27:お前ともあろう者がどうしたよ?
「え、なに、なになになになに? え、待ってくれ。怖いんだけど」
早朝。
けたたましいノック音に驚いて飛び起きたサフィストは、
開いたドアの前で人を射殺しそうな目をしたアルストに遭遇した。
必死になって自分の粗相を思い返すが、直近では思いつかない。
年単位で思い返せば、あれやこれやと思い当たる節はある。
人前でベルトを引き抜いたことだろうか。
女の子たちの輪に放り込んだ件だろうか。
教会に女の子の名前でアルスト宛てに贈り物をしたことだろうか。
面白半分で衣を引っ張った結果、池に落としてしまったアレだろうか。
あった。ありすぎた。
どうしようか。サフィストの背に汗が滲む。
寝起きの頭では、まともな言い訳が出てこなかった。
「サフィスト」
「はいッ!?」
「ソファを貸してくれ」
「ようこそッ!」
まさかの要望に、サフィストは突っ込みも忘れて、すぐさま室内へ駆け戻った。
そして、ソファ上を占拠していた服などを床へと放り落とした。
直後、掻き集めて籠に放り込む。
十秒程度で支度が整えば、アルストはすぐにソファへと寝転がった。
「え、なんで……」
重要な話でもあるのかと思ったサフィストは拍子抜けだ。
だが、腕で目元を隠したアルストには起き上がる気配も様子もない。
「悪いが、眠たいんだ」
「え? 部屋があるだろ」
「使えない」
「え?」
「いいから。寝かせてくれ。疲れた」
疲れ──てはいる、だろう。
アルストの話によれば、夕方から儀式が始まり宴を経て真夜中に移送陣を使用している。
そのあとも、女神を寝所へ送り届けてから、サフィストと話をしてから眠りについた。
だが、サフィストの頭には「え?」しか存在しない。
既に寝息を立て始めた彼を眺めて、サフィストはどうしたものかと肩をすくめた。
しかし、行動を開始するには時間帯が早すぎる。
窓辺を見遣れば、まだ鳥のさえずりもまばらな早朝だと知れた。
サフィストは結局、ソファには近寄らずに寝台へと戻った。
そして、再び寝──
「──いや、寝られるかって」
五分もしないうちに起き上がったサフィストは、改めてソファで眠るアルストを見た。
確かに疲れているように見える。
疲れているのであれば眠れば良い。
それがわざわざ、どうしてソファを寝床に選ぶのか。
サフィストは首をかしげた。
疑問だ。不思議な点しかない。不可解だ。
寝台の上から立ち上がったサフィストは、そーっとソファを横切った。
「部屋が使えないって、どういう意味だ……」
何か不都合があったのなら、遠慮して言えないような男ではない。
不具合が発生したとしても、気兼ねしてしまうような男でもない。
そんな男が、この時間帯に自分の部屋を訪ねるはずがなかった。
だったらどうした。何だというのか。
サフィストは、ちょっとした好奇心をくすぐられた。




