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思念の源泉

前回作品の背景って描写が難しいですね。話がどうしてもかったるくなります。後半以降に話が動きだすイメージです。

東北大震災の後、アジアの拠点を東京から香港やシンガポールに移す外資系企業は少なくなかった。


俺、森田健介が勤めていた外資系証券会社も東京オフィスの機能を大幅に縮小し、俺も職を失うことになった。


その日、外資系証券会社を紹介したヘッド・ハンターのジェニファーから電話があった。


ジェニファーは中国系の米国人なのだろうか。


東海岸で高校教育を受けた俺には馴染みのある発音で、何故かか彼女と話していると安心感を覚える。


多くの人材を外資系企業に紹介した実績のある彼女には口癖があった。


「男には狼と犬の二種類しかないの。あなたは狼よ」


俺を含めた彼女の見込んだ全ての狼達は、残念ながら誰も生き残らなかったようだ。


リスクも重々わかったうえで、生き残るにはこれしかないと彼女のアドバイスに従った狼達。


しかし、いざとなると覚悟の決まらない狼達が多かったようだ。


連日のように外資系企業を紹介した彼女を責め立てる電話に、彼女の精神は崩壊寸前だったのだろう。


俺が最後に彼女と会った日、彼女の顔はストレスでむくみ上がり、肌は荒れて腫れあがっていた。


涙をいっぱいに溜めたジェニファーの目は未だに忘れられない。


俺はニヤリと笑って彼女に言った。


「残念だが俺は狼じゃない。お前は騙されたようだな。俺は実は狐だ」


ジェニファーが嗚咽を漏らすのを聞かないように俺は続ける。


「しかし、人生は冒険だな。まだ、終わっちゃいない。次は狐流に生き残って見せる。まさか、お前はもう諦めたのか?」


彼女が奥歯を噛みしめるように俺を睨んだ。


「もう一度騙されても良いと思ったら、いつでも構わんから面白い話を持ってきてくれ。


俺も面白い話を用意して待ってる。俺は冒険を続けて待っている」


ジェニファーは意地でも涙を見せまいと遠くを睨んで言った。


「狼には本物と偽物の二種類しかいない。本物はあなただけだったわ」


それが最後に彼女が言った言葉だった。


俺だって泣き言を言いたかった。しかし、良い女を前にして、爺が少し見栄を張っても罰は当たるまい。



しばらく無職の状態が続いたが、外資系証券会社の社員には珍しく、私鉄沿線にある裏野ハイツという安アパートに住んでいたおかげで、直ちに生活に窮することはなかった。


そんな時に俺の住む安アパート、『裏野ハイツ』を斡旋する不動産屋の老婆に紹介されたのが近衛不動産超常現象検証機関の仕事だった。


不動産に纏わる超常現象の検証を行い、単なる噂であるなら『超常現象無し』お墨付きを与える。逆に問題あった場合は問題解決、即ち除霊までを引き受ける。そんな胡散臭い仕事だ。


近衛不動産超常現象検証機関は私鉄沿線の駅前に広がる小さな繁華街の奥まったところにあるマンションの一室を利用して営業していた。


都合が良いことに俺の住む浦野ハイツの最寄駅の駅前だから、おれは通勤に電車を使う必要がない。


このマンションは近衛不動産超常現象検証機関社長である近衛洋介の父親の個人資産であり、近衛洋介はマンションひとつを親父に貰っちゃうようなお坊ちゃま経営者なのである。


住人は親の脛をかじる中年男がひとりきりと考えれば、そのような貧富の差がこの日本にあることに納得はいかないものの、状況を理解することは容易い。


その脛かじり坊ちゃん経営者に雇われているのが俺、森田健介なんだから、考えてみると泣きたくなる。外資系証券会社で我が世の春を謳歌していた日々からは想像できない。


社員は近衛洋介社長と研究員の安西玲子がいるだけ。隣のビルの一階で喫茶店を経営する霊能力者、倉林信也は社員ではなく外部コンサルタントの位置付けらしい。


因みに俺は数理分析主任とか言われているが、昨年社長が大金をはたいて購入した『瑕疵物件事象発生状況データベースの分析結果レポート』の解説を担当した以降は、もっぱら総務という名の雑用を担当している。


