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灰田くんと八人の切願  作者: 千咲
14/20

#14 灰田くんVS黒崎くん

 木曜日の朝。

 俺、灰田健太は、日課のジョギングをしていた。

 街の空気はまだ冷たく、吹きすさぶ風が汗にあたり気持ちが良い。


「ふう……」


 俺は汗をぬぐう。

 最初はきつかったが、いい加減にジョギングにも慣れてきた。


「今日は黒崎先輩とか……絶対に負けないぞ」


 今日はミオンの試合がある日。

 俺の試合は黒崎先輩とだ。

 負けるわけにはいかない。黒崎先輩は楓と同じ二敗だが、もう楓のときのような無様はさらさない。

 俺は心の中にある罪悪感をより強く感じるようにしていた。

 楓のときはこれを無視して、ハンマーを外すという無様をさらした。

 今度はそうはいかない。


「よし……」


 俺は走りだした。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 明和中学校、昼休み。

 図書室の中のテーブルの一つ。

 囲碁将棋部の面々が顔を突き合わせていた。

 だが、金本の姿はない。


「金本は?」


 川原がそう聞く。


「金本は御堂のところだ……監視役だからな」


 俺、灰田健太はそう答える。


「そっかー……金本のやつ、上手くやってると良いんだけど……」


 川原はそう呟く。

 俺は頷くと、金本の代わりに司会役を務める。


「金本のことは置いておいて……今日の試合のことだ。俺と黒崎先輩の戦いはいつも通り川原が頼む」

「任せて」


 川原はそう言ってニヤリと笑う。


「椿と枝野先輩の試合は倉田、頼む」

「ええ」


 倉田はそう言う。


「最後に楓と双葉の試合を望月先輩、お願いします」

「分かったよ」


 望月先輩はそう言う。

 御堂と柳田先輩の試合は、金本に任せるとして、これで全部の試合の予定がついた。


「それで、黒崎先輩のことだけど、厄介なのは相手の心衣領域を切り裂く能力よ」


 川原は厄介そうな目つきで話す。

 俺は頷く。


「俺の『ビック・ハンマー』の能力、『エアシュート』と『錬成』を上手く使って戦うよ。近接戦はNGだ」


 俺はそう答える。


「それじゃ、各自、気を付けてな」

「何を気をつけるのよ?」


 川原が突っ込む。

 俺は黙り込む。

 こほんと咳払いして続ける。


「……みんな、締まっていこう」

「……おお」


 望月先輩だけがそう答える。

 どうも金本じゃないと上手く締まらない。

 俺は金本が居ないことを恨んだ。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 放課後、十六時十五分前。

 俺は時計を見て呟く。


「いくか……」


 俺は教室を出て、玄関で外履きに靴を履きかえる。

 そのままグラウンドへと向かう。

 グラウンドにはサッカー部や陸上部が居た。皆、グラウンドの中央を避けて、グラウンドの端に居る。

 グラウンドの中央には、ミオンと黒崎先輩が居る。

 ミオンは俺が来たのに気が付くと、


「おーい、こっちこっち!」


 と叫んでくる。

 俺はミオンの呼びかけに答えて、グラウンドの中央へと向かう。


「すいません、お待たせしました」


 俺はグラウンドの中央に着くと、黒崎先輩にそう言う。

 黒崎先輩は俯いて目を瞑っている。表情が見えない。


「構わない」


 表情が見えないまま黒崎先輩はそう答える。

 俺は黒崎先輩の返答に何か心の中がざわつく。


(なんだ……?)


 俺は訝しんだ。

 やがて時間が来たことを、ミオンが告げる。


「うんうん、それじゃ時間になったことだし……そろそろ始めようか」


 俺は『ビック・ハンマー』を展開する。

 巨大なハンマーが俺の手の中に納まる。


「…………」


 黒崎先輩は俯いたまま、心衣領域を展開する。

 刀状の心衣領域が黒崎先輩の右手に現れる。


「……灰田」


 黒崎先輩が呟く。


「はい」


 俺は警戒しながら答える。

 黒崎先輩が顔を上げる。

 その瞳は執念に燃えていた。


「俺の願いのために……消えてくれ」


 俺は寒気を覚えた。


「試合開始!」


 ミオンが告げる。

 同時。

 俺と黒崎先輩の姿が消える。


「――おお、消えたぞ」

「――なんだなんだ」


 グラウンドの端にいる生徒たちから歓声があがる。

 やはり身体強化系か。

 だが……椿ほどじゃない。

 俺は『身体強化』を使い、高速で動き回りながら黒崎先輩と距離をとる。

 そして、黒崎先輩の姿を瞳に映す。


「――喰らえ」


 俺は『エアシュート』で黒崎先輩をうつ。

 だが、俺の放った『エアシュート』は僅かに外れる。


(外された……!?)


