表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰田くんと八人の切願  作者: 千咲
19/20

#19 灰田くんVS御堂くん2

 僕、御堂誠二は早熟な子供だった。

 周りの子供たちはバカに見えたし、大人たちと話す方が知識面で役に立つ情報が得られる分、まだマシだと思った。

 大人たちは皆、口を揃えてこう言う。


「君は利口だから、他の生徒を導いてあげないと」


 そんな僕だから、中学校で生徒会に入ったのは当然の流れだった。

 だが生徒会に入ってすぐに僕は絶望した。

 それは学校の生徒たちのバカさ加減にだ。

 赤点をとる生徒、学校の傍のコンビニで万引きする生徒、タバコを吸う生徒、果ては理科室でボヤ騒ぎ。

 生徒会のみんなは良くやっている。それでも救えないバカは居る。

 バカを導くのに俺は絶望していた。

 俺が生徒たちの心を操れたら、そうしたらもっと楽に導けるのに。

 そんなとき……。


「君たちの中の一人だけ、願いを叶える」


 ミオンさんが現れて、そう言った。

 僕はミオンが神様かどうかなんて、どうでもよかった。

 願いを叶えてくれる……その言葉が本当なら。

 僕の願い……それは他者の心を自身の思い通りに操ること。

 その為に、僕は行動する。

 これは僕の願い、そして同時にこれから僕が操る人の為でもある。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 俺、灰田健太は学校の廊下を走っていた。

 すぐ後ろに御堂が宙を飛んでついてくる。


「ははははは! どうしました、灰田くん? 逃げてばっかりじゃないですか」


 御堂が笑いながらそう言う。

 俺は左腕と脇腹から血を流しながら、必死に走る。


(作戦……て言うほどのものじゃないけど……いっちょやってみるか……)


 俺は三階の廊下の先、三年二組の教室に入る。

 教室に入ると、すぐに窓際まで移動する。そして入口の方を振り向く。

 御堂はすぐに入口の前に現れた。


「どうしたんですか? 諦めたんですか?」


 御堂は笑いながら、教室の中に入る。

 俺はハンマーを握る手に力を入れる。


「どうかな……?」


 俺は不敵に笑う。

 御堂はすぐにはかかってこない。何か考えていたようだったが、やがて肩を竦める。


「良いでしょう。まぁ、あなたの力が効かないことは証明済みです。どうするのか見せてもらいましょうか?」


 御堂は俺に真っ直ぐに飛んでくる。

 俺は『エアシュート』で御堂を狙い打つ。

 御堂は宙で軌道を変える。

 御堂の背後で俺の『エアシュート』の衝撃が壁を撃つ。


「はははは! これじゃ、さっきと同じですよ!」


 御堂が目前に迫る。

 俺は制服の下、背後のズボンに携えていたソレを引き抜く。


「――それは」


 俺は構える。御堂の至近距離で――枝野先輩の銃を。

 この銃は枝野先輩のものだ。

 銃には詳しくないから、型番などは分からないが……サブマシンガンだと言うことは分かる。マガジンの弾も枝野先輩の心衣領域で出来ているから、本来は半永久的に撃ち続けられるらしいが……今はマガジン一つ撃ち尽くしたらそれまでだ。

 俺は枝野先輩から、この銃を預かっていた。

 枝野先輩にはこの銃で御堂に一発かましてくれと言われていた……。


「喰らえ……!」


 俺はトリガーを引く。

 至近距離から発射された銃撃の雨が御堂を襲う。

 マガジン一つ分、全弾撃ち尽くした後は『ビック・ハンマー』で御堂を殴り飛ばした。御堂は教室の壁に激突した。


(いける……オーラによる防御があるって言っても、さすがに至近距離から発射された銃撃を完全に防ぎきる程じゃない……!)


 俺は壁にもたれかかる御堂を追撃するべく走った。

 マガジンを使い切った銃を投げ捨てて、ハンマーを構える。


(ここだ……畳みかける!)


 御堂は壁にもたれかかりながら……笑った。

 次の瞬間、俺は吹き飛ばされていた。


(なっ……!?)


