返されてもまったく蔓を出さなかった。

え?ぱっと見わからないだけで、コイツ枯れてるの??


「ちゃんと生きてるよぉ~」


「え…」


私、さっきから「え」しか言ってないやん。


「早く植えよう?ね?」


「う、うん」


幼女から急かされて、植木鉢の土を凹ませた植え穴に、「ここに置いて」と指示する。


「置いたよー」


「置いたら土を寄せて…」


……危険物触ってるのに、フツーの花の苗を植えつけている気分。なにこのほのぼのした空気…


「たっぷり水をあげておしまいだよ」


「は~い」


水が漏れる兜に並々と近くの湖から水を汲んできて、バシャッと(手荒ッ)腐り花にぶっかける幼女。


「できたぁ~」

キャッキャとはしゃいでいる。

喜んでくれて何よりデス…おや、手が泥んこのままだね。

私は水やりに使った兜に再び水を汲んでくると、


「手、泥んこだから洗おう?」

嬉しそうに寄ってきた幼女の両手を洗ってやった。

濡れたままでは悴んでしまうから、正直超キレイとは言い難いけど、持っていた襤褸布で水気を拭く。すると…


「ねえ~、」


「ん?」


「お名前教えてぇ~?」

幼女に名前を聞かれた。


「サイラス・ウィリス」

フツーに名前を答えたんだけど…


「男の名前…」

途端に不快感をあらわにする幼女。

あ、湖絡みだから男嫌いか、この子も。けどなー…


私、女の名前持ってないし。


持ってないものは出せない。


「えっと…君の名前は?」

私は誤魔化すように笑って、幼女に尋ね返した。

うん。軽~い気持ちで聞いたんだ。


「………。」

よりむっつりと黙りこむ幼女。


え?!もしかしてお名前聞くのはタブーだった?

え?ちょ…ごめん!無理に言わないでいいから!

うわぁ!泣かないでっ!


焦りまくって、ウルウルする幼女の背をナデナデする。

ごめん、おねーちゃんが悪かった!


「あのね、あのね…」


「うん、なあに?」

最高に優しい笑顔で幼女に笑いかけると、


「じゃあね…お名前のつけあっこ、しよ?」


………。


………はい?


また、よくわからない提案をされた。名前のつけあっこ??


「名前をつけあっこするとね、ずーっと一緒にいられるの!」

ニコ~、と嬉しさいっぱいに笑う幼女。


そして私の了解も取らずに「え~とねぇ~、」と何やら考え始める。そして数秒考えたあと、パッと体ごとこちらを向いて、


「決めた!貴女の名前!サアラ!サアラ・ウィリス!!」


めっちゃ嬉しそうにドヤ顔を決める幼女。

あはは。サイラスだから、サアラか。安易なネーミングだなぁ…


「ね?私にお名前、頂戴?」


今度は幼女に頼まれた。すっごい期待してる…。これは…答えなきゃ泣かれるヤツだわ。ううむ…名前、名前ねぇ…


……。


……。


じぃ~~~♡


…うん。誰かに名前つけるなんて初めてだからね~。

前世、独身だったし、ペットもいなかったし。


ふむ…。睡蓮だからスイ?レン?流石に安易過ぎるか。

睡蓮は英語でウォーターリリー。ああ、前世にすんごいキツい性格の百合って女いたなぁ。百合は却下だ。う~ん…


あ、そうだ。


「ティナ、はどうかな?」


青い睡蓮、但し熱帯睡蓮だけど、小ぶりの花がたくさん咲く品種がそんな名前だった。湖絡みだし、この子の元の瞳の色がそんな感じの色だし。


「ティナ!!私の名前!!」


ああよかった。気に入った……て、あれ…?なん、か…目が、霞…む…これは……


………。


………魔力切れ。


◆◆◆


次に目を開けたら、まだ空は明るかった。


「あ」


どうやら気絶していたのはほんの数刻だったようだ。

ああ、危なかった。魔力切れで倒れたまま夜になっていたら、生きて村に帰れないよマジで。


ギュゴ~~


ああ~、お腹減った~。

魔力切れのせいだろうか。


フラフラと体を起こそうとして、ふと視界にうつったモノに私の目は釘付けになった。頭上に鈴なりになった小さな木の実。食べられる実で、村ではこれを水に一晩漬けて、ふやかしてから煮込んで食べる。爽やかな甘みが美味しい、森の貴重な甘味だ。


……ごはんっ!甘味!


さっそく木に登って、房ごと実を収穫して…


………あ。


どーやって食べる気よ、このかったい実を。


人間、空腹になると阿呆で短絡的になるらしい。


そして、人間、空腹になると意地にもなる。

なんとしてでも実を食べようとした私は、兜を鍋に実を煎ってみることにした。ティナが面白がって、たき火用の小枝を集めるのを手伝ってくれた。火を起こして、おっと。腐り花の鉢を火から遠ざけて、火の上に木の実を入れた兜を置く。爆ぜるかもしれないから、兜をもう一個蓋代わりに被せて、あとは待つだけ!


