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灰田くんと八人の切願  作者: 千咲
17/20

#17 灰田くんと枝野さん

 明和中学校。

 給食の時間。その時間は生徒たちにとって、一日で一番楽しいはずの時間だ。

 そのはずだ……俺以外は……。

 俺、灰田健太は給食の配膳の順番を待っていた。

 俺の番になり、給食の皿を前に出す。


「…………」


 給食当番は金本だった。

 金本は俺から皿を受け取ると、野菜炒めが入った大きな皿から何かをよそう。

 金本は俺に皿を突き返す。

 俺は黙って受け取り、自分の皿を見る。

 ピーマンが一切れだけ入っていた。


(……泣いていい?)


 他の給食もよそって貰うが、皆、対応は似たり寄ったりだった。

 俺はじゃがいも一個のシチュー? とビーマン一切れの野菜炒め? と黒ゴマ一粒の大学芋? などを受け取り、自分の席へつく。


(まともに食えるのはパンと牛乳だけか……)


 全員の配膳が終わると、みんば席について、先生と一緒に頂きますを言う。

 俺はパンの袋を破き、もそもそと食べ始める。

 クラスの皆は俺が居ないように振る舞っている。

 金本の方を見ると、クラスメイトと楽しそうに話している。

 俺は心の中に陰鬱としたものを感じながら給食のパンと牛乳を平らげた。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 昼休み。

 図書室では数人の生徒が本を読んでおり、騒ぎを起こす生徒はおらず静かなものだ。

 俺は窓際の誰も居ないテーブルに一人で座っている。


「……はぁ」


 俺は溜息をついて、テーブルの上に突っ伏す。

 目を瞑れば、遠くに金本の声が聞こえる。

 それだけではない。川原の容赦のない突っ込みも、望月先輩の優しくて穏やかな声も、倉田の無感情ば小声も、みんな聞こえてくる。


「…………」


 御堂の攻撃は確実に俺にダメ―ジを与えていた。

 俺は自分の心がこんなに脆いとは思わなかった。


「…………」


 俺の頬を水滴が落ちる。

 俺は自分が泣いているのだと自覚した。


(……くそっ)


 俺は慌てて目をこすり、涙をぬぐう。

 俺は俯き呟く。


「……御堂」


 それは怨嗟をはらんだ声だった。

 俺は昼休みが終わるまで、図書室の窓際のテーブルに居た。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 放課後。

