おまけ、ゲームをする3
ほんのちょっとささやかな残酷描写が入ります。
ご注意下さい。
『冒険者ギルドで難しい危険な依頼をそうとは知らずうっかり受けちゃった私は、他の冒険者さん達と魔の廃村っていう穢されて寂れてしまった村に行ったの。そこでの戦闘はまさに死闘で、私は逃げ回る事しかできなかったわ。そのせいで他の冒険者さん達には怒られちゃったけど、最後に村の穢れを浄化した事でギリギリ役には立てたの! その後領主様ともお会いして、あの村に住む権利を得たの! さあ、今日は何をしようかな?』
「ああ、やっぱり前回のあらすじから入るんだ。……うぅ、この選択肢は失敗だったよねぇ。まあそのおかげで現実では安全に廃村を浄化する行程を取れて、無事に村に住む権利も手に入れたけど……。……さて、とりあえず、ソラキャラ動かして村に行ってみよう」
特殊能力を発動させた私はゲームを操作し、ソラキャラを領主館から街の門へと移動させ、更にそこから廃村へと移動させた。
浄化をしたおかげか、廃村に着いても画面は暗くならず、明るいままで周囲を見通しやすい。
けれど。
「う~ん……壊れた家とか柵とか、枯れた木とかばっかり…………はあ、寂しい場所。……あっ? あれ、人がいる! "話しかける"、と!」
『こんにちは!』
『おう、こんにちは! 嬢ちゃんが領主様の話にあった、ここを浄化したって子だな! すげえじゃねぇか嬢ちゃん! 大手柄だぜ!』
『えへへ、ありがとうございます』
『嬢ちゃん、ここに住むんだろ? 待ってな、俺達が立派な家を建ててやるからな! それまではどっか近くの街か村で過ごしててくれよ。まあ、俺達職人の仮設住宅になるテントで一緒に寝泊まりして村にいてもいいけどよ! 嬢ちゃんに任せらぁ!』
「ああ、なるほど。この人は家を建ててくれる職人さんなんだ……。そっかぁ。あ、選択肢だ」
"何をして過ごす?"
・ヴィナートギルへ行く
・ラッセルフォームへ行く
・村に残る
「う~ん…………ん~~? ……村に残ると、どうなるんだろう? せっかく来たんだし……『村に残る』、と」
『私、村に残ります! 何かお手伝いする事、ありますか?』
『おっ、そうかい? なら手伝って貰うか! 今、古い家々とか柵とかを撤去してるんだよ。まずはそこからってな! だから嬢ちゃんは、解体して出たそれらの残骸を、廃材置き場に運んでくれねぇか。ついでに歩き回って、嬢ちゃんの家を建てたい場所も探すといいぜ!』
『あっ、はい、わかりました! お手伝い、頑張ります!』
「あ、会話終わった。廃材運びをすればいいんだね。えっと……あ、これかな? ん、"運ぶ"が出た。これだね。で、廃材置き場ってどこかな……」
私はソラキャラを動かし、家の屋根や柵の前にいる職人さん達が『ギュイー』という音の後に作り出す丸太の山を、見つけた廃材置き場へと運んで行った。
丸太の山は三回運ぶと消えるが、職人さん達はそれを次々と作り出すから、運んでも運んでも終わらない。
こ、これは、大変だ。
しかも、お手伝いする事は他にもあった。
時折、職人さん達の奥さんらしき人達がソラキャラを呼び止め、食事の支度のお手伝いや食材の買い出しのお手伝いなどを求めて来るのだ。
更に、家々や柵の解体が終わると、今度は建設の為のお手伝いが始まる。
私はソラキャラを動かし、毎日毎日それらのお手伝いをひたすら頑張った。
そして気がつけば、一カ月ほどが経過していた、ある日。
テントに戻って、眠ろうとした、夜。
突然、ソラキャラの少し後ろに黒い影が出現したと思ったら、『死ネ!』という会話文が出された後、画面が一瞬真っ赤に染まり、次いで、"ゲームオーバー"の文字が、そこに大きく表示された。
「…………え、えっ? な、何……これ?? ゲーム……オーバー??」
一体何が起きたのかわからず、私はただ呆然とゲーム画面を見つめた。
どうしたらいいのかわからない。
混乱したまま眺める事数秒、やがて画面に新たな文字が表示された。
「"ゲームオーバーになってしまった貴女へ。回避の為のワンポイントアドバイス"……?」
そう書かれた文は数秒で消え、そして『これは突然の不運だったね! 次は違う行動をしてみよう!』という次の文が現れた。
更にそれも消えると、画面にまた大きく"リスタート!"と表示され……。
『あれ、私どうしたのかな? えっと……そうそう、村に住む権利を得たんだった! さあ、今日は何をしようかな?』
というソラキャラとそのセリフ文が出てきた。
背景は領主館の部屋である。
ええと……これは、領主館に泊まった日の、その翌朝に戻ったって事なのかな?
よ、良かった……バッドエンドになってもその少し前からゲーム再開できるんだ。
「じゃあ、えっと……違う行動をしなきゃいけないんだから…………とりあえず村に顔を出して職人さんに挨拶だけしてから、ヴィナートギルに行ってみる……? まだ、街を全部見てないし……うん、そうしよう」
あの突然現れた謎の黒い影が何なのかはよくわからないけれど、とりあえず違う行動を取れば大丈夫なんだろう、たぶん。
私はそう結論づけ、再びソラキャラを操作した。




