罪の在処
遠野の外れにある集落から戻り、緊張が解れた俺達の夕食は当然宴会形式になる。
近衛社長の隣を玲子に譲り、その隣に座った八重は玲子ちゃんサービスに全力を尽くす。
近衛社長の反対側の隣には葛葉が座り、その隣は当然倉林、そして玉藻が座って俺はその隣。
お疲れ様の一言の後、取り敢えず熱燗をいっぱい飲んだ。気が緩んだところで、葛葉が何やら深刻な面持ちで皆に明かさなければならないことがあると言った。
「この国には白狐という神に近い狐の一族がいて、人々の平和と幸福を守ってます。
因みにこの白狐というのは情が深く、人間とも交配が可能で、昔は良い女房と例えられ金の草鞋を履いてでも探せと言われてました」
そこから暫く白狐を嫁に貰うと如何にラッキーかにつき延々と葛葉の講義がはじまり、それを八重と玉藻は『うん、うん』と頷きながら聞いていた。
葛葉がしっかと皆を見据えて宣言する。
「驚かないでね。私たちこそが、その良妻賢母の名をほしいままにする独身の白狐なの」
一瞬、静寂が訪れる中、近衛社長が恐る恐る聞いた。
「・・・・、で?」
「まあ、信じられないのも無理ないかもしれないけど、本当のことなのよ」
葛葉がカミングアウトした理由がわからん。というか玉藻まで自分が妖狐であることがバレていなかったと思っていたようだ。俺はイラッとしながら玉藻に聞く。
「お前、まさかあれだけのことしておきながら、妖狐だとバレていないとでも思っていたのか?」
玉藻が脂汗を流しながら目を逸らす。
近衛社長もイラッとしながら発言した。
「この際、白狐が良妻賢母とかスルーして本題に入りましょう。何をすればいいんです?」
「ええ、勿論祝言の日取りはこちらで決めても・・・」
倉林が自棄になって突っ込む。
「そこ、スルーで。他に大事な話があるんじゃないですか?」
葛葉が渋々祝言の話から離れ、子供達の失踪事件に先程の村が関係している可能性が高いと説明し始めた。
「村は古いしきたりが残っていて、妖狐の管轄から外れた地域にあります。何か強力な呪詛を感じますが、正体を把握できません」
『どうせ信じていただけないでしょうが』素振りで目を閉じて首を振る葛葉にイラっとさせられるが、取り敢えずここもスルーで話を聞こう。
「村内のホテルに宿泊して調べたいのです。
しかし、かなり危険な調査になりそうですので、私たちが妖狐であることを隠していては無事で済まないかもしれません。
万一の時、我々が正体を明かしても、皆さんが取り乱すことのないようにしたいのです」
「わかった。で、明日行けばいいのか?」
面倒になってあっさりと話を進めようとする俺に驚き、葛葉が言った。
「受け入れていただけるんですか?なら、まず祝言の日取りを・・・」
「それはないから」
倉林がむきになって却下する。話が進まないからと八重が引き継いで説明した。
◇
翌朝、地図と昨日の走行距離から割り出した地名で、観光協会に宿の有無を問い合わせる。
それらしい観光ホテルに2泊の予約を入れた。観光協会の若い男の職員が、訛りながらも不器用に心配する。
「あのぅ~、この観光ホテル~、周りに何も観光するところないんですけど~、良がったですかぁ?」
普通なら当然よくないんだが、予約を入れさせてカードの番号まで聞き出した後でそんなことを言うのは、東北人の強かさである。
訛りを馬鹿にしていると痛い目に遭わされる。
「すみません。この地域の文化を調査しにきた学者さんと同行してるんですけど、何か地域の風習とか、祭りの予定とか、あったら教えて下さいませんか?」