 俺は御堂とは反対側の壁に激突していた。

 痛む背中をよそに俺は御堂の方を見る。

 すると御堂の手に、一本の光る槍のようなものがあった。その先端は二本に分かれ、うねうねと蠢いている。


(あれにやられたのか……)


 御堂の腹部は赤く出血していた。一発だが枝野先輩の銃弾が御堂の防御を突き破っていたのだ。

 御堂は片手で腹部を抑えながら立ち上がる。


「……すばらしい……それは枝野先輩の銃ですね」


 御堂は俺が捨てた枝野先輩の銃を見つめる。


「確かに……他人の心衣領域を使ってはいけないというルールはありませんし……これは一本取られましたね……枝野先輩には後できっちりお礼をしておかないと……」


 御堂は愉しそうに笑う。

 すると御堂のもつ槍、その末端が蠢き、急激に伸びた。伸びた末端はテープのような形状になると、御堂の腹部をぐるぐる巻きにした。末端はちぎれ元の槍に戻る。


「とりあえずはこれでよし……さて、灰田くん」


 御堂は槍を構える


「ちょっと遊び過ぎましたね……ここからは……」


 御堂の体がふわりと宙に浮かぶ。


「僕も本気で……相手をしてあげますよ」


 俺はハンマーを構える。

 次の瞬間、構えていたはずの俺は吹き飛ばされていた。教室の入口に激突する。


(――なんだ!?)


 再び衝撃。

 俺は廊下に投げ出される。

 俺は投げ出されながら、光るムチのようなものに自分の足首がしばらているのを見る。ムチは長く伸びていて、その先は御堂の手に持つ槍の先端に繋がっている。


(あの槍か……)


 ムチは俺を廊下の奥へと放る。

 俺は廊下に叩きつけられる。俺はすぐに起き上がる。

 すると……目の前に御堂が居た。


「……この!」


 俺はハンマーを振りかぶる。

 が、再び御堂の槍の先端がムチのようにしなり、俺を吹き飛ばした。

 御堂の槍は凄い威力だった。一発一発がとてつもなく重い。


「どうしました? 遅いですよ?」


 御堂は笑う。

 俺はよろけながら起き上がる。


「……早いと……お前が付いてこれないだろ?」


 俺は強がりを言う。

 左腕と脇腹からは今も血が流れている。

 おまけに御堂の重いムチのような攻撃。俺は気を失う寸前だった。

 御堂はそんな俺を見て愉しそうな顔をする。


「しかし……校舎の中で戦うのはいけませんね。狭苦しくて……」


 御堂は校舎の壁を見上げながらそう言う。


「外へ出ましょうか?」


 御堂はそう言うと、御堂の周囲に浮かぶ四つの光球が同時に収縮する。

 槍の先端もまるでドリルのような形状をとる。


(なにを……)


 次の瞬間、光球から光の束が四本、上下に二本ずつ発射された。

 発射された光の束は壁を突き破り、外壁をまで到達した。すると今度はその方向を変えてジグザグに動き始めた。光の束は学校を切り裂いた。

 槍の先端もまるでドリルのように壁を破壊する。


「これは……まさか……」


 学校が振動している。

 やがてそれは校舎全体の崩壊へとつながる。

 御堂は教室の窓から外に飛び出る。


「お先に失礼しますよ」


 俺は逡巡した。

 飛び出せば……外で、御堂の独壇場で戦うことになる。

 その逡巡が、致命的だった。

 俺の足元、廊下が崩れる。


「わあぁぁぁぁぁぁ!?」


 俺は落下していった。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 御堂誠二が校舎の外、空中に飛び出すと、そこにはミオンさんが居た。

 ミオンさんは何食わぬ顔で空から校舎だったものを、瓦礫の残骸を見下ろしている。

 僕はミオンさんに飛んで近寄っていく。


「どうも、ミオンさん」

「やあ、御堂くん。学校を壊すとは生徒会の副会長らしくないじゃないか? それに生徒が残っていたらどうするつもりだい?」


 ミオンさんは意地の悪い笑顔をしている。

 僕は肩を竦める。


「どうせミオンさんに治してもらえるんです。被害を気にするのはナンセンスですよ。それに生徒が居ないのはレーダーを使った時に確認済です」

「治すのも大変なんだけどね……少しは僕の苦労を考えて欲しいよ、全く」

「すいません」

「ま、良いけどね」


 僕は半壊した校舎を見る。

 灰田くんは飛び出さなかった。つまりあの瓦礫の下敷きか。


「灰田くんはまだ気絶していないよ」


 ミオンさんはそう言う。


「気絶してくれてると楽だったんですけどね」


 僕は肩を竦める。

 同時に周囲に展開する光球四つを収縮させる。


(さぁ、どうする灰田くん……飛び出してくれば、僕の光線の餌食ですよ?)




