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15:同性なら遠慮しなくてもいい気がした

「なるほどなるほどー。

 戦地直行便のはずが、ちょびっと寄り道するわけだ?」


 早朝の光が差し込む寝所。

 薄い天蓋の合間から柔らかく落ちる光を受けた金髪を揺らして、イルディアは微笑んだ。


 純白の衣から伸びた腕の、何としなやかなことか。

 ほっそりとしているというのに、それでいて柔らかい。

 

「僕としては構わないかなー。

 日取りが変わっちゃうだけの話でしょ? 細かいことは気にしないの」

「退いてください」

「なぁに?」

「退いてください」


 愛くるしく笑う顔を見上げるアルストは、あろうことか寝台に押し倒されていた。

 身体が沈み込む寝台のふかふかとした感触を背に、そして、ちょうど腹部に太腿の感触を感じていた。


 アルストにまたがった姿勢のまま、イルディアは首をかしげた。


「えー、重くないでしょ?」

「重くはありません。退いていただきたいだけです」

「昨日の女の子より重たくはないかなぁ」


 昨日。


 女の子。


 そのキーワードで、アルストは数秒だけ固まった。

 思い当たる人物など、一人しかいない。

 まさか吹聴されたのだろうか。これだから女は。


「君の無事と安全を祈るんだって。一途だねー。かわいいねー。

 でも、僕の加護の方が、祈りなんかよりずっと強いんだもんねー」


 当然だ──アルストは眉を寄せた。

 祈る先が女神なのだから、眼前の少年がいくら女神ではないと言ったところで矛先は同じ。


 アルストは、エンツァに少々同情した。

 彼女は熱心なタイプで、きっと心底から心配して祈りを捧げたのだろうと思えたからだ。

 それがこうして笑われているとなれば、さすがのアルストでも不憫さを覚えた。


「ええ、ええ。そうでしょうとも」

「でしょー?」

「ええ。ですから、退いてください」

「どうして?」

「退いていただきたいからです」


 さきほどから何度繰り返したやり取りだろうか。

 アルストは跳ね除けることもできないまま、これ以上の接触がないように手を持ち上げていた。


 だが、イルディアに遠慮などない。


 アルストの胸板に体を伏せるなり、頬杖をついた。



「僕は退きたくないなぁ」



 アルストは、眼前の女神──イルディアが、自分を少年だと言い放ってくれて良かったとしみじみ感じた。




「私、男性なら殴れる気がしてきました」


「えっ、暴力で解決!?」



 イルディアはぎょっとしたが、体は起こさなかった。

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