「まずは東京から来た人っ言うとねぇ。地元の祭りは見せるもんじゃないだわ。言っても見せてはもらえんかもしれんねぇ」
「そりゃあるさねぇ。あんまり無理言うと嫌われるだけだろうから、まずは良い知り合いになんなきゃねぇ」
少し相手のリズムに合わせたら、好感をもってもらえたようだが、確定的な情報は得られない。ただ、近々何らかの祭りがあるような口ぶりだった。
ハイ・エースが山間の村に近付くと、老婆がひとりでトンネルをくぐって出てくる。徘徊老人かと思い、止めようかと思ったが、直ぐに山道に入ってしまう。
仕方ないのでそのまま里に向かい、予約した観光ホテルについた。宿の主人は中年の男で、葛葉たちの身体を嫌らしく見回す。まあ、田舎の観光ホテルなんかじゃ良くあることだ。
夕食が出てくると楠葉が素早く睡眠薬の入っている皿を示した。小声で話す。
「どうする。まさかいきなり睡眠薬とはな。飲んだ振りして寝てみるか?」
近衛社長が皆の顔を見回して意見を求める。相手が何人かわからないのでは危険すぎる。犯人が精々一人の推理小説ならば、その手も有りかと思うが・・・。
ふと、窓の外を覗うとアウトドア用ヘッドライトを装備した男達が集まってきていた。手には山刀とか持ってたりする。まずい。
男達の中心に中年の女が巫女のような姿をして立っている。地元の守護神に仕える司祭かなにかか?処女の巫女って年齢じゃなかろう。倉林が呟く。
「『四六の蝦蟇』の眷属か・・・」
「ありゃりゃ、本当に複数相手になっちゃった。こりゃ、拙いんでね?」
近衛が余裕をかまそうと、オヤジっぽくお道化た調子で言ったが、オヤジギャグと考えても切れが無さすぎる。全員の顔が強張った。
駐車スペースに停めたハイ・エースは、窓から見る限り無事だ。これだけ多くの人数を相手に戦うのは無謀だ。
何とかハイ・エースに辿り着き、邪魔する奴らは轢いてやるしかない。
蝦蟇の眷属なら車に轢かれるのは得意だろう。筑波じゃ結構山道で蝦蟇が車に轢かれていた。
敵の数を減らしてからじゃなきゃ話にならないという俺の意見に皆も同意する。
部屋の入り口が土間になっており、部屋までは土足で歩く和洋折衷のホテルだったから靴は心配ない。全員畳の上で靴を履き、脱出の準備を整える。
更に万一の際の証拠としてビデオを回しながら催眠薬入りの料理をビニール袋に入れてキープ。
しかし、改めて窓の外に集まってきた村民の数を見ると、どうにも勝てる気になれない。
「玉藻、妖狐の力を全開にして、一度に何人まで相手できる?」
見ると玉藻は蒼くなってガタガタ震えていた。
「何人でも大丈夫だけど、あれは無理。・・・猟師、怖い」
玉藻の指さす先には猟銃を構えた爺がいた。はっと振り返ると、葛葉も八重も頭を抱えて涙目になっていた。
確か葛葉も八重も猟師に追われているところを人間の男に救われて情を交わしたんだったか・・・。玉藻に至っては、犬追物で追い回されて散々な目にあっている。
トラウマになっていてもおかしくないし、そもそも妖狐にとって猟師が特殊な呪術的存在なのかもしれない。
葛葉たちが戦力にならなくなったと知って、近衛社長も倉林も顔が蒼ざめた。
二人とも結構スポーツとか得意そうだが、田舎で林業やら猟師やらやってる奴らと喧嘩したって勝ち目はない。
俺達は所詮、もやしのようなシティ・ボーイなんだから。
既に戦闘前にスピリットが萎えてしまった。最悪だ。もう生きては帰れぬかもしれぬ。そう思った時、俺の頭に輝くようなインスピレーションが駆け抜ける。