………。


………。


五分後…。


バン!バチッ!バキューン!ダダダダ!!!


「?!」


「キャーッ」


ちょ…爆ぜてる爆ぜてるー!!


油もひかずに直火にかけたせいか、兜の中から凄まじい音がする。わわわっ!蓋がずり落ちるー!!


ババババッ!バキッ!パン!パーン!


音に驚いたティナはどこかへ逃げ去り、私は馬鹿みたいに焚き火の周りで右往左往している。驚いた鳥たちが鋭く鳴きながら飛び立っていった。


そして…


バシャッ!


シュウゥ…


「?お…終わった??」

恐る恐る焚き火の方を見ると、


「火遊び…?違うか。なんで兜なんか焼いている?」


見知らぬ少年が呆れた視線を消えた焚き火と私に寄越していた。


◆◆◆


「俺はメドラウドのアルだ。おまえは誰だ?」


見たところリチャードと同じくらいかな?漆黒の艶やかな髪の、すらりとした体躯の少年――アルが私に問うた。


「俺はサイラス。サイラス・ウィリス」


名乗ってから、まじまじと目の前に立つ少年を観察する。

白い肌に瞳の色は緑。切れ長の目は涼しげで、あどけなさはあるもののくっきりした目鼻立ち。将来イケメン間違いナシだね。服装は、狩人のそれを少しスタイリッシュにした感じ。弓ではなく、ベルトに剣を佩いているから、狩人とも言いきれないけど。


「妙なヤツだ。なんで女のくせに男の名前……ハッ!偽名か?!」


「…違うよ?」

だってそういう名前だもん。


「あ?おまえの国では女が男の名前を名乗るのか?」

アルが眉間に皺を寄せて首を傾げた。なんだかその顔が小馬鹿にしているように見えて、ムッとした私は一気にまくし立てた。


「違うよッ!俺が!男なんだよっ!悪かったなぁ、貧相な体つきでよ!」


しかも今は空腹でお腹もぺちゃんこなのだ。あっ!さっきの実!

急いで消えたたき火の横に転がっている兜の蓋を取ると…


「あ!」


「ん?」


クリーム色のほわほわしたモノが溢れて、地面を転がった。これは…!


「ポップコーン?!」


……いや、味は甘さ控え目のポン菓子に似ている。つまり…


「美味しい!甘~い!!」


飢えていた私は、夢中でポン菓子擬きを頬張った。ああ…幸せ♡


「ん。うまいな、コレ」

なんでか横で一緒にポン菓子擬きを囓るアル。

うんうんと頷いて、私はポリポリと食べ続ける。あ、そうだ。ティナにも取っておいてあげよう。思いついて、幾粒かを薬草摘みで使う小袋に入れ、潰さないように懐にしまいこんだ。


「なあ、なんで男のフリなんかしてるんだよ?」


「んー?秘密ー」


そんなこと今はどうでもいい。

空腹の後に甘味を与えられて阿呆になっていた私は、うっかり口を滑らせたのにも気づかなかった。


「秘密…か」


「そうそう!」


ん~!ポン菓子美味し~!

ニコニコして口いっぱいにポン菓子擬きを頬張る私を、アルは目を細め、

「ほんっと、美味そうに食べるよな、おまえ」

よしよしと頭を撫でてきた。

アンタもか…。まあいい。今の私はご機嫌なのだ。許してやろう。


「けど、ほどほどでな。ほら、もう夕方だ。」

何気なく言われて、オレンジ色の空にハッとする。

やべっ!長居しすぎた!!というか私、朝森に入ったきりだわ。さすがに父さんたちが心配…してるよね!絶対!

慌てて立ち上がると、

「ごめん!私帰るから!」

それだけアルに叫ぶと、一目散に村へと駆け戻った。


◆◆◆


村へ戻ると、なんか大変なことになっていた。村へ一歩踏み入れた途端、血相を変えたヴィクターに捕まった私。


「どこへ行っていたんですか!!森中探してもどこにもいない!どれだけ心配したと!!」


「…え?」


「え?じゃありませんっ!!」


鬼のような形相の大人達に囲まれ、こってり絞られました。

……なんか私、丸一日行方不明になっていたらしい。 


「いや…魔力切れでちょっと昼寝していただけ…だよ?」

言ってみてふと思う。


ちょっと昼寝、じゃなくてまさか…私丸一日寝てたの?!


「魔力切れ?森の中で?!」

……しまった。余計なことを。


「サ~イ~ラ~ス~」

魔王ヴィクター、再降臨。

言うんじゃなかった…。


チラッと気配を感じて目線だけで横を見ると、柱の陰からティナがぴょこんと顔を出していた。

「(あのね、私がちゃんとサアラを守ってたから大丈夫だよ?)」

潜めた声が直接頭に響いてきた。

…うん、この子にもいろいろ聞くことがありそう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 不思議な幼女との、 不思議な植物を通じての、 交流の仕方が、ここが異世界なんだと、 改めて感じさせてくれる、 世界観の作りこみのこだわりが、 良くわかりますね。 [一言] なるほど、サアラ…
2020/08/06 12:40 退会済み
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