49:えっちなおねえさんは好きですかってやつだよ!
アルストがテントから出ると、
やはり護衛についている騎士が数名ほど立っていた。
「アルスト殿、どちらへ」
「少し散歩へ。女神様をお願いいたします」
「――はっ!」
しかし、護衛の騎士達の中にサフィストの姿はない。
さすがにつきっきりというわけにはいかないだろうから、どこかで休んでいるに違いない。
テントから離れに離れたアルストは、
まばらに木々が立っている場所へと辿り着いた。
「あ゛ーーーーーー」
(最ッ悪だ)
髪をガシガシと掻き乱したアルストは、苛立ちのままに深い溜め息をついた。
テントから離れた位置まで、よくぞポーカーフェイスを保ったものだと、
我がことながら褒めてやりたい気分でいっぱいになっていた。
らしくない。実に自分らしくない物言いをしてしまった。
ランプも何も持ってこなかったが、野営地の方から届く明かりで周囲は微かに明るい。
騎士達の方からアルストの姿は見えていないだろうが。
アルストの方からは、騎士達の様子がよく見えている。
(……無防備だ)
敵地に近い野営では狙ってくれと言っているようなものだ――アルストは眉を寄せた。
だって、そうだろう。
この暗がりに潜まれてしまったら。
奇襲をかけられてしまったら。
騎士達はいったいどのように対処するつもりなのか。
(女神がいれば、それで大丈夫だと思っているのか)
アルストは深々と息を吐いて、傍らの木に寄りかかった。
遠路はるばるこんなところまで来てしまった。
女神から直々に指名を受けたとはいえ、全くもって自分の仕事ではない――と。
アルストは、未だに心底からそう思っていた。
そんな自分が巻き込まれて、こんな僻地までやってきたというのに。
現場にいる騎士達が女神頼りの策しか持っていないことが腹立たしかった。
「――アルスト!」
地面からはみ出した太い木の根に腰掛けていたアルストのもとへ駆け寄ってきたのは、サフィストだった。
「どうしたんだよ。気分でも悪いのか?」
「そう見えるか?」
「いや……機嫌は悪そうだけど」
言って、サフィストは女神のいるテントの方向を振り返った。
野営地の中央に位置するテントは、騎士たちに囲まれて守られている。
特に騒がしくないということは、女神は大人しくしているのだろう――と。
少なくとも、アルストはそう理解していた。
「お前もあんまりふらふらするなよ。このあたりは、魔物も魔族も出るぞ」
「わかっている」
「わかっててブラついてるなら、なおさらダメだろ」
サフィストは呆れて肩をすくめた。
――と、その時だ。
「本当にね。なんて無防備だこと」
アルストが腰掛けている木の裏から、一人の女が姿を見せた。
慌てたサフィストが剣に手をかけ、アルストが静かに立ち上がる。
そこにいたのは、荒野には不釣合いな美しい女だった。
その豊満な胸元と妖艶な微笑を見た瞬間、サフィストの胸に衝撃が走る。
心臓が飛び出したかと思うほど、大きく高鳴った。
「う、うぅ……」
「サフィスト」
胸を押さえて後ずさったサフィストの様子に、
アルストは軽く眉間に皺を寄せた。
「エ、エロい……」
「一瞬でも心配して損しました」
アルストは一瞬にして真顔に戻った。
そして、くすくすと笑っている女を見る。
(――魔族か)
じんわりと、背にいやな汗が流れた。




