おまけ、旅に備える。
お供の二人は物凄く有能だった。
店に着くと途端に、『旅の装備の準備をなさるのですね』と言うと店員さんに声をかけ、ソラキャラを連れて店の奥の、広くて綺麗な部屋へ行き、私の好きな色や好ましい服のデザインを聞きながら採寸をし、『それでは暫しこちらのソファーでお待ち下さい』と言うと部屋から去り、すぐに次々とローブやら丈夫そうな服やらを持ってきた。
店員さんと共に服の説明までしてくれて、私はその中から気に入ったものを選ぶだけで買い物ができてしまう。
店を移動する度にそんな状況が繰り返されて、こんな楽な買い物の仕方があるんだなぁと、なんだか感心してしまった。
そうして全ての買い物を終えると、私はゲームを終了させ、買った物を取得した。
「よし、これでとりあえず旅の準備はオーケーだね。あとは……実際に旅をする為の体力づくりとか、魔法の練習とか、したほうがいいよね、やっぱり。う~ん、練習できる場所とか、あるかなぁ? ルガルはいないし……この領主館にいる誰かに聞いてみようかな……誰がいいだろう……?」
さっき旅の準備で持って行く物を各店で説明を聞きながらじっくり選んでいた為、本日の時間制限まではもう数分しか残ってないから、もうゲームは使えない。
私は自分で実際に行動する為、早速部屋を出て、人を探して館内を歩き回った。
しばらく歩くとメイドさんを一人見つけ、声をかける。
「すみません、この辺に、体力づくりの為の運動や、魔法の練習ができる場所があるかわかりますか? 知っていたら、教えて欲しいんですが」
「これは、ソラ様。運動や魔法の練習ができる場所でございますね。かしこまりました。すぐにメイド長に伝えまして確認致します。場所が決まりましたら、案内の者をお付け致しますね」
「えっ? い、いえ、場所と道順だけ教えて貰えれば、一人で行けます」
「まあ。それはご立派です。ですが、ソラ様はご領主様の大切なお客様ですので、万一の事があってはなりませんから、どうか案内人をつけさせて下さいませ」
「え……。……はい、わかりました……じゃあ、お願いします」
「はい。ではお部屋にて少々お待ち下さい」
「はい」
私はメイドさんと別れ、言われた通りに部屋で待つ事にした。
大体一時間ほど待っただろうか?
部屋に現れたメイド長さんに紹介された案内の人に連れられ、私は領主様の私軍である騎士様方がいる騎士団本部の中にある訓練所へと連れてこられた。
どうやらそこを使うようだ……。
領主様や騎士団長様の許可はおりているという事で、私は騎士様方の邪魔には決してならないよう、端のほうで、まずは走り込みを開始した。
……たまに騎士様方から向けられる視線が、ちょっと、痛い……。
そうして体力づくりと魔法の練習に明け暮れた日の、夜。
そろそろ寝ようかと思っていたところで、やっとルガルが帰って来た。
「ソラ、お待たせしたわね。貴女にぴったりの武器を用意してきたわ」
「ルガル! お帰りなさい! ……私にぴったりの武器って?」
「ふふ。これよ」
そう言って、ルガルが自信満々に取り出して見せたのは。
「……棒?」
黒く長細い、棒だった。
「如意棒よ。貴女の意志で自由自在に伸び縮みさせられるわ。どこまでも長くできるから、敵に接近せずに攻撃する事が可能だし、魔法耐性にも優れているから、魔法だって叩き落とせるわ。これなら、貴女が攻撃されて怪我を負う危険度は格段に下がるはずよ」
「……ルガル、そこまで考えて……。……あ、ありがとう。大事に使うねっ!」
よし、これで旅の準備はバッチリだね!
あとは、今日した訓練や練習に加えて、この如意棒を使う練習をしながら、あのお姉さん達の到着を待つだけだねっ!




