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おまけ、ゲームをする

 シンさん達からオススメの宿屋を聞いた私はそこに宿を取り、部屋へ行くと早速特殊能力を使ってみる事にした。

 『特殊能力を使うには、"特殊能力発動"って言えばいいからね』と教えてくれたシンさんに感謝しながら、口を開く。


「特殊能力、発動!」


 そう言うと、空中に淡いピンクの光が浮かび上がり、長方形に広がった。

 こ、これは……!


「3○S!」


 そこに出現したのは、まぎれもなく妹が手にしていた3D○だった。

 もっとも、大きさはこちらのほうが少し大きい気がするけど……。

 画面を覗き込めば、"箱庭ハーデンクーガ"というゲームタイトルが表示されている。

 私は早速ゲームをスタートさせた。

 すると、私そっくりのキャラクターが出てきて……。


『私はソラ・マイケ。生まれ変わった聖女様を探してた、異世界ハーデンクーガの守護神様、クーガルーゼン様が、たまたま私の境遇を知り、それを憐れんで、故意に聖女様召喚の儀に巻き込んで、このハーデンクーガにやって来たの。異世界なんて不安だけれど、クーガルーゼン様が特別な力を授けてくれたし、私頑張って幸せになる!』という台詞をガッツポーズを取りながら告げた。


「…………え?」


 こ、故意に巻き込んだ?

 クーガルーゼン様が、私の境遇を憐れんで?

 え、ステータスの"クーガルーゼンの情けを受けし者"ってじゃあ、そういう意味?

 え、え?

 と、特別な力って、何?


「……と、とりあえず、ゲームを進めてみよう……うん」


 『いい人なんだけどちょっと抜けてる王様が、善人の皮を被った狸親父な貴族に私を預けて、結果捨てられた私は、なんとかここ、ヴィナートギルの町にやって来たの。冒険者ギルドで身分証を貰って、親切な人達に助けられてお金を手に入れたわ。そして初めての宿に入ったの。さあ、これから何をしようかな?』


「ちょ、ちょっと抜けてる王様に……狸親父な貴族? え、それ、誰からの評価? まさ、か……クーガルーゼン様の王様達に対する評価とか、言わない……よね? って、あれ、画面が動かなくなった…………ここ、私が今いる部屋? 造りが一緒だ……」


 私は画面の中の部屋と今いる部屋を見比べて、全く同じ事を確認する。

 ……画面の中の私は、『これから何をしようかな』って言ってたよね?

 それで動かなくなったって事は……あ、ここから自分で動かすのかな?


「あ、動いた……!」


 キーを操作すると、その方向にキャラが動いた。

 よし、とりあえず部屋にいても仕方ないし、外に出てみようっと。

 キャラを操作し、部屋から出て、更に宿屋の外に出てみる。

 すると、画面いっぱいにパッと地図が出てきた。


「ヴィナートギルの地図? 町の地図かあ。冒険者ギルドに騎士団支部、商店街、酒場、役所、教会、広場1、広場2、住宅街、公園……。う~ん、商店街から行ってみようかな?」


 私はキャラを操作して、商店街の所へ動かし、ボタンを押した。

 画面がお店が建ち並ぶものに切り替わる。


「さて、どのお店に……ん? あれ、人が近づいてきた?」


 "シンに遭遇した!"

『ソラちゃんじゃん、こんな時間に何してるの? 夜だし、もうそろそろどの店も閉まるよ? 買い物なら明日にしな。はい、これあげるから、もう帰りなね』

 "ソラはチョコワッフルを手に入れた!"


「……シンさんにチョコワッフル貰っちゃった……」


 美味しそう。


「……う~ん、お店もう今日は終わりかぁ……じゃあ他に行こう」


 再びキャラを操作し、公園に行く。


「誰もいない……。……あれ、ベンチの横に何かある」


 "ソラは鞄を発見した! 開けますか?"


「忘れ物かな? はい、と」


 "中には五百万エネが入っていた! ソラは五百万エネが入った鞄を手に入れた!"


「五百万エネって……えっ、つまり五百万円だよね!? わわわっ、"手に入れた!"じゃないよ! 持ち主に届けなきゃ!」


 ああでも、どうしたらいいんだろう?