それでも近衛不動産超常現象検証機関の雰囲気は嫌いになれない。


会社の付帯設備のような喫茶店、『アルトカィール』の賄いは文句ない水準であるし、研究員の安西玲子は妙齢の美人である。


ご時勢を考えれば、リストラされた40過ぎの男が文句を言っては罰が当たるような職場だ。


朝一番に出勤しても、事務所であるマンション内に誰かがいることはない。皆、隣のマンションにある喫茶店『アルトカイール』で朝食をとっているのだろう。


客に会う予定があるときは、ここでスーツに着替えさせてもらうこともあるのだが、今日は特に面談予定はない。


俺はナップサックを自席の前に置き、ポロシャツとジーンズのラフな格好のまま『アルトカィール』に向かった。


アルトカィールのドアを開けると、骨董品屋から安値で買いたたいたような鐘が雑な音を響かせる。マスターの倉林が片方の眉を少し吊り上げるような横目でこちらを見てゆっくりと頷く。


日本人離れした長身に濠の深い顔。ファッションのように見える無精ひげ。少し汚れたように見えるが不思議と不潔な印象を与えない白いシャツ。絵になる中年オヤジだ。


店の奥では、近衛社長と安西玲子がモーニング・セットをかき込みながら、何やらiPadで新聞記事を読んでいた。


社長はサーファーのように茶色の髪を真ん中で分けて自然に流している。カジュアルなTシャツに見えるが、肌が透けては見えない白地の生地。着古した穴が開いたように見えるが、恐らく最初から穴が開いているものだ。


雑に履いているサンダルは革製。こちらも意外と値段が高かったりするのだろう。怠惰な男を装っているが腕も太ももも結構発達している。日に焼けているところを見ると、何か屋外系のスポーツをやっているのは間違いない。


安西玲子は少し日本人離れした顔立ちをしており、170cmの長身とC-cup程度の胸が上手くバランスのとれたプロポーションをしている野性的な美人だ。


小麦色の肌を強調するような白のブラウスと、濃い色のスーツを好んできている。ひとり静かに立っていれば話しかけ辛い美しい顔立ちだが、近衛社長と一緒にいるときはお転婆な少女のように見えることもある。


しかし、この一年で随分大人の雰囲気になったものだ。去年、初めて出会ったときは、まだ10代の小娘にも見える程だったのだが。


俺は取り敢えず挨拶する。


「おはようございます。何か新しい分析対象でもありますか?」


近衛社長が軽薄に応じる。


「おはよう森田ちゃん。仕事もあるけど、その前にこの記事どう思う?」


iPadをヒラヒラ振りながら近衛が振り返る。


良く見ると三陸の海岸に鯨の子供が定期的に打ち上げられたことに関する続報として、何か大規模な環境変化が起こっていることを示唆する記事が掲載されていた。


「鯨が浜に打ち上げられたってことですか?この手の話は環境団体とかにカブレた記者が偏った報道しますからねぇ。実際に環境変化が起こっていることが前提みたいで、なんか興味持てないんですよねぇ」


「まぁ、環境団体が問題でっち上げている可能性もあるけど、霊的な現象であることも否定できないんだな。鯨の子供の魂が抜け出るか、逆に憑依されたりなんかして、鯨の本能が働かなくなった可能性もある」


俺用のモーニング・セットの準備をしながらマスターの倉林が横から思案気なコメントをしてきたが、俺としてはビジネスの方が気になっていた。


二三ヶ月前から案件受注が落ち込んでいる。このままでは近衛不動産超常現象検証機関の明日はない。


「だとしたらどうするんですか?環境団体が依頼してくるとは考えられないし、農林水産省から依頼がくるってわけでもないでしょう。現象としては興味ある話ですが、ビジネスになりそうもありませんよねぇ」


それを聞いた玲子がキッと睨んで言った。


「お金が全てじゃないんです。森田さんは、鯨の赤ちゃん可哀想だって思わないんですか?