 俺は双葉との試合会場である体育館に来ていた。

 周囲には部活中だった生徒たちが、中央を避けるように並んでいる。

 多くはバスケットボール部やバレー部の生徒たちで、二~三人の顧問の教師も居る。


「相当参っているみたいだね」


 そう語るのは俺の隣に居るミオンだった。

 赤毛に碧眼、いつも通りのヒラヒラとしたお姫様のような恰好だ。

 俺はミオンの方を横目で見る。


「……あいつの……御堂の仕業だって、お前は知ってたのか?」


 聞くまでもない事だった。

 ミオンなら全員の力を知っている。


「おお? もう御堂くんの仕業だってとこまで辿り着いたのかい。良いことだ、その調子で御堂くんの力の秘密を暴いてくれたまえ。でないと勝負にならないからね」


 こちらの心の中を読めるミオンにしては、言い回しが雑だった。

 俺は神経を逆なでされた気分で話を終える。

 やがて双葉が体育館に現れた。現れたと言っても、ドアだけだったが。

 俺とミオンの目の前に突如現れたドアは、二メートル以上あり、全体は黒色で出来ていた。

 その扉が開き、中から双葉が現れる。


「お待たせ」


 双葉は退屈そうにそう言う。

 俺は『ビック・ハンマー』を展開した。


「はじめてくれ……」


 俺はハンマーを構え、そう呟く。

 ミオンは退屈そうに開始をつげる。


「試合開始」


 次の瞬間、俺の『ビック・ハンマー』が双葉めがけて一直線に駆けた。

 凄まじい衝撃が体育館に響きわたる。

 俺のハンマーは双葉の立っていた位置を正確に射抜いていた。

 だが……。


「……やっぱり……間に合わなかったか」


 双葉は一瞬早く自分のすぐ横にあった扉に、心衣領域で作り出したドアの中に入ってしまった。

 やがてドアは煙のように消えていく。

 こうなっては双葉を攻撃する手段は俺には無かった。


「……くそ」


 俺の呟きが空しく響く。

 それから三十分が経った。

 ミオンは時間を確認して宣言する。


「そこまで……勝者なし。引き分け!」


 その宣言が終わる同時、目の前にドアが現れる。

 ドアの扉が開き、双葉が現れる。


「それじゃ、私、帰るから」


 それだけ言うと、双葉は再び扉の中へ入ってしまう。

 扉が閉まると同時、煙のようにドアは消えていく。

 俺は『ビック・ハンマー』を消して、体育館の入口から外へ出ていこうとする。

 そんな俺の背中にミオンが告げる。


「あと一つ」


 俺は何も答えずに体育館を後にした。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 月夜が輝く深夜。

 自宅の自室。俺はベットに横になっていた。


「あと一つか……」


 その一つを勝つのがどれだけ難しいか……。

 俺は御堂との力の差に絶望していた。

 このまま戦うわけには行かなかった。

 どうにかして御堂の力の秘密を解き明かさないと……。


「他者の心に干渉する力……多彩で強力な能力……」


 あと一つピースが足りない。

 そんな気がする……。

 あと一つ……何かが足りない……。


「あと一つ……」


 俺は『ビック・ハンマー』を展開する。

 ハンマーを片手に持ち、宙に掲げる。

 このハンマーも御堂と戦うには力不足だ。

 『エアシュート』も『錬成』も『身体強化』も……。


「身体強化……」


 最後に使ったのは妹を学校の屋上に連れて行ったときか。

 …………。

 ……ん。


「…………」


 俺は上体を起こす。

 ふと一つの疑問が浮かんだ。

 身体強化で屋上の上に行くなんて、椿との試合の時は考えもしなかった。

 出来ないと思っていたからだ。

 だが、なぜあの時は出来ると思った?

 実際に出来た?


「…………」


 俺の中に一つの仮説が浮かび上がる。

 それは……心衣領域が強化されているというものだ。

 俺は自室から飛び出した。

 家を出て、住宅街を走り、近くの河川まで来た。


「……はあ」


 俺は息を整えて、心衣領域を展開した。

 『ビック・ハンマー』が俺の手の中に現れる。


「もし……俺の仮説が正しいなら……」


 俺は『エアシュート』の狙いをつける。

 『エアシュート』の狙いを、橋の下の川面にする。ここから橋までは百メートルはある。俺の『エアシュート』の射程は八十メートル。射程が伸びていないなら届かないはずだ。

 俺は深呼吸してハンマーを振り下ろした。

 次の瞬間、川面に衝撃が走る。

 俺は体が震えた。


「……まじか」


 俺の『エアシュート』は正確に橋の下の川面に直撃した。

 心衣領域が強化されている。

 間違いない。


「これは……」


 どういうことだ……心衣領域がなぜ強化されている?

 心衣領域が……。


「…………」


 そういえば、なぜ心衣領域は心衣領域という名前なんだ?

 直訳で考えるなら、心の衣だ。

 …………。

 ……心?


「御堂の力……他者の心に干渉する力……」


 ……見えてきたかもしれない。

 もしも、心衣領域が使い手の心に影響を受けて肥大化していくものだとしたら?

 御堂の力が相手の心に心衣領域を貸し与えるもので、それを後から回収していたとしたら?

 一人では大して増えはしないかもしれないが、全校生徒に貸し与えていたら……?

 その力はどれだけ増えるのか、想像もつかなかった。

 俺は不敵に笑う。


「御堂……お前の力、やっと分かったよ……」




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 翌日の明和中学校。

 俺は昼休みに協力者を探して、ミオンに選ばれた八人を巡回していた。

 そして……ことごとく失敗していた。


「頼む、楓! ちょっとだけで良いから話を聞いてくれ!」


 俺は楓のクラスに行き、楓の前で最敬礼していた。

 楓は周りのクラスメイトの冷ややかな目線にたじろいでいた。


「――楓ちゃん、その人の話は聞く価値無いよ」

「――そうだよ、ほっときなよ」

「――そんなことより、この間、学校の帰り道でさ」


 俺を無視するように、クラスメイトが告げる。

 俺は歯ぎしりした。

 一年まで俺を無視するのかよ。


「御堂の力のことで相談があるんだ!」

「え、えと……その……」


 楓は言い淀む。

 やがて、重い口を開く。


「……そ、その……ご、ごめんなさい」


 楓は周囲の生徒に遠慮してか、すまなそうに否定の言葉を告げる。

 俺は拳を握り締める。


「そうか……すまない」


 これで五人目のダメ出しだ。

 椿も柳田先輩も黒崎先輩もダメだった。

 椿は取り付く島もなかったし、柳田先輩は言葉が通じないというかこちらの言うこと聞いていないし、黒崎先輩は他者の試合に関わるつもりは無いと断られた。

 双葉は元よりダメだし、これで楓もダメとなると……残りは。


(枝野先輩か……)