 当たる瞬間、黒崎先輩は一歩後ろに下がった。


(剣道の足運び……?)


 剣道の足運びに似てる。

 俺はそう感じた。

 最も剣道部じゃない俺の勘だから外れているかもしれないが……。


(だったら……『錬成』だ!)


 俺は『錬成』を使った。

 『ビック・ハンマー』で地面を叩く。

 するとグラウンドの地面が盛り上がっていく。

 視界を遮るように塔がせせり立つ。


(もういっちょ……)


 俺は次々にグラウンドの地面を叩いて『錬成』を使った。

 グラウンドはあちらこちらに塔が立ち、視界が遮られる。

 椿のときはこちらが不利になったが『身体強化』の度合いに俺と大差が無い黒崎先輩なら……。

 俺は塔の死角に入るように移動する。


「死角に回る……か……」


 黒崎先輩はそう言うと、足を止める。

 黒崎先輩の姿だけが見えるようになる。


(な……?)


 俺は理解不能だった。

 なんでそこで足を止める?


(ええい……構うな)


 俺は死角に回り、『エアシュート』を使う。

 これならタイミングも掴めないだろう。


(喰らえ……)


 俺の『エアシュート』は……外れた。

 手応えの無さが手元のハンマーに残る。


(なんで……?)


 俺は死角から飛び出た。

 そこには黒崎先輩がこちらを向いて立っていた。


「…………」


 黒崎先輩は何も言わずにただすんでいる。

 俺は『身体強化』でまた消える。


(くっそ……)


 俺は黒崎先輩から死角になるように塔の陰に隠れながら、『エアシュート』で狙いをつけて、打ちまくった。

 だが、ハンマーに手応えは無かった。

 俺は塔の陰から『身体強化』を使わずに出てくる。

 黒崎先輩はそのままこちらを見つめて立っている。


「……終わりか?」


 そう呟く黒崎先輩。

 ギリッと歯ぎしりする俺。


(なんでだ……? なんで当たらない?)


 俺は混乱していた。

 俺が外しているんじゃない……楓のときとは違う。

 黒崎先輩が俺のうった『エアシュート』を全て外しているんだ……。

 どういう理屈だ……なんで躱せる?


「……なら……こちらから行くぞ」


 そう言うと、黒崎先輩は俺に向かって走りだす。


「……!?」


 俺は慌てて『身体強化』を使って黒崎先輩から距離を取る。

 だが……距離を取る前に黒崎先輩に接近を許す。


「……ふっ」


 黒崎先輩は刀状の心衣領域で攻撃してくる。

 刀の切っ先が俺の頬を掠る。


「ちっ……!?」


 俺は『身体強化』で黒崎先輩から距離を取る。

 だが黒崎先輩はぴったりと俺についてくる。


「くそ……」


 俺から離れない黒崎先輩は、そのまま俺に攻撃を仕掛ける。

 刀での連続斬撃。


「……っ!?」


 俺は『ビック・ハンマー』で受けようとして……止まる。

 あの刀は相手の心衣領域を切り裂くのだ。

 躱すしかない。

 俺は斬撃を全て躱す……だが、躱しきれない。

 俺の頬や制服が切り刻まれる。

 やがて黒崎先輩が止まる。


「…………」


 俺も釣られて止まる。


「……?」


 俺は疑問符を浮かべる。

 黒崎先輩はすまなそうに口を開く。


「……すまん」


 俺は自分の姿を見る。

 そこには上着を斬られ、ズボンを斬られ、ズタボロになり、下着が見えている俺の姿があった。

 俺は呟く。


「……あ……いえ……うん、はい」


 俺は何を言うべきか迷い、何も言えずに黒崎先輩に肯定を返す。

 黒崎先輩がこほんと咳払いをする。


「……続ける」


 それが再スタートの合図とばかりに黒崎先輩の姿が消える。

 俺も『身体強化』で姿を消す。


(くそくそくそ……なんで俺の攻撃が外れるんだ?)


 俺は考える。

 ……相手の動きが見えるのか?

 俺は仮説を立てる。

 もしも仮に見えない位置にいる俺の動きが見えていたとしたら、俺が『エアシュート』を打つタイミングで躱すことも可能かもしれない。

 でもそんなのどうすれば良いんだ?


「――ふっ」


 黒崎先輩の刀が俺に迫る。

 俺は必死に躱す。

 もう俺は下着がまる見えだった。

 ……この人、俺の上着だけ斬って楽しいのか?

 何なの? 必殺脱がせ人なの?