まぁ、鯨の赤ちゃんじゃ、お母さんが出演しているAV見せて除霊できるとは思えませんから、森田さんの琴線には触れないかもしれませけど」


玲子は昨年のある事件以来、ちょっとでも金銭欲や性欲を匂わせると、途端にとげとげしい言葉を投げつけてくる。


あの時、俺は子供の霊に、死者の世界に連れていかれそうになった。


霊能力のない俺は追い詰められたが、逆転の発想で、子供の霊に現世への執着を思い起こさせ、逆にこちらの世界に引き込もうとしたのだが・・・。


やり方が下品だったとは思う。アダルト・ビデオを少年の霊に見せて現世への執着を強めさせるなんて。


しかも、俺が選んだビデオは、偶々その子の母親が本当に出演しているビデオであったため、図らずとも幽霊親子を酷く傷つけて除霊することになってしまったのだ。


決して望んだ結果ではなかったのだが、若い女性からの信頼を一気に失わせるに十分な事件だった。しかし、霊能力とか一切ない俺に、あの時いったい何ができたというのか。


下手に少年の悩みや悲しみを聞いたり、あるいは理を諭したりしてれば、『頼りになるオジサン』ということで、漏れなく死者の世界に連れて行かれてただろう。


少年の霊に『怖いからオジサンも一緒に来てほしい』とか、ましてや少年の母親の霊に『息子を側にいてやってほしい』とか思われるわけにはいかなかったのだ。


鬼畜に徹する以外に生き残る方法はなかった。俺は倉林を涙目で見ながら、玲子による理不尽な評価に抗議した。


「ひどいよ。僕は会社の経営状況を心配しているだけなのに。あの事件は不幸な事故だったのに。あれから玲子さんのこと随分助けたのに・・・」


倉林は卑怯にも聞こえないふりをして目をそらし、モーニング・セットを俺の前のカウンターにさっと差し出した。


まぁ、こういう時の女に下手に弁護すると、そいつと同類と見做されることは結構多いから、倉林の不義理な態度を一方的に責めることは出来ないのだが。


近衛社長が調子よく、まぁまぁと宥めながら話題を変える。


「そのビジネスの話だけどさぁ。みんな、裏野ドリームランドって聞いたことある?」


倉林がサイフォンを片手で持ちながら、遠くを見るような目でぼそぼそと言う。


「閉鎖された遊園地だろ?子供がいなくなったとかの噂があって人気が落ちたとか・・・」


「事実は噂とは若干異なるんだ。子供たちは遊園地で行方不明になったんじゃない。遊園地から帰った後に行方不明になるんだ。そして1カ月程で発見される。子供は行方不明になっていた間のことを覚えていない。


まぁ、昔から伝わる神隠しと同じだね。ただ、帰ってきた子供たちの中に、『暗い海が怖い』と怯えている子がいるらしい。」


「『いかがわしいビデオが怖い』と怯えている子供はいませんか?そういう子供がいたら、犯人は森田さんかもしれません」


俺は玲子の理不尽な態度に再び涙目になる。


「玲子ちゃん、いい加減に森田ちゃんのこと許してあげてよ。去年の話じゃないか。森田ちゃんにはデータの分析と現地調査お願いしなきゃならないんだから。


遊園地跡地を売却するにあたって、売り主と買い主の双方から要請があってさ」


近衛社長が俺を庇うように言うが、何故俺が許しを乞わなければならないのかわからない。しかし、理不尽ではあっても、こういう時の女に何を言っても無理だということは、長い人生の中で学んでいる。


俺はモーニング・セットを慌ててかき込み、事務所に逃げ帰るように戻り社長の言ったデータとやらを確認した。


確かに遊園地内での施設を訪れた順番とか、いなくなった時期、期間、発見場所とかが一覧表でまとめられている『データ』があったが、こんなに少ないサンプルで統計分析しても仕方がない。