 俺は枝野先輩を探して三年の居る四階へと向かった。

 何となく枝野先輩は怖くて、後回しにしてしまった。

 枝野先輩を探して教室を順番に覗いていく。

 三年三組に枝野先輩は居た。クラスメイトと談笑している。

 俺は息を呑むと、三年三組のクラスに入っていった。


「……あの、ちょっと良いですか?」


 俺は枝野先輩に話しかけた。

 枝野先輩は俺の方を見ると、面白そうに微笑む。


「灰田じゃん、何?」


 俺は口を開こうとしたが、それよりも早く取り巻きの女子生徒たちが早い。


「ちょっと枝野、そいつの話なんか聞く価値無いよ」

「そうそう、無視無視」

「それより、今日の授業でさ――」


 枝野先輩は取り巻きの女子生徒たちに向かって一言、言い放つ。


「邪魔」


 取り巻きの女子生徒たちは、枝野先輩に怯えるように黙り込む。

 枝野先輩はそれを見て満足そうに笑うと、俺の方に向き直る。


「で、何の用?」


 枝野先輩は何でもなにことのように俺に質問する。

 俺は枝野先輩の態度に、改めて恐ろさを感じていた。


「えと……御堂の力の秘密が分かったんです。それで協力を――」


 瞬間、俺はゾっとした。

 枝野先輩が冷たく笑ったのだ。


「詳しく聞かせてよ」




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 学校の屋上。

 俺は枝野先輩と二人で屋上に居た。

 枝野先輩は柵に手をかけて、寄りかかり俺に質問する。


「で、御堂の力が分かったって言ったわね、聞かせてよ」

「は、はい……」


 俺は御堂の力の秘密を枝野先輩に話した。

 俺が考えているのは、御堂が力を貸し与えているのなら、誰かが御堂を抑えておけば力を回収できないのではないかということだった。

 だが、その為には協力者がいる。

 御堂を一人で抑えるのは無理だというのは、枝野先輩の不意打ちが失敗したことからも明らかだ。


「ふうん……なるほどね」


 枝野先輩は俺の話を聞き終わると、そう呟いて黙り込む。何かを考えているらしい。

 俺は枝野先輩にお願いした。


「そ、それで、枝野先輩にお願いが――」


 枝野先輩は手で待ったと合図を出す。

 片手をプラプラと自分の前で振って続ける。


「その前に……もっとよこしな」

「へ……?」

「情報だよ、あんたが知っていること……全部話しな。御堂に関わることだけじゃない。ミオンの試合に関すること、全部だ。何がヒントになるか分からないからね」


 俺は躊躇した。

 枝野先輩に全て教えろって……それは……。

 すると俺の躊躇を見てとって、枝野先輩は口を開く。


「全部聞かないと御堂を倒す作戦もなにもないだろう? あんたはどうせ御堂を抑えれば良いとか思ってるのかもしれないけど、例え二人掛かりでも御堂は抑えられないよ。第一、不意打ちするにしても学校内じゃ、生徒に貸した力も回収し放題じゃないか」


 俺は心の中を言い当てられて絶句した。

 少し躊躇した後、俺は全て話すことにした。

 椿との試合から始まり、双葉との引き分けまで、そこに至る過程まで詳しく話した。

 昼休みはとっくに終わっているが、俺は話し続けたし、枝野先輩は黙ってそれを聞いていた。


「…………」


 俺が話終わると枝野先輩は黙って考え込む。

 俺はどうして枝野先輩が俺に協力してくれるのか、分からずに首を傾げた。


「あの……どうして御堂を倒すのに協力してくれるんですか?」


 俺はたまらずに聞いてみた。


「んー……気に喰わないから」

「気に食わない……?」

「そ。気に食わない奴に一杯食わせるの……あたし好きなんだよね」


 そう言って微笑む枝野先輩は妖艶な雰囲気を漂わせていた。

 俺は寒気がした。

 枝野先輩はしばらく考えていたが、やがて頷くと呟く。


「これしかないか……灰田」

「は、はい……」

「あんたに作戦を与えてあげる……あんた、ミオンに気に入られてるんだってね」


 そう言って枝野先輩はニヤリと笑う。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 放課後。

 俺は職員室前の掲示板の前で念じた。


(ミオン……出てきてくれ……)


 俺は心の中で念じる。

 すると背後から声が聞こえる。


「なんだい?」


 その声の方を振り返ると、そこにはミオンが居た。

 赤毛に碧眼、お姫様のヒラヒラしたいつもの格好だ。


「本当に来た……」


 俺は驚いていた。

 枝野先輩に言われて試してみたが本当に来るとは……。


「用が無いなら帰るよ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ……」


 俺は枝野先輩に言われたことを思い出す。


「次の俺と御堂の試合……学校中を舞台にしないか?」

「んー?」


 俺は咳払いとして続ける。


「つまり……俺と御堂の戦績が五勝一分で並んでるだろ? 次の俺と御堂の試合、どっちが勝つかで優勝が決まるわけだ……だったら、俺と御堂を全校を舞台にしてやった方が……面白いと思わないか?」


