プロローグ
お久しぶりです!二作目投稿開始いたします。
よろしくお願いします。
物心ついたときには、私は既に孤児だった。実の親の記憶は輪郭もろくにわからないほどにおぼろげだ。きっとその後の出来事があまりにも衝撃的で、凄惨なものだったからだろう。
ある日突然、私はすべてを失った。
なんの前触れもなく、住んでいた村が焼かれた。鎧を着たり着なかったりの薄汚い奴らが武器を振り回して、逃げ惑う村人たちを屠り、挙げ句火を放った。
気がついたら、私は死体だらけの焼け野原に一人、佇んでいた。文字通り、たった一人。私以外に誰も生きてはいなかった。大人を――助けてくれる誰かを必死で探しまわって誰も見つからなかったから、間違いない。立ちこめる死臭の中、私は力尽きて倒れた。
目が覚めたとき、私の中に『私』がいた。いわゆる前世の記憶というヤツ。『私』は『日本』という文明が発達した安全な国で何不自由なく暮らしていて、不慮の事故で死んだ。ごく普通の、ごくごく平凡な人生。
だったらなに?
それが『私』への感想。
だって……そんな記憶に目覚めたからといって、何が変わるんだ?今の私は、無力な幼児で死体だらけの焼け野原にたった一人。前世の記憶、なにそれ食べれるの?むしろ、今の絶望的な状況が無駄によくわかって、希望の光が秒で消えた。
あと何日で死ぬんだろ…。
諦念を胸に、空を見た。どんよりと灰色に曇った空を。
そうして、どれくらいたっただろう。
声が聞こえたんだ。そして、見つけた人影――背の高い男。そいつは生き残りを探しているようだった。死体をひっくり返しては生死を確認している。
「茶か、金髪…。青か…まあ、灰色の瞳なら…息子と言い張れるか。ああ、コレもダメか…」
死体を検分してため息を吐く男。
何ボケッとしてるの!チャンスだよ!
今までだんまりを決めこんでいた『私』が私を揺すぶった。
アイツ、息子の身代わり探してるのよ!あなた!茶髪に青目じゃない!
正直、死にかけて朦朧としてて、立てる気もしなかったんだけどね。でも、生きるには今頑張るしかない、死ぬ気になるしかないんだ。
私はない力を振り絞って、死体を検める男に這いずっていった。そして、ありったけの力を込めて男のズボンを掴んだ。
セールストークはつかみが大事よ!大きく出なさい!
重い頭をもたげ、無理やり唇の端を持ち上げて、私はそいつに笑いかけた。
「俺にしろよ。俺ならアンタに…特大の幸せと金持ちの老後をやるからよ…!」
………何言ってんのさ、私。プロポーズか。
ともあれ、それが私――俺と父さん、アイザック・ウィリスとの出会いだった。
よかったら一作目(完結済)もよろしくお願いします↓↓
『メモリー~元天才ピアニストのポンコツ悪役令嬢ですが、全力で破滅を回避します!~』
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