保護者へのインタビューとか、警察発表のまとめファイルとかがあった。社内議事録形式でまとめられているので、不動産屋がまとめたものらしい。又、遊園地の財務情報なんかもある。


調べてみると遊園地の経営状況は10年前から悪化の一途を辿っており、子供達が行方不明になった前後でも特に無理な投資をした形跡はない。ただ、噂が流れた後では、当然のことながら入園者が減り、赤字は自然に膨れ上がったようだ。


警察からの公式発表では、親が目を離した隙に子供たちが迷子になっただけで、記憶が失われているもののケガとかは見当たらない。


1週間もすると盛岡などの東北の周辺で保護される。岩手県警や秋田県警も周辺の防犯カメラを調べたりしたらしいが、手掛かりとなるような映像はなかったという。


ただ、面白いのはミラーハウスを出てから我が子が別人のようになったという母親が二人ほどいた。この辺りが狙いどころなのかもしれない。


社長も玲子もまだアルトカイールにいるらしい。時計を見るといつの間にか昼時になっている。


会社の電話はアルトカイールにも転送されるようで、社長も玲子も一日中アルトカイールに入り浸っていることもある。俺はiPadを持って喫茶店に向かった。


再び鐘が鳴る喫茶店のドアを開ける。社長が慌てて顔をあげる。


「森田ちゃん、今事務所に行こうと思ったんだけど・・・。あれっ、もう昼時じゃないか。昼食を食べながら打ち合わせにしないか?」


なんか勉強部屋で遊んでいるところを見つかった子供のような態度だ。気にしても仕方あるまい。


「社長の言ってたデータとか見たんですけどね。統計とかでどうこう出来るものじゃなさそうだから、インタビューの内容とか読んでみたんですけど、ミラーハウスから出てから子供の様子がおかしくたったって話がありましたが・・・」


俺はカウンター席に座りiPadでインタビュー・ファイルを開いて見せた。倉林がぼそぼそと答える。


「そりゃ、あの遊園地の噂話にもあったなぁ。ミラーハウスから出たら別人のようになっちゃうとか・・・」


「倉林さんに遊園地に同行してもらうとかできますか?データからは何もわかりそうもないから、まずは遊園地を霊能者に見てもらうのも一案かと思います」


「別に喫茶店締めちゃっていいならいくぞ」


喫茶店を締められると寛ぐ場所がなくなる。社長も玲子もそわそわしている。玲子思い付いたように言った。


「わ、わたしも行っても良いかなぁ・・・。後学のために経験しておいた方が良いと思うんですよねぇ」


慌てて近衛社長も言い添える。


「全員で行こう。全員で知識を共有するんだ。その方が絶対に良い」


結局ランチを食べ終わったら直ぐに出発することになった。玲子と倉林がTシャツとジーンズに着替える間、俺は近衛不動産超常現象検証機関の社用車である軽四輪を近くの駐車場に取りに行った。


助手席には倉林が座り、社長は後部座席で玲子にくっついて幸せそうである。きつい軽四輪もこれなら悪くないと思っている様子だ。



寂れた遊園地というのは不気味であるが、日中でもあり怖いという程ではない。ただ、霊能者の倉林はしきりに首を傾げる。


ミラーハウスの前に来たところで倉林が手を翳してあちこちの方角を探り始めた。ミラーハウスの裏に向かって歩いていく。


「やっぱ、こっちだよなぁ。この方角なんだよなぁ」


倉林が北の方に向かって手を翳す。ミラーハウスの中じゃない。


「ミラーハウスは関係ないってことですか?」


「いや、延長線上にミラーハウスがあるから、影響を受けてるのかもしれない。外部から思念が送られてきたようなんだが、鏡だからねぇ。反射したりして増幅されたとか。う~ん、しかし遠い」


