#20 エピローグ
夕方。
駅前の病院、その五階の廊下の一番奥の病室。
俺、灰田健太はその病室のドアを開ける。
「お兄ちゃん……それに……」
俺の後ろの囲碁将棋部の面々に視線を送り、佐代子は笑う。
「皆さん……来てくれたんですね」
「当たり前じゃない……私たち友達でしょ?」
川原の言葉に、佐代子は目をパチクリさせる。
「友達ですか……?」
「そう……いや?」
「……いいえ」
佐代子は首を振る。
「嬉しいです」
「そう、なら良かった」
ニコっと笑う川原。
「皆、イスもってきたよ」
金本がそう言って、部屋の隅にあったイスをベットの周りに並べる。
囲碁将棋部の面々はイスに座る。
その時、部屋の中央が光り輝く。光はやがて人の形を取る。現れたのは赤毛に碧眼、白い肌に、ヒラヒラした服装……ミオンだ。
「……え? ……え?」
佐代子は目をパチクリさせている。
そんな佐代子をよそに、ミオンは俺に話しかける。
「この子だね」
「あぁ……頼む」
俺はミオンを見て、言葉少なに答える。
ミオンは一歩前に出る。それを見て、囲碁将棋部の面々はミオンに道を開ける。
ミオンは右手を上げて力を使う。
すると佐代子の体が光に包まれる。
「……あ」
佐代子はその最中に眠ってしまった。
「佐代子……!?」
俺は佐代子に近寄ろうとしたが、ミオンが静止する。
「近寄らないで……」
「…………」
やがて佐代子の光はおさまり、ミオンは右手を下す。
ミオンは溜息をついて俺に話しかける。
「終わったよ」
俺は佐代子の様子を見る。
佐代子は安らかな顔で眠っていた。
気のせいか血色が良くなった気がする。
「病院で検査を受けると良いよ、完治しているから」
ミオンはそう言って微笑む。
俺は佐代子の寝顔を眺めていたが、ミオンに向き直る。
「……ありがとう……ありがとう!」
俺はミオンに頭を下げてお礼を言う。
ミオンは片手を振って答える。
「良いよ、礼なんて。礼ならもう貰ったからね」
「もう貰った?」
俺はミオンに尋ねる。
「ああ、これまで戦い。その全てが私の飢えを癒してくれたよ。それで十分、お礼になってる。今回の戦いは、灰田くんが何より収穫だったよ。灰田くんは勝ち目の無い状況が何度もあったのに、そのことごとくに反撃して勝利してきた。私の退屈は君が粉砕してくれた! こちらこそ、ありがとう。灰田くん!」
「その……一つ聞いても良いか?」
「なんだい?」
「これからお前はどうするんだ……? 俺たちは? 俺の心衣領域は?」
ミオンは鳩が豆鉄砲を食ったように固まると、笑いだす。
「はははは、一つじゃなくて三つじゃないか」
「あー……そういえば、そうだな」
ミオンは笑い終えると俺に答える。
「私はこの街を去るよ、またどこか別の街へ行く。君たち……というより君たちに関わるもの全て、学校、親、兄弟に至るまで記憶を弄らせてもらう。私と今回の戦いに関する記憶が残っていちゃまずいからね。君たちの心衣領域は……全て私が回収する」
「……そうか」
そう言うとミオンは宙に浮かぶ。
「今回は君のおかげで楽しかった。君の切なる願いを叶えられて私自身ほっとしているよ。これは私自身驚いていることだけどね」
ミオンはそう言って遠い目をする。
やがてミオンの体が光に包まれる。
「灰田くん、愉しい時をありがとう」
光は段々と強くなっていく。
「またね」
次の瞬間、光になってミオンは消えた。
「…………」
俺はミオンに言いたいことが……。
ミ……オ……
…………。
……誰だっけ?
いや……俺らは……。
「なにしてたんだっけ?」
川原がきょとんとしている。
「なにって……妹ちゃんのお見舞いでしょ? なに不思議がってるのよ?」
「そうだな……そう? だな?」
俺は不思議な思いで答える。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それから半年後。
俺、灰田健太は朝日を受けながら登校していた。
「あー……今日も冷えそうだ」
「お兄ちゃん、風邪なんて引かないでよ?」
背後には俺の妹、灰田佐代子が居る。
学生服にジャンパー、マフラー、帽子、手袋を着込んでいる。
「それにしても私、ちょっと着込み過ぎじゃない?」
「何を言うか! それくらいしなきゃお前の方が風邪引くっつの! 今までずっと入院してたんだ! 体がどれだけ弱っているか分からない! それに奇跡的に病気が良くなったからって安心するのは良くない! 健康には人一倍気を付けて生きるんだ!」
「わ、分かったから……そんなに怒鳴らないでよ」
佐代子は俺の剣幕から逃れるように体を後ろにそらす。
こいつは本当に分かっているのだろうか、と俺は心配する。
佐代子の病気が治った原因は謎だ。医者も完全にお手上げだった。病院でも奇跡だと言われて一時騒ぎになったくらいだ。
「分かったならよし!」
「もう病気じゃないのに、なんかお兄ちゃんが前よりもキツくなった気がするよ」
俺たちは通学路を進んでいく。やがて丘が見えてくる。
丘の上には、目的地の明和中学校がある。
俺と佐代子は二人、明和中学校に向かって歩き出す。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
その街は田舎だった。
都心からは数駅離れており、ベットタウンの趣が強い。
街は海岸に面しており、夏であれば海辺は都心から来た客で賑わっていただろう。
海岸に沿って走る鉄道は、時折、街に警鐘を鳴らす。
寒風吹き荒ぶ空の上。
眼下には、そんな街並みが広がっている。
そんな街並みを見下ろしながら、その女性は呟いた。
「今度も楽しめるかな?」
その女性は赤毛に碧眼、白い肌に、お姫様のようなヒラヒラした格好をしている。
コスプレかと見紛う格好だ。
だがその恰好よりも驚くべきは、その女性が空の上に浮いていることだった。
女性は笑う。
まるで全てを見通しているかのような透き通った碧い瞳には、中学校が映っていた。
突然、女性の姿がまぶしい光に包まれる。
光が収まった後……女性の姿はどこにも無かった。
終わりました。ここまでお読み下さり誠にありがとうございました。
拙い駄文かと思います。自分で気付いて無いだけで誤字脱字も沢山あると思います。
お付き合いくださり、本当にありがとうございました。
もしよろしけば、悪かった点など感想を頂ければ次回作で直したいと思います。
それではまたどこかでノシ
うわああああああああ!?(ドンガラガッシャーン!)
酷い! 処女作にしても酷過ぎる!
文章力が! 構成が! キャラ付けが! 設定が! タイトルとあらすじが! 諸々が!
次回作では、もう少し成長した姿を見せ……られたら良いな……(遠い目)