おれは玉藻の肩をしっかり掴み真剣な目で見つめる。
「玉藻、年寄りが何を血迷ってと思うかもしれない。だが、これで最後になるかもしれないから聞いてくれ。
俺はお前に惚れていた。道は俺が命に懸けて切り開く、お前は決して後ろを振り返らずに逃げるんだ。
幸せになってくれ。いいな?」
玉藻の肩を離すと、何を血迷ったことを言ってるんだという顔をする近衛社長と倉林の首を抱え込むようにして耳元に囁いた。
(リバース・フラグだ)
近衛社長と倉林がハッと我に返る。まずは心得たとばかりに近衛社長が八重の手を握る。
「八重さん。いつも玲子に優しくしてくれてありがとう。これでお別れになるかもしれない。
誰か良い人を見付けて幸せになって下さい。いつか生まれ変わったら、あなたと夫婦になりたい」
倉林は一瞬躊躇した。俺は倉林の耳元で最後の一押しをする。
(妖狐だと思うな。ポケット・モンスターだ。お前は『レア・モン』ゲットのチャンスを得たんだ)
倉林は静かに頷き、葛葉さんを抱きしめた。
「先に死んであなたの悲しい思い出になることを恐れていた。
誰にも思い出されず静かに旅立った方が良いと思っていた。でも、もう気持ちを押さえられない。
葛葉さん、俺が死んだ後は、俺を忘れてくれ。
ただ、今の俺があなたを誰よりも愛していることだけを、今のあなたに知って欲しい。早く逃げて」
上出来だ、倉林。三人ともリバース・フラグが見事立った。
玉藻が悲しい遠吠えのように真言の籠った鳴き声を上げた。狐火が飛び交い、雷鳴が轟く。
八重が続いて鳴き声を上げると、ひと際大きな狐火が天空高く上がり、四方に飛び散っていく。
最後に葛葉が鳴き声を上げた。冗談きつい。狼の遠吠えの方がよっぽど可愛らしいと思えるような、狩りの時が訪れたことを眷属に伝える禍々しい宣戦布告。
・・・、やり過ぎた。
いや、俺も肉体強化程度の魔法はかけてもらえるんじゃないかと期待していたが、もはや俺達は出番すらなかった。
逃げ惑う蝦蟇の眷属たち。やがて野孤達が筑波山の『四六の蝦蟇』縛り上げて到着する。
盆地を仕切る蝦蟇は既に捕縛済みだ。親分の『四六の蝦蟇』まで捕まったのを見て、小便を漏らしながら恐怖で泣きわめいていた。
野孤が玉藻に報告する。
(玉藻の姉さん、来がけに筑波山に寄って組長の柄押さえてきやした。姉さんの良い人にふざけた真似したそうで。一族郎党皆殺しってことでよろしいっすか?)
四六の蝦蟇がそれを聞いて慌てる。
(待ってくれ、俺は何のことか知らねぇ。本当だ!)
しかし、玉藻の怒りは収まらない。
『どこの馬鹿かと思えばあんただったとはねぇ』
玉藻の回し蹴りが四六の蝦蟇の横面に炸裂した。それを見た葛葉が言う。
『全殺しはダメよ、玉藻ちゃん。半殺しにしておいてね』
命だけは助けてもらえるのかと、バッタのように頭を下げる四六の蝦蟇に、葛葉は冷たい声で言った。
『あたし達の分が無くなっちゃうでしょ?ちゃんと八重ちゃんとも仲良く分けて殺さないと・・・』
蝦蟇が慌てて言い足す。
(違うて、葛葉はん、玉藻はん。誤解やて。ほんま、ワシあんたらのファンなんやで。ワシがあんたらの敵に回るわけないやないの?)
終わったな。葛葉も玉藻の平安時代の関西人だ。
関東人は関西人に親しみの情を示すために下手な関西弁を使うことがある。しかし、関西人の友人によれば、関西人としてはこれが一番腹立つらしい。
(なぁあ、玉藻はん。ワテ、玉藻はんに嫌われたらいややわぁ。ワテ、どないしよう?)
