50:綺麗なお姉さんは好きですがね
ざっくりと開いたドレスの合間から覗く豊満な胸元。
反して、すらりとくびれた腰。
緩く波打った金の長髪に、垂れがちな瞳。
白い肌に黒いドレスをまとう姿は、妙に妖艶に見えてサフィストの鼓動は加速しっぱなしだ。
そのふっくらとした唇に触れたくて仕方がない。
傍らのアルストにぶっ飛ばされる覚悟さえあれば、本当に触れてしまいそうだった。
「アナタ、すごいのね。女神を呼び起こしただけではなくて、
シエンのカラクリまで見抜いちゃって……ふふ、神官にしておくには惜しいんじゃない?」
ゆったりと近付いて来る女。
しかし、それを見つめるアルストの目は、もののずばりドライなものだった。
「――と言うことは、あなたも彼のお仲間ということでしょうか」
「ええ、そうよ。私はテトラ。シエンと同じく魔王様の配下――四天王の一人ってわけ」
ゆったりと。のんびりと。しっとりと。
艶めいた唇から漏れる吐息と共に流れてくる声色に、サフィストはドキドキしていた。
一方のアルストは平然としたものだ。お前に心はないのかとサフィストが思うほどに。
「けど、アタシは女神なんてどうだっていいの。気になっているのは、アナタよ」
ゆったりと距離を詰めたテトラは、
アルストの片腕に触れると、しなだれかかるように腕を絡めた。
腕に触れる柔らかな膨らみの感触に、アルストの表情が僅かばかり変化した。
「アナタ、魅了の耐性がすごいみたいじゃない?」
「はあ、恐れ入ります」
「どうして、そんなに効かないの? 何か秘訣でもあって?」
するり。テトラの長い指先が、アルストの服を這う。
首筋から輪郭をなぞり、顎先へと辿り着いた指先がその肌をなぞった。
「信仰が厚いなら、なおさら女神にコロッといっちゃうんじゃない?」
「それは信仰心の解釈によって意味が変わるでしょうね」
これほど露骨に探られては、隠す気も失せるというものだ。
正々堂々、正面切って襲い掛かってくるタイプらしい。
しかも、これで二人。魔王軍には、ひょっとして奇襲という概念はないのだろうか。
アルストは考えながら、すぐ傍らに押し付けられている女の胸元を見た。
触れたらきっと柔らかいのだろうと思わせてくるが、アルストの手はぴくりともしない。
「あら、そうなの? それがアナタの秘訣ってこと?」
するり。再びテトラの手が動いた。
今度はアルストの喉元をなぞって、胸元を通り、少しずつ下へと向かう。
その光景に慌てたのはサフィストの方だった。
このままではアルストのアルストがアルストしてしまう!と、勝手に焦っている。
だが、とうのアルスト本人は平然としたままだった。
「――ふ、まさか」
アルストは口の端を薄らと持ち上げた。
そうすれば、笑うというには凶悪な表情になる。
「これが私の信仰心です」
アルストはそう言い放つなり、天に腕を掲げてパチンッと指を弾いた。
その瞬間、空中に大きな光の玉が発生し、周囲をまばゆい光が照らし出した。
慌てたテトラはむしろアルストに抱きついたが、
サフィストの方は、あまりのまぶしさに目も開けられなくなってしまった。