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 灰田健太は暗闇の中に居た。

 周りは校舎の残骸で覆われている。


「……生きて……るか」


 上を見ると一際大きな残骸があり、俺へ落ちてくる残骸を屋根のように防いでいた。

 なるほど……つまりこれは……。


「助かったけど動きがとれない……」


 俺はどうしたのものかと悩む。

 ハンマーで瓦礫をどかすか……? だけど、そうすると……多分……。


「御堂の待つ校外での戦いになる……か……」


 空を飛べる御堂を相手に、外で戦うのは……はっきり言って絶望的だった。

 いや、すでに……絶望的な差を見せられていた。

 御堂の光線……あの威力……どうやら最初はわざと力を抑えていたらしい。

 それにあの槍の凄まじい速さと強さ。

 さらに御堂を覆うオーラによる防御能力。


(考えろ……考えろ……何か作戦を……御堂に勝つ方法を……)


 俺は御堂の力に対抗する方法が無いことを……。

 それを認めそうな自分を必死に抑え込んで考えた。


(なにかないか……なにか……)


 だけど、いくら考えても……見つからない。

 御堂の力に勝つ方法が……。

 俺は歯ぎしりする。


「……そ……くそ……くそっ……くそおおおおおおお!」


 考えろ考えろ考えろ。

 考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ。

 考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ。


「…………」


 だが、いくら考えても……御堂に勝つ方法が浮かばない。

 ダメなのか?

 俺じゃ御堂に……勝てないのか?


「…………」


 俺は……御堂に……負けるのか……?

 ……………………。

 …………。

 その時――携帯が鳴る。

 俺は無視しようかとも思ったが……気持ちが諦めかけていた俺は、無意識に携帯をとり、着信を確認する。メールが来ている。


「……これは」




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




「ちょっと押さないでよ? 狭いわよ!」

「川原、どう? 送れた?」

「どうなってるの?」

「見えないです」


 街の外れの海岸に立って、川原の携帯を眺めている囲碁将棋部の面々。

 その後ろには双葉さんと枝野先輩が居た。


「あんたら別々の携帯から送れば良いじゃない?」


 枝野先輩が呆れたようにそう言う。

 そう言われて、ハタと止まる囲碁将棋部の面々。


「言われてみれば、そうでした……」


 枝野先輩にそう言われて、各自、自分の携帯からメールを送る。

 枝野先輩はそれを見て、またしても呆れたように溜息をつく。

 ここは明和中学校がある街から三つほど離れた海岸に接する街だ。

 灰田に直接は会えない代わりに、メールを送るためにここに来たのだ。

 ここなら御堂くんの力も及ばないだろう。


「メールなんて届いても見ないんじゃないですか?」


 双葉は枝野先輩に質問する。


「そうかもしれない。でも、そうじゃないかもしれない。分からないわよ」


 枝野先輩は肩をすくめる。


「少しでも足しになるかもしれないなら、やっておくのよ」

「そういうものですかね……」


 双葉は気になっていたことを質問する。


「枝野先輩はどうしてそんなに灰田に肩入れするんですか?」

「んー? 灰田はどうでもいいのよ。御堂よ御堂。あいつが気に喰わないのよ」

「御堂くんが?」


 枝野先輩は何か苦いものを思い出したような顔だ。


「あいつ、絶対に心の中で私らのことバカにしてるのよ」

「……? そんな風には見えないですけど」

「だから心の中でって言っているでしょ? 本当、失礼しちゃうわよね……人がどう過ごそうが勝手だってのに……あいつ自分が賢いとでも思ってるのかしらね……」

「は、はぁ……」


 双葉は興味なさそうに答える。


「そういや、灰田、私の銃使ったかしら……御堂のやつに一発かましてやれたら最高なんだけど……」


 枝野先輩は悪い顔をする。


「あっちの試合はどうなっているんですかね……」


 双葉はそう言って空を見る。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 灰田健太は瓦礫の中で携帯を見ていた。