 俺は最後の面白いという言葉だけイントネーションを変えて言った。

 ミオンは『面白い』という単語に肩眉を吊り上げた。


「……ふむ」


 ミオンは考え込む。

 俺は黙っていたが、その心中はミオンに頷いて欲しくて今にも叫び出しそうだった。


「……確かに……面白いね」


 俺は心の中でよっしゃと握りこぶしを握る。


「枝野くんが言ったっていうのが気になるけど……確かに面白い!」


 枝野先輩が言ったことがばれてる。

 ミオンはこちらの心の中が読めるから当然か……。

 俺は試合会場を学校全体にすることに、何の意味があるかを枝野先輩に聞いていない。聞いても教えてくれなかったのだ。

 俺は同調してくれたミオンに答える。


「な、そうだろ?」

「そうと決まれば、早速、他の七人も通知を出さないと……忙しくなってきたぞ」


 ミオンはそう言うと、楽しそうにどこかへ行ってしまった。

 俺は胸を撫でおろした。

 とりあえず、言われた通りにしたけど……いったいこれに何の意味があったんだ?




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 放課後。

 灰田健太がミオンと試合会場の相談をしていたのと同時刻。

 私、双葉涼子は、学校の玄関で靴を履き替えているところだ。


(今日の試合、負けてあげなかったのは、ちょっと悪かったな……)


 私は灰田との試合のことを思い出す。

 けど、すぐに気持ちを切り替える。


(ま、干渉しないって決めたんだもんね。相手が誰でも関係ないか)


 私は靴を履き替え終わると、玄関から出ていこうとした。

 そんな私に――


「ねえ、ちょっと良い?」


 話しかけて来たのは、枝野先輩だった。

 私は意外な人物に声を掛けられてちょっと驚いた。


「なんです?」

「灰田のことよ」


 意外な人物の口から、意外な人物の名前が出たことで、私はますます驚いた。

 私は肩をすくめると、スマホを見て答える。


「……三十分だけなら」

「んー、ありがとう。それで十分よ。じゃ、ちょっと帰り道でお話しましょ」


 そう言って、枝野先輩は先に歩いていく。

 私は溜息をついて、その後に続く。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 駅前の病院。

 五階の廊下の一番奥の病室。

 俺、灰田健太は病室の前に立っていた。


「……ふう」


 深呼吸して病室のドアを開ける。

 ドアを開けると、妹が俺を見て笑顔で挨拶してくる。


「あ、お兄ちゃん」


 俺は病室の中に入り、妹に挨拶を返す。


「よお、今日も様子見に来たぞ」

「……今日も囲碁将棋部の人、居ないの?」


 妹は俺の後ろに誰も居ないこと確認すると、俺に聞いてくる。


「ああ……ちょっと、都合悪くてな……」

「そう……」


 そう言って妹は落ち込む。

 俺は妹を励まそうと口を開く。


「こ、今度、今度来るときは連れてくるから……」


 すると妹は明るい笑顔になって、いたずらっぽく俺にこう言う。


「本当に?」

「……本当だ」


 俺は笑顔でそう言う。

 すると妹はなんだか悩んでいるような顔をする。


「どうした?」

「囲碁将棋部の人となにかあったの?」


 俺はドキッとして、取り繕おうと必死に次の言葉を探した。


「それは、いや、そんなことないって……はは、どうしたんだよ? 突然」

「…………」


 妹は黙り込んでしまう。

 俺は慌てて次の言葉を紡ぐ。


「よし、今度来るときに連れて来なかったら……ええと、俺が――」

「お兄ちゃん」


 俺の言葉を遮り、妹は告げる。


「本当に囲碁将棋部の人と何にもなかったの?」

「…………」


 俺は開いていた口を閉じて、黙り込む。

 ややあって俺は喋り始める。


「……本当に何でもないよ。囲碁将棋部の連中は……ちょっと都合が悪くて来れないだけだよ」

「……そう」


 妹は何か考え込むが、やがて笑顔になって呟く。


「分かった……」


 俺は妹に全て見透かされているような錯覚に陥る。

 俺は黙って妹の頭を撫でる。

 妹は撫でられるままに任せていた。


(……御堂)


 御堂に勝てば、他者の心に干渉する御堂の能力は解除される。

 そうすれば、みんなを連れてまたここに来れる。

 俺は負けられない理由が増えたのを感じた。

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