 俺は理不尽な怒りを黒崎先輩に対して抱いた。

 黒崎先輩も脱がせたくて脱がせているわけではないと、もう一人の俺が心の中で呟く。だが、俺はどうにもこうにもならない怒りが溜まっていくのを感じた。

 やがて俺は怒りを吐き出すように、『ビック・ハンマー』で『錬成』を行った。


「――せい!」


 『ビック・ハンマー』が直撃したグラウンドが盛り上がっていき、巨大な柵の形になった。俺は柵の柱の一つの影に隠れる。


(これで俺の隠れている位置が分かったら……確定だ)


 俺は息をひそめる。

 黒崎先輩は周囲を警戒していたが、やがて目を瞑る。


(目を瞑った……?)


 やがて目を開く。

 そして、俺に向かって真っすぐに接近してくる。


(……決まりだ!?)


 俺は仮説が正しかったことを確信する。

 俺は『身体強化』を使って柱の影から飛び出す。


(どうする……? どうする……?)


 俺は必死に考えた。

 目を瞑っている間、俺の姿を感じれる……そういう能力なのだとしたら、死角から打った俺の『エアシュート』を躱せるのも納得がいく。

 どうすれば黒崎先輩に『ビック・ハンマー』を直撃させられる?


「…………」


 どの位まで遠くまで感じられるんだ?

 俺はふと疑問に思った。

 グラウンドの端まで感じられるのか?

 そう考えた俺は『身体強化』でグラウンドの端まで走る。


「……ふっ」


 黒崎先輩はぴったりとくっついてくる。


(これじゃダメだ……もっと距離を離さないと……)


 俺は全力でグラウンドの外周を回る。

 黒崎先輩はその後ろをぴったりとついてくる。


(くそ……身体強化は五分か……いや、少し俺の方が劣っているか)


 その距離を徐々に詰めてくる黒崎先輩。


(ちぃ……)


 黒崎先輩に追いつかれる前に俺は『錬成』を使って地面を叩く。

 グラウンドの地面が盛り上がり山が出来る。

 俺は連続で『錬成』を使って山を作る。


「ちぃ……」


 黒崎先輩は隆起するグラウンドの地面に足を取られている。

 だが、すぐに立て直す。


「…………」


 その時には俺の姿は消えている。

 俺は塔の影に身を隠しながら、徐々に黒崎先輩から距離を取る。

 やがて黒崎先輩がグラウンドの反対側に来る位置までたどり着く。


(ここならどうだ……?)


 黒崎先輩は遠目にかなり小さく見える。

 もう目を瞑っているかどうかは判別できない。

 だが、動きを止めたかは、ここからでも見える。

 どうやら黒崎先輩は動きを止めたようだ。


(さあ、どうなる……)


 黒崎先輩はしばらく動きを止めていた。

 やがてキョロキョロと周囲を見る。


(……やった!)


 俺は『エアシュート』の狙いをつけて黒崎先輩を狙い打った。

 今度は手応えがあった。

 黒崎先輩の体が宙に飛ぶ。

 俺は柱の影から飛び出す。


「これで……終わりだ!」


 俺は宙に飛んでいる黒崎先輩の姿に狙いをつけて『ビック・ハンマー』を振った。

 黒崎先輩は……最後に俺を見た。

 その瞳の奥に何かが見えた……そんな気がした。

 衝撃が黒崎先輩を襲う。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




「勝者、灰田くん」


 ミオンが俺にそう告げる。

 黒崎先輩は目の前で倒れて、ピクリとも動かない。

 俺は……勝った。なら言うことは一つだ。

 俺は深呼吸をして叫ぶ。


「勝ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 俺は下着姿でガッツポーズをとった。

 様にならない。

 ミオンはそんな俺を見て笑う。


「はははは、それにつけても君のその姿はなんだい? ここは着替え室じゃないんだよ? その恰好はないわー、ははははは」

「……くっ」


 俺は笑うミオンにイラつきながらも、何とか堪えた。


「それにしても黒崎先輩は何だか怖かったな――」

「ははははははははは」

「…………」

「ははははははっはは」

「……おい」

「はははは……うん、なんだい?」


 俺は笑い続けるミオンに突っ込みを入れる。

 ミオンは笑うのやめて、俺に答える。


「ちょっと……笑い過ぎじゃないか?」

「うん、そうだね……すまなかったよ……ぶふ」

(こいつ……!)