「……これは」


 携帯のメールの着信画面。

 送信者は川原……内容は……。


『灰田、ハブにしてごめんなさい! もう御堂くんの力の影響は受けてないわ! 色々言いたいことはあるけど……とにかく、ごめんさい! それと負けるな! 頑張って!』


 俺は胸の中に温かいものがこみ上げてくる。

 続いて、望月先輩や倉田からもメールが届く。


『灰田くん、本当にごめんなさい! 色々と酷い態度だったと思います。もう俺らは大丈夫だから……本当にごめんなさい!』

『ごめんなさい。頑張ってください』


 俺は倉田の短い文面に噴き出していた。

 最後に金本からのメールが届く。


『ごめん。御堂に良いようにされてた。監視する側としちゃ失格だよな……本当にごめん。それと……頑張れ。御堂に負けるな! 妹を助けるんだろ!』


 妹を助ける。


「そうだ……」


 妹を……助けるんだ。

 俺が諦めてどうする。

 例え、勝ち目が無くたって、無いなら作れば良い。

 俺は……。


「妹を……助けるんだ……!」


 力が湧いてきていた。

 でも、それだけじゃ御堂の力に対抗するには足りない。

 俺のハンマーで出来ること……『錬成』は……ダメだ。御堂の防御を破れない。

 『エアシュート』は……あの防御の前には……。

 いや……。


「そうだ……『エアシュート』なら……御堂の防御の内側を抜ける可能性がある……」


 通常の『エアシュート』なら可能だった。

 動かない的なら百発百中で目標を狙い打つ。

 だけど、こと戦闘中ではそうも上手くいかない。なにせ相手も動いているのだ。どうしても狙いは十数センチはズレる。

 その狙いの甘さを無くせば……ピタリと御堂の皮膚に狙いを付けられれば……あの防御も関係なく御堂を撃てるはずだ。

 もっとも、肉体の内側に入ってしまえば『エアシュート』は不発に終わる。もともと能力を作るときにそういう能力にしていた。相手を殺してはいけないというルールがあったからだ。

 肉体に入らずに皮膚の上を叩くには、数センチ単位の位置調整が必要になる。


「けど……どうやって……」


 俺は考える。

 そして……ひらめいた。


「……そうだ……もしかしたら……いけるかも」


 迷ってる暇はない。

 今も左腕と脇腹から血液は流れ出ているのだ。

 あと数分で気を失いかねなかった。

 その時――衝撃が走る。

 俺は何か引っ張られて瓦礫の中を突っ切る。


「がっ!?」


 俺は痛みを堪えて、どうにかやり過ごす。

 やがて俺は瓦礫の外に出た。

 すると、俺を引っ張っていたのが御堂の槍の先端、ムチだと分かる。

 御堂は学校全体を見渡せる位置に浮いていた。すぐそばにミオンも居る。

 御堂のムチは俺をグラウンドの中心に投げると、そのまま御堂の手元の槍へと戻っていく。俺はグラウンドに叩きつけれた。


「がっ!?」


 俺は痛みを押して、急いで起き上がる。

 次の瞬間、俺の右足を光の束が貫いた。


「――――っ!?」


 俺は歯を食いしばる。血液が右足から流れ出る。

 俺はたまらず片足をつく。

 御堂を見上げると、光線を発射した体制で動きを止めていた。

 御堂のそばで光球が三つ収縮する。

 次で終わりにするつもりだ。


(上等だ……)