 公園には誰もいないし……。


「そうだ! こういう時はお巡りさんに……えっと、騎士様だ! 騎士団支部に行こう!」


 キャラを操作し、騎士団支部に行く。

 すると入り口近くにいた騎士様らしき人が近づいてくる。


『どうしたんだいお嬢ちゃん? 迷子かな?』


「ま、迷子……。……えっと、鞄を渡すのってどうしたらいいんだろう?」


 私は困って画面を隅から隅まで見回した。

 すると、右端のほうに"メニュー"と書かれたアイコンがある事に気づく。

 そのすぐ下にはボタンのマーク。

 私はそのマークと同じボタンを押してみた。

 すると、"持ち物"、"魔法"、"図鑑"という文字がそこに現れる。


「持ち物! これに鞄あるかな? ……うん、あった! これを選んでっと……。……"渡す"、"置く"、"投げる"、"捨てる"……? ……渡す、で!」


 "渡す"を選び、ボタンを押す。

『あの、これ、公園で見つけました! 忘れ物だと思います、届けに来ました!』

『おや、そうだったのかい。偉いなお嬢ちゃん、ありがとう! じゃあこれはおじさんが確かに預かったからな! 気をつけて帰るんだぞ?』

『はい! じゃあ、失礼します!』

『ああっ、私の鞄! それです、私がなくした鞄は! 店の売り上げ、五百万エネが入ってるはずです!』


「え?」


 鞄を無事に騎士様に渡すと、画面の奥で別の騎士様と話していた男性が素早い動きで近づいて来た。


『ああ、君が見つけてくれたんだね! 役所に売り上げの一部を納めに行く途中でなくしてしまって途方に暮れてたんだ! ありがとう! ありがとう!!』

『いえ、どういたしまして! 持ち主さんが見つかって良かったです!』


「わあ……これにて一件落着? よし、じゃあ次は広場に行ってみよう……ん?」


 再びキャラを操作して騎士団支部を出ると、見覚えのある人が近づいてくる。


「あれ、これって……」


 "シンに遭遇した!"

『ソ~ラ~ちゃ~ん? ま~だ外にいたの? 俺、さっき、もう帰りなって言わなかったかな~? もう真っ暗なの、わかるよね~?』


「あ……しまった、これ、シンさん怒ってる……」


『全くもう。宿は勧めた所でいいんだよね? 送るから、帰るよ。いいね?』

『はい、ごめんなさい』


「え。あれ? 勝手に動いてる……あ、強制送還なのかな、これ……あ、宿に着いた。ん? 人がいっぱいいる。あれ? なんか画面の端が赤い」


『うわ、大変だ、酒場が火事になってる! ソラちゃん、確か水魔法……いや、コントロールが不安だったっけ……仕方ない、ここにいて! これ以上近づいちゃ駄目だよ、いいね!』


「え、火事? 酒場って、確か宿屋の隣……ええっ!?」


 "酒場が火事のようだ! どうしますか?"


「ど、どうしますかって……えっと、"大人しく避難してる"、"水魔法を使って消火を手伝う"、"光魔法を使って怪我人の治療をする"……。……水魔法、は、シンさんのさっきの台詞、あれ、諦めてたっぽいから……光魔法を使って怪我人の治療をする、にしてみる……?」


 選んでボタンを押すと、キャラが動いた。

 倒れている人に近づいていく。


『あの、大丈夫ですか? 治療させて下さい!』

『え? な、い、痛みがひいてく……!? 嬢ちゃん、あんた、治癒魔法が使えるのか……!! ああ、治った! ありがとうよ嬢ちゃん!』

『あ、あのっ! この人もお願いします! この人、私を庇って火傷をおってしまって……!!』

『こっちも頼む! 飲んだくれてた俺を迎えに来た息子が……っ、くそっ!』

『はい、すぐに治療しますね! 怪我した人は、並んで下さい!』


「うわぁ、たくさん並んだ……うん、この選択で正解だったかな……? え、リョソンさんが出てきた」


『ソラちゃん、よくやった。後は任せろ。疲れたろう、宿は飛び火するとまずいから、今日は教会へ行って休め。避難する人々に開放されるはずだ』

『はい、わかりました』


「あ、教会に行けばいいのかな。……うん、また勝手に動いてるね。"おやすみなさい"……って、寝ちゃったよ。え、"記録してゲームを終了しますか?"……う~ん、ひとまずそうしようかな。はい、と」


 ボタンを押すと、3○Sっぽいゲーム機が光り、明滅し出した。

 そして同時にとある一文が出てくる。


「"入手アイテム、チョコワッフルを取得しますか"……?」


 チョコワッフルって、さっきシンさんに貰っちゃったあれ?

 取得って何……?

 とりあえず、"はい"にしてみよう。

 ボタンを押すと、ゲーム機が一瞬強く光って消えていった。

 そして、代わりに。

 ゲーム内で見た、美味しそうなチョコワッフルが一つ、紙の袋に包まれて、そこにあった。


「わあ、美味しそう……! そっか、取得って、実物になって本当に貰えるんだね。……よし、いただきます!」


 私はチョコワッフルを手に取り、食べ始める。

 お、おいしい……!!

 ……これ、商店街に売ってるのかな?

 もう一つ食べたいかも……今ならまだ、お店開いてるよね?

 ワッフル一つくらいなら、買う時間、あるよね……?

 よし、出かけよう!

 私はチョコワッフルを食べ終わると立ち上がり、速足で商店街へと向かって歩き出したのだった。

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