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秋葉原、アキバとも呼ばれるこの地は、古くは闇市として発展し、高度経済成長と共に電子機器やソフトウェアを多く街へと変貌。その後、音楽を中心とした発展を経て、電子ゲームブームが到来する。
電子ゲームブームが本格化すると、仮想空間、所謂二次元の世界を趣味とするオタクの街へと変貌していった。
そして僕達3人が向かっているのは、この進化の街秋葉原で今尚古き良き電子機器、ジャンクパーツを扱いつつも、進化する街に必死に食らいついていこうとする秋葉原の通路だった。
「雲ひとつ無いな」
「あぁ、予言通りって事だね」
眩しいって事は灼熱の太陽を阻害する物がないということだ。明日の天気ぐらいは毎回予言してくれるとありがたいんだけど。
「じゃ、所定の位置に」
「がってん……」
僕は電気街口から見て右側、UTXビルが居を構える方面から連絡通路を監視する。
葵はレディ館側、華は大通りの高架下でこの連絡通路を突き抜ける通路を視界に収める。こうしておけば華は右へ、左へ、この連絡通路を見渡す事ができる。
そうして20分程経過した後、約束の時間が訪れる。僕はインカムで2人に穏やかに話しかけた。
「来たよ、太陽だ」
ゆっくりと登る太陽が連絡通路を真っ直ぐ視界に捉え、この小さな通路を光が覆い尽くす。
僕は太陽の光に導かれるように連絡通路へゆっくりと向かった。
「葵、どう?」
「……まだ動きはない」
告げられた予言の内の一つ、人々は何かを見つめている。つまり僕達は人間を監視すれば自ずと何かを見つけることができる。
「華」
「何かが――」
「華?」
「レディ館だ! みんなレディ館の方に向かっている!」
「分かった、すぐに向かう。葵! 見逃すなよ」
僕はレディ館への最短通路、つまりこの連絡通路を急いで抜けようと足を跳ねさせる。連絡通路で店番をしていた人たちは既に連絡通路を抜け、レディ館で行われている何かを見ている用だった。この無人の連絡通路の中央、T字路となっている地点へ差し掛かった時、僕の左ポケットに突っ込んだ携帯がバイブレーションしていることに気づいた。
「来たか――」
非通知。僕は携帯を取り出し、改変者からの着信に応答した。
「天界 傑、調子はどうだい?」
「また会ったな、改変者」
無人の連絡通路で僕は改変者と対峙する。と言っても、電話越しではあるが。これはチャンスだ。何か改変者の居場所に関わる情報を引き出さなければならない。
「改変者か……悪くないな」
「お前はゲームをしようと言ったな、僕がお前を探し出すゲームを」
「あぁ、そうだ。急がなければ人が死ぬ残酷なゲームだ」
「いくらなんでも一方的だとは思わないか?」
「ほう、この状況で取引を持ちかけると、面白い、聞こうか」
「ミニゲームだ、ミニゲームをしよう。お互いに1つずつ質問をする、それだけの簡単なゲームだ」
「ルールは?」
「必ず本当の事を言わなければならない」
「なるほど、証明のしようがないこの状況で必ず本当の事を言わなければならないというルールか、いいだろう」
必ず本当の事を言わなければならない。そんなルールを提示したって改変者が本当の事を言うとは思えない。だが……。
「改変者、先行を譲ってやる。なんでも聞いてくれ」
「天界 傑、君は私にどこまで近づいた?これが私の質問だ」
僕が改変者の居場所をどこまで絞ったか。答えは――
「すぐ近くにいるよ、お前と直接会うのが楽しみだ」
嘘だ。僕は改変者の居場所に繋がる何かをまだなにも手に入れていない。
僕は連絡通路に鎮座する監視カメラに向かって”してやったり”と舌を少し出した。
「――面白い冗談だな。さて、約束通り君の質問に答えよう。そして、真実を話そう」
面白い冗談、か。さぁ次は僕の手番だ。
「お前は今何処にいる?」
「おや、すぐ近くにいるのでは無かったのかね? さて、私の居場所だが……どこにでもいる、そして、どこにもいない」
「そうか、それは探すのに苦労しそうだな」
「今回のような簡単なゲームではつまらないだろう? 命が掛かっているほうが面白い。おっと安心してくれ、今回は誰も死んでいない」
そう言い残して改変者は通話を切断した。
「おい傑、何があった」
「改変者と少し話をしていた」
この時点で言えるのはここまでだ。
「やはりか……」
「それで、そっちは?」
「あぁくだらない事件だったよ、何者かにレディ館の大型モニターがハッキングされていた。エロビデオが流れていた」
「……僕も見に行けば良かったよ」
「……それ以外は何も起きなかった」
なるほど……だが、お陰で改変者の居場所に少し近づいたよ。
「とりあえず事務所に戻ろう」
僕は密かに2人にウィンクをしてその場を後にした。