 俺は肉体にかけていた『身体強化』を解いた。

 そして掛けなおす。

 体の一部にその全てを……。

 俺は『ビック・ハンマー』を構える。『エアシュート』で上空の御堂を狙う。

 御堂は笑って、回避行動をとる……だが。


「見、え、て、る、ぞ……」


 御堂が吹き飛んだ。

 俺の『エアシュート』は……寸分違わずに御堂の皮膚を狙い撃った。

 自身の防御能力を過信していたのか、御堂は空中から落下する。

 俺は落下中の御堂を再び狙い撃った。


「――――!?」


 衝撃で御堂は地面と平行に飛んで、そのままグラウンドに激突した。

 よろよろと起き上がる御堂。


「……なに……が」


 俺は御堂に三度、狙いをつけて……振りぬく。

 御堂が吹き飛ぶ。


「はぁ……はぁ……」


 俺の目は充血していた。いや充血を通り越して目から血を流していた。

 『身体強化』を目に一点張りで使っていた。

 『エアシュート』がズレるなら、そのズレをカバーできるだけの動体視力があれば良いと考えたのだ。

 だが思ったよりもその反動は大きかった。

 それはそうだ。考えてみれば元々は身体全体を強化する目的で作った能力だ。目だけ強化などは考えていない。


「ぐっ……」


 俺は赤黒く歪んだ視界に、目に酷い激痛を覚える。

 『身体強化』で目を強化するのを止める。

 微かに見える歪む視界に、御堂らしきものを捉える。

 俺は右足を引きずりながら近つく。やがて御堂の目の前に到着した。


「……御堂」

「やあ……灰田……くん……」


 御堂が息を絶え絶えなのは、声から分かった。

 俺はハンマーを振りかぶった。

 御堂が口を開く。


「それは……正しい……願いですか?」


 御堂の言葉に俺はハンマーを振りかぶったまま固まる。


「君が叶え……ようとしている……願いは……妹さんを……助ける……たった……一人のためです」


 御堂は続ける。


「その願い……は……本当に……正しい……ですか……?」


 俺は溜息をつく。


「知るか」


 俺はハンマーを握る手に力を入れる。


「俺は妹を助ける!」


 力の限り叫ぶ。


「邪魔する奴は誰であろうと潰す! 全て叩き潰す!」


 半壊した校舎に、俺たち以外は誰も居ないグラウンドにその叫びはこだまする。


「それだけだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 俺はハンマーを振り下ろす。

 衝撃がグラウンドに響き渡る。

 俺はハンマーを、自身の心衣領域を消す。

 御堂は俺のハンマーを喰らって、ピクリとも動かない。気絶したようだ。

 すると俺の歪む視界にヒラヒラした服装の女性が映る。どうやらミオンが降りて来たらしい。

 ミオンは嬉しそうに口を開く。


「この学校で開かれた、八人による試合……その勝者が今、決まったね」


 二っと笑うミオン。


「勝者……灰田くん!」


 俺は思い切り深呼吸してから叫ぶ。


「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 ミオンの力によって半壊していた学校は元通りになった。

 俺と御堂のケガも同様に元通りだ。

 俺は御堂のケガを治したばかりのミオンに質問した。


「妹は……妹の病気は……いつ治してくれる?」


 ミオンはいたずらっぽく笑う。


「今日の放課後、また会おう。そこで治療をするよ」

「……そうか」


 俺は座り込む。

 ミオンはそんな俺の隣にしゃがみ込む。


「灰田くん。これで戦いは終わりだ。君は勝ち残った……この成果を君はもっと誇って良いんじゃないかい? まさか御堂くんを倒すとは思わなかった! あの心衣領域の使い方は想像もできなかったよ? こちらの与えた道具を、こちらの想像を超えた使い方をしてくる……これは本当にゲームマスター冥利に尽きるというものだ!」


 俺はミオンにそう言われて、過去を振り返る。

 そしてこう言う。


「俺だけの力じゃなかった……今までの試合、囲碁将棋部の面々が居なかったら負けていた試合があった。御堂に勝てたのも枝野先輩が協力してくれなかったら、逆に俺が御堂に圧倒されて終わっていたし……だから……」


 俺は拳を握り締める。


「今は……皆に早く会いたいよ」


 ミオンはそんな俺をしばらく見つめていたが、おもむろに立ち上がる。


「皆って、あの子たち?」


 そう言って指を指す。

 指を指された方角を俺は見る。

 すると、学校の玄関。そこに見慣れた黒いドアが複数展開されており、大量の生徒たちがドアの中から出てきているところだった。

 その生徒たちの先頭にこちらへ向かってくる生徒たちが居る。

 その生徒たちの顔を見て、俺は叫んだ。


「みんな……!」


 俺は囲碁将棋部の面々に駆け寄った。

 向こうも俺の方に駆けてくる。


「灰田ー!」


 金本がそう叫びながら、俺に飛びついてくる。

 俺は金本を受け止めながら笑う。


「金本!」

「灰田、あんた勝ったのよね、あそこに御堂が倒れているってことはそうよね! そうよね! やった、やった! いやったぁー!」


 川原もそう言って金本の上から抱き着く。

 俺は二人分の重量を支え切れずに倒れる。

 望月先輩と倉田も駆けつける。

 俺は四人に囲まれて……笑った。


「……ははははははは」


 ミオンの姿はいつの間にか消えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