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双眸のクオリア  作者: K
6/7

改変者


僕は事務所に到着するなり引き出しの中のメモ帳を引っ張り出し、久しぶりに紙に文字を書いた

”無言で携帯の電源を切れ”

2人は怪訝そうな顔をした後に、コクリと頷き、携帯の電源を落とした。葵はついでにノートパソコンのバッテリーを引き抜き、電源を落とす。

「なにか情報を得たって事だな?」

「あぁ、改変者の能力が分かったかもしれない」

「……何?」

「電脳世界に干渉出来る、あるいは味方に出来る」

 なぜ改変者は僕の個人携帯にしか届かない予言を知れるのか?なぜ僕の携帯の番号、名前を知る事が出来るのか?ハッキング、あるいは能力を行使して携帯を観測した。

そしてなぜ改変者は僕がついた嘘を”冗談だな”と一蹴出来たのか。

僕はわざわざ改変者の目、監視カメラに向かってわざとらしく舌を出してみせた。嘘をついて平静を装おうとすると唇が乾く、それをペロリと舐めてみせた。あの状況であの発言を嘘だと見破れるのは僕の姿が見えていたという証拠に他ならない。幸いにもレディ館に人が集中して、生身の目は誰も僕を捉えていなかった。

極めつけはレディ館の大型モニターがハッキングされたこと。

「そういうわけで改変者は全ての電子機器に侵入できる可能性が高い」

「奴の全ての目を味方に出来るっていうのは、監視カメラを指していると……」

「この秋葉原でネットワークに繋がっていないパソコンや携帯の方が絶対に少ない。もし無線LANを経由してスマホに侵入出来るのなら…」

「スマホのカメラを通して世界を見れるわけか、それにこのご時世歩きスマホをしている人が多いからな」

「……秋葉原は……改変者にとって都合がいい」

「そういう事になる」

「居場所については?」

「どこにでもいる、そして、どこにでもいない。そう言ってた」

「秋葉原の全てを知れるなら、あながち間違いじゃないのかもしれない」

 確かに、となると改変者はご丁寧に本当の事を僕に伝えたのか?

「……なんだか、早く見つけて欲しいように思える……」

 自分を探してみせろというルール、そしてわざわざ僕にコンタクトし、真実を伝えた。

「電脳世界に侵入できる能力者ということは、預言の能力者が改変者である線はなくなったと考えて良いんだな?」

 僕は腕を組み少しばかり思考する。本当にそうだろうか?まだ確定は出来ない。

「いや、まだ容疑者の一人って感じかな。少し情報を整理しよう」

 僕はこの会議室でもう誰も使わなくなったホワイトボードの前に立ち、ペンのキャップを引き抜いた。


・預言者

 人に害を成す未来を知る事が出来る能力者。

 女性(会ったことはない、声も聞いたことがない)

 僕達からコンタクトを取ることは許されていない。

・改変者

 電脳世界を味方にすることが出来る能力者。その能力を行使して予言を知ることが出来る。

 男性の声(会ったことはない)

 未来を変える事が出来る。

 どこにでもいてどこにもいない。

・ゲーム

 僕達は改変者を探さなければならない。

 時間をかけると人が死ぬ。

・ねこのあな

 能力事件が予言されたが事件は起きなかった。

・連絡通路

 予言通りに事件が起きた。


「傑、少し待て、電脳世界に侵入できる能力と未来を変える能力は共存出来るのか?」

 2つの能力を持った能力者、いや、過去にそんな能力者は一人もいなかったと考えると改変者もそうで無いと考えるのが自然だ。

「……改変者は2人?」

「あるいは、未来を変えていない?」

「いやしかしねこのあなで事件は――」

「起きた、起きたんだよ!」

 ねこのあなで能力事件が起きる。預言者の予言通りだ。

「そう、改変者の登場が事件なんだ、改変者が現れて殺人ゲームの開催を宣言したことがまさに事件だ」

「じゃあ改変者は未来を変えていないな」

「……人も殺せないかも……」

「……少し待ってくれ」

 華は腕を組みいつも通りうぅんと唸る。

「改変者は予言の文面を自由に変えれるんじゃないか? 未来を変えたんじゃなくて、予言を変えたとか」

「僕がメールを見る前に送信されたメールにアクセス出来れば可能かもしれない。でも預言者から送信されたメールが僕の携帯に届くまでに1秒もかからないと思うんだけど……葵はどう思う?」

 メールが届くまで1秒、僕は届いたメールはすぐに確認出来ていたはずだからさらに5秒。その短時間でメールの文面を即座に考えることが出来るのか? この中で一番電脳世界に詳しい葵の意見を聞きたい。

「……確かに1秒に満たない時間でメールは届く……あるいは……仕込んでおけば時間は稼げる……」

「仕込むというのは?」

「…送信されたメールが傑君の携帯に届くまでに中継する場所……メールサーバーで止まるように設定しておけば……」

「そうか、携帯に届く前に一旦メールを止めてしまえば自由に触ることが出来るな」

「いや、逆に考えよう、予言と実際に起きた事件。ねこのあなでも事件が起きたと考えるとなにも相違は無い。予言は書き換えられていないと考えられる」

 再度情報を整理しよう、その上で不要な部分は消していく。


・預言者

 人に害を成す未来を知る事が出来る能力者。

 女性(会ったことはない、声も聞いたことがない)

 僕達からコンタクトを取ることは許されていない。

・改変者

 電脳世界を味方にすることが出来る能力者。その能力を行使して予言を知ることが出来る。

 男性の声(会ったことはない)

 どこにでもいてどこにもいない。

 僕達に会おうとしている?

・ゲーム

 僕達は改変者を探さなければならない。

 時間をかけると人が死ぬ。

・ねこのあな

 予言通りに事件が起きた。

・連絡通路

 予言通りに事件が起きた。


「さて、予言が正しい事が証明された。で、改変者は僕達に会おうとしている可能性がある」

「……私は…預言者が改変者だと思う……」

「どうして?」

「……私ならメールの文面を変える……でもそうしないって事は、それが伝えたい情報……?」

 僕達に会いたいならこんな回りくどい事をしないで直接居場所を教えるはず。だがそれをしない。

「直接聞いてみればいいんじゃないか?」

「返信が禁止されてる理由も分からないし、その手もありだな」

「……もしかしたら処罰が下るかも……」

「そうなったらその時だ」

「文面はどうするんだ?」

「間違いメールって言い訳出来るやつが良いかもな」

「……見つけたぞ、とか」

「それなら最悪間違いメールで通じるかもしれないね」

「……結局博打じゃないか」

「人が死ぬ前にどっかで博打を打っとかないといけないんだ、勝つためにはね」

 僕は自分のスマホの電源を入れ、預言者から届いた連絡通路のメールに対して返信ボタンを押下する。

 ”見つけたぞ”僕はそうスマホに入力してメールを送信した。

「……」

 そのまま座して待つ。

「……だえもんさんから返信が来なかったって事は……メールは届いた」

「だえもんさんとは?友達か?」

 MAILER-DAEMON。通称、だえもんさん。メールサーバーから自動的に送られるメールで、こいつからのメールが返ってくると、何らかの理由でメールが届かなかった事を意味する。

「……すぐには、来ないね」

 その時、僕の手から離れたスマホの画面が自動的に点灯する。それが意味することはつまり――

「き、きたよ」

 送信者は預言者。メールを開こうとする手が酷く緊張する。

「開くぞ」

 砂漠の様に乾いた喉を潤す為に生唾をゴクリと飲み込み、送られてきたメールに触れた。


正解だ。

助けて欲しい。


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