不味い。本当に蝦蟇が殺される。葛葉と玉藻の脳味噌の血管がブチッと切れる音が聞こえた。八重は関東出身だから、いまいち何が起こってるのかわからんらしい。
それから暫くは、地獄の極卒の責めも生ぬるく見える程の制裁が続いた。
俺も筑波大卒だったから、『四六の蝦蟇』をまったく知らないというわけじゃない。
哀れに思い虫の息になった『四六の蝦蟇』と子分の『蝦蟇』に事情だけは聴いてやった。
(巫女は津波で5歳になったばかりの息子を亡くしやした。三陸の沿岸の漁村に嫁に行きやして、山暮らしで育った巫女が苦労しながら授かった息子でやした)
ほんの一日だけ、内陸にある実家を訪れていた日のことだったらしい。
母と離れることを嫌がってグズる息子を姑に預け、一日だけだからと実家に帰ったところで東北大震災があったらしい。
亭主も息子も姑も嫁ぎ先の漁村もろとも津波に流されてしまった。
一刻も早く家に帰って息子を探してやりたかったが、物資の供給がままならぬ足許、帰れば逆に救助の妨げになると説得され、泣く泣く手を合わせて無事を祈ることしかできない。
そんな時にテレビで有名な女性国会議員の発言を聞いた。
『東京の人が買い占めするから物資が被災地に届かない。ガソリンも不足する』
なぜ、息子が生きるか死ぬかの時に買い占めなんかするのだ。
どんなことでもするから、今は買い占めなんかしないで欲しい。同じ子を持つ親ならなぜ気持ちをわかってくれない。
彼女の心の中に、東京人に対する不信感が芽生えるのに左程時間はかからなかった。それはやがて明確な確信に変わり、ついに怨念として彼女の心を支配する。
実家が呪いの儀式を伝える旧家であったのは偶然だ。鬼気迫る形相で呪いの儀式の仔細を伝える古文書を読み漁った。そして魂の入れ替えをする儀式を学んだ。
占いに寄れば彼女の息子の魂は鯨に転生しているという。同じ年頃の少年を拐し、子鯨の魂と入れ替えれば、彼女は息子と再び一緒に暮らせる。
試行錯誤を繰り返し、呪術で裏野ドリームランド周辺にいる幼児の思考を一時的に支配できることがわかった。
親が目を離した隙にバスや新幹線を乗り継がせて盛岡まで連れて来る。
バスの運転手も駅員も、大人の傍について歩く限り、誰も切符を確認しようとなんかしない。
大人達も幼児がひとり歩いていても、誰も面倒に巻き込まれるのを嫌がり、話し掛けようともしない。
拐した少年の魂は、儀式で暗い海を泳ぐ鯨に憑依し、さぞかし恐ろしい思いをするだろうが構いはしない。
物資が足らず、被災地が塗炭を舐める思いをしているときに、平気で買い占めとかする奴らの子供だ。
政権の無能さを誤魔化すために、当時の左翼政権がついた嘘は、同じ日本人を信じる絆を断ち切っていた。
例え憎むべき敵国人の子供でも、子供に罪はないだろう。彼女の行動は、やはり許されるべきことではない。
しかし、あの女性国会議員がテレビでありもしない『都民の物資の買い占め』をでっち上げなければ、『政権の力の限界はあるが、それでも日本人全員が被災地の救済を最優先に考えている』と言っていれば、彼女がここまでのことをしたとは思えない。
葛葉たちも話を聞いて怒りが収まったようだった。誰も怒ろうにも怒れない。
悲しい沈黙のあと、森田が蝦蟇に聞いた。
「この女の魂を救うにはどうすれば良い?」
蝦蟇が何かを言おうとするのを、玉藻の鋭い視線が止めた。
蝦蟇が口ごもっていると、淡い光が宙に浮かぶ。
東北大震災を被災した中年教師の霊だという。
全ての力を捧げて弱者を守り続けた功により、死後に土地神の地位に就いた教師の霊だと蝦蟇が紹介する。
地元の蝦蟇は教師の霊に平伏するが、その姿は野暮ったい地縛霊のようだった。