倉林が手を翳した方向は北だった。少し東よりか。スマホに地図を表示してイメージが湧くか尋ねると、感覚的には東北の辺りとか。


子供達が発見された地域と関係があるのだろうか。


場合によっては発見場所も調査した方が良いかもしれない。それを聞いて社長と玲子がソワソワし始めた。


まぁ、ここでは外部から影響があったらしいことしかわからない。まずはアルトカイールに戻ることになった。


帰りの車中で本屋の看板を見つけて玲子が騒ぎ出す。ちょっとだけ寄りたいと言って、玲子は山のように『東北旅行』の案内本を買い込んできた。


更に社長がBMWのディーラの前で騒ぎ出し、山のように四駆のパンフレットをもらって帰ってきた。


「社長、何考えてるんですか。そんなの買ったら麗子さんに殺されます」


麗子さんは近衛社長の実姉で近衛グループの経営に関わりつつ社長のスポンサーになっている強烈なオバサンだ。


俺は麗子さんに社長の暴走を許さないよう、きつく命ぜられている。近衛社長が子供のような屁理屈をこね始めた。


「遊びで買うんじゃないぞ。社員の皆を東北まで連れて行くのに軽四輪じゃ危険すぎる。皆の安全に責任を持つ社長として適切な投資を検討してるんだ。嘘じゃない。本当だ!!」


そんな子供みたいな言い訳通用するわけがない。倉林が顔を引きつらせながら近衛社長を説得する。


「洋介、おちつけ。正しいか間違っているかじゃなく、麗子さんが理解してくれるかどうかが大切なポイントだ。森田さんが言う通り、あまり良い動きだとは思えんぞ」


「麗子姉ちゃん・・・、くっ、くそっ、ダメだ。麗子姉ちゃんには秘密にするんだ!森田君、きみなら出来るはずだ!!」


何が出来るというのか?支払いはどうせ麗子さんの目に留まる。兎に角、アルトカイールに戻って説得を続けなければならない。


これはどうにも面倒なことになったと思っていると、突然近衛社長のスマホが鳴った。


『はい。あっ、葛西のおばさん。はい、話を聞きたいとか学者が?別に構いませんが・・・、若い女性?はい。じゃあ明日1時頃にでもアルトカイールに来てもらえば・・』


電話を切ると社長は珍しく真剣な顔になり、葛西婆さんの店の近くにおろせと言った。


店の1ブロック先に降ろすと、『先にアルトカイールで待っててくれ』と言い残し、忍者のように素早く動いて葛西婆さんの店先を伺う。


言われた通り俺たちがアルトカイールに戻り一休みしていると、社長が息を切らしながら飛び込んできた。どうやら葛西婆さんの店から走ってきたみたいだ。


「明日、俺たちの仕事に興味を持った学者が来る。1時にアルトカイールに来ることになっている」


そう言うと社長はスマホの画面を倉林に見せた。倉林が目を丸くして冷蔵庫のストックを確認しはじめる。画面には不動産屋の婆さんと話し込む3人の美女が写っていた。


玲子が気付けば冷たい視線に包まれることになるだろうが、生憎玲子は東北の観光地調査に没頭している。子供達が発見された場所に近いレストランに付箋を付けるのに忙しい。


東北旅行ガイドに夢中になる玲子を見て、近衛がいきなり思い付いたとばかりに発言する。


「そうだ東北調査には学者に同行を要請するのも一案だ。情報が少ない足許、様々な観点から物事を分析する切り口を持つことが肝要と思う。


そうなるとBMWの四駆一台では足りないな。そうだ、キャンピングカーなら大丈夫だ」


もはや何を考えているか想像することすら馬鹿らしいが、近衛社長はインターネット上でキャンピングカーを見ながら、これって普通免許で動かせるのかとか悩んでいる。そんなの玲子が許しても麗子が絶対に許さない。


「社長、今日の所は一旦お休みにして、頭を冷やしてから明日考えることにしませんか?」


「そうだな、明日は9時から10時の間に各自意見を出して、10時から11時にプレゼン方法をまとめるってことにしよう。もう5時だから一旦解散だ」


何故か全員気合が入っている。まぁ、取り敢えず明日のことは明日考えよう。そう思った俺は退社して一旦家に帰ることにした。


なんか近衛社長が暴走し始めた。

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