 俺は言葉の最後で噴き出したミオンに怒りを覚える。


「な、なあ、早く俺の服を元に戻してくれないか……?」

「あぁ……ぶふ……そうだね」


 ミオンはそう言うと、片手を俺にかざす。

 するとグラウンド中から俺の制服の切れ端が飛んできて、元通りの状態に戻る。

 俺は元通りになった制服を見て、ホッとする。


「あとは黒崎くんだね」


 ミオンはそう言うと、黒崎先輩にも片手をかざす。

 俺は黒崎先輩の願いについて考えていた。


(あんなに必死になっていたってことは、よっぽど叶えたい願いだったんだ……)


 確か友達の障害の治療だったか……黒崎先輩の叶えたい願いは。


「…………」


 俺は黒崎先輩の願いをこれで潰したのだと痛感する。

 ミオンは黒崎先輩の治療が終わったのか、今度がグラウンドに両手をかざす。


「ほいっと……」


 ミオンが両手をかざすと、隆起していたグラウンドがビデオの巻き戻しのように戻っていく。

 グラウンドの修繕が終わると、ミオンは俺の方を見る。


「それじゃ、私はこの辺で失礼するよ。灰田くん、君の切なる願いまで、いよいよあと三つだ。終わりが見えてきたね」


 そう言い残して、ミオンは去っていく。

 あとに残された俺は黒崎先輩を見る。

 グラウンドの周りでは、サッカー部や陸上部が部活動の準備に入っていた。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 俺、灰田健太は夕暮れのグラウンドの片隅にいた。

 グラウンドではサッカー部や陸上部が部活動に勤しんでいる。


「…………」


 俺は隣を見る。

 俺の隣には黒崎先輩が居た。


「……う」


 黒崎先輩は目が覚めたようだ。

 黒崎先輩は周囲をキョロキョロと見渡す。そして、やがてその瞳に失望が映る。

 ぐったりとうなだれる黒崎先輩。


「……俺は……負けたのか」


 黒崎先輩はそう力なく呟く。


「はい……」


 俺はそう答える。

 俺たち二人の間に沈黙が流れる。

 俺は何を言えば良いのか分からなかった。だけど、黒崎先輩をこのまま置いておくのは……なにか心が引けたのだ。

 

「……灰田、ちょっと俺の愚痴を聞いてくれるか?」


 黒崎先輩はそう力なく言った。


「ええ……俺で良ければ……」


 俺はそう答えた。


「俺の友達に憲一って居るんだけどな……小学生の頃からの付き合いだ。その憲一が交通事故にあって下半身不随になってしまってな。学校にも来なくなってしまったんだ……俺は……ミオンにその友人の脚の治療をお願いするつもりでいた……」

「…………」


 俺は無言で答える。

 黒崎先輩は続ける。


「俺は……あいつに何て言えば良いのか分からなかった……あいつが学校に来なくなって……何とかしないと思ってはいた……だけど……そんな時だ……ミオンが現れたのは……俺はミオンの叶えてくれる願いで……あいつの脚を……治してもらうつもりでいた」


 黒崎先輩は悲しそうな瞳で語る。


「だけど……それもこれで終わりだ……俺はなんて言えば良い? あいつに……なんて言えば許される?」

「…………」


 俺は何も言えなかった。

 黒崎先輩はすがるような瞳をしている。


「学校に来いって言えば良いじゃない?」


 その声は俺の後ろ、川原だった。


「言ったが……学校には来なかった」


 黒崎先輩は川原に答える。

 だが川原は続ける。


「一回言ってもダメだったら、二回言えば良いのよ。それでもダメなら三回、四回、言い続けるのよ」

「…………」


 黒崎先輩は押し黙る。

 川原はなおも続ける。


「だいたい、先輩は暗いんですよ。その先輩の友達も、先輩見てたら暗くなりますよ」

「……く、暗い?」


 黒崎先輩は暗いと言われたことがショックだったようだ。


「そう! 暗いんですよ! それと先輩、灰田は悪くないですからね! なにか勘違いしてるようですけど、灰田は正々堂々と戦って勝ち残った、それだけです!」


 川原は俺の肩に手をおく。

 俺は褒められて、少し照れ臭い心持ちになる。


「……そう……だな」


 黒崎先輩はそう言うと、宙を見る。


「暗いか……そうだな」


 黒崎先輩は俺の方を見る。


「灰田、お前に愚痴っても仕方ないのに……悪かったな。これは……そう……俺の問題だ」


 黒崎先輩はそう言って笑う。


「え、ええ……」


 俺はそう答える。


「うんうん」


 川原も俺の肩に手を置いたまま、笑顔になる。

 黒崎先輩は立ち上げる。


「……じゃあな、灰田」


 黒崎先輩はそう言って、去っていく。

 俺と川原はあとに残される。


「……おい」

「ん?」


 俺は川原に声をかける。


「いつまで肩に手を置いてるんだ……」


 そう言われて川原は思い出したように手を放す。

 俺は黒崎先輩の去っていった方を眺めていた。


(あと三つ……か……)

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