脂ぎった刈り上げの七三に無精ひげ。時代遅れが一巡して逆にオシャレにすら見える黒縁眼鏡に古ぼけたジャケット。
毛玉がたくさん浮いたセーター。ダボダボのスラックスはズボンと呼んだ方がしっくりくる・・。
(人の魂を救えるのは人だけです)
朴訥な教師が淡々と語る。
(ごめんなさい。僕には助ける力が無いんです。全部、僕の責任です)
その一言で男に責任がないことがわかる。
この国の権力者が自分達に責任がないと言い張るだけの存在であったとき、この男は全てが自分の責任であると真剣に考えていたのだろう。
森田はその言葉に心が洗われるような救いを得たように思った。
(【魂替え】の儀式が整いました。犠牲となる人がふたり必要です。
一人は【魂替え】の儀式を望むもの。儀式の犠牲者を選ぶ権限が与えられますが、外法の儀式故、魂の輪廻の輪から外れた罪人となります。
永遠に生まれ変わることは叶いません。
もう一人はこの女の身体に入る魂となるもの。現世をこの女の罪を背負って生きることになります。
誘拐は立証されませんが、十二分な冤罪で生涯自由はありません。
この女の魂は鯨の母親になり、子鯨に寄り添って生涯を終わります。そして鯨の母親の魂は、犠牲になったものの身体に入ります。
母鯨にしてもそれなりに納得しなければなりませんので、当面は裕福な生活を楽しめるような人間を選ばなければなりません)
玉藻がそれ以上は言わせんとの決意で狐火を激しく燃やす。俺はその姿に懐かしさを覚えながら静に言った。
「俺が【魂替え】の儀式を望もう。犠牲にするのはあの左翼の女性国会議員だ。遠慮なく、鯨の魂をぶち込んでやれ」
何故だかわからない。玉藻がいれば全てが救われるような気がした。この娘が何故か愛おしい。
「森田、いけない。魂の輪廻から森田が外れてしまう」
玉藻が狼狽えて必死に止めようとする。
「すまない、玉藻。俺はもう十分生きた。疲れたよ。
でも、お前と一緒になりたいってのは、結構本気だったんだぜ」
その言葉を聞いた中年教師の土地神は深々と頭を下げる。女の表情が変わり、不遜な左翼国会議員のそれになった。
「なにこれ、こんなことして許されると思ってんの?」
縛られた手足を女がばたつかせた。俺は自分の存在が消えていくのを感じ、最後に玉藻に微笑みかけ、静かに目をつぶった。
これで俺の冒険が終わる。
そういう訳にもいかなかったようだ。野孤達がいきり立つ。
(主様を失うわけにはいかんぞ)
(天界に攻め込もうぞ。ふざけた天界の役人どもを皆殺しにしてくれよう)
(おうよ。主様を失うぐらいなら、我は主様と一緒に消え去る方が良い)
玉藻が決意の籠った真言で命ずる。
『これより天界に攻め入ることに・・・』
(ちょっと、待った~~~~!!)
天帝が片手を上げながら走ってくる。
(玉藻殿、誤解があると拙いので、朕が自らやってきた。森田殿の魂をどうこうしようと天界は思っていない)
『何もしない。それだけ・・・?』
玉藻は一度怒るとブレーキの利きが悪くなる。天帝があわてて言い足す。
(勘違いしないでよ。それだけなんてあるわけないじゃない。玉藻ちゃんが森田の魂は自由にしていいおまけ付きだよ。
・・・祝言の日取りは玉藻ちゃんが勝手に決めちゃっていいんだよ)
天帝は俺の魂を玉藻に売って事態の鎮静化を目論んだらしい。なんて天帝だ。玉藻は少し緩んでもうひとつだけ条件を付けた。
『悪いんだけど、神道の結婚式じゃなくて、ハワイのチャペルで結婚式を上げたいんだよねぇ』
(もちろんだよ。今時、神道なんて古いってのは良く知ってるよ。生涯、寄り添う心意気ってのが一番大事なんだ)
おいおい、今時神道の方がお洒落なんじゃないのか?
俺の意識はそこで一旦途切